Dreamer


※BLAST1年後設定





4月。BLASTに入ってまた春が過ぎた。高校2年生にあがっても環境はあまり変わらず忙しい。新しい季節の陽気は凄まじく、バイトで睡眠時間を削っている徹平は夢の中にいた。しかしその睡眠は昼休みを告げるチャイムによって1度終焉を迎える。

「徹平くーん!」

昼休みに入った瞬間、俺の半径3m範囲から人が去って行くのに、俺を呼ぶ声が聞こえる。優奈さんや麗華さんの声じゃない女の人の声だ。この学校で女の知り合いなんか優奈さんと麗華さん以外いねぇはずなのに。

一体誰だ、と眠気と食い気と戦いながら考えていると、後ろから抱きつかれた。やわらかい胸の感触が肩に当たる。……ってこれじゃ変態みたいじゃねぇか!驚いて後ろを振り向けば、更に驚かされる。


「なまえ!?」

自分に抱きついてきたのは愛しい彼女、なまえだった。なんでここにいるんだ?と聞けば、彼女は照れたように笑う。ライブでもねぇのにウチの制服を身につけてる。

「えへへ、来ちゃった」
「来ちゃったってお前……なんでその制服、まさか…!」
「そ!今日から私も緋ノ山第一高校の生徒になったんだよ!」

正確には入学式からだから昨日だけどね!といたずらっぽく笑った。これでコスプレでも詐欺でもないね!と冗談を言っている。いや確かにそうだけどよ……っていつの間にウチの高校受験してたんだよ。

「マジか、すげぇな!なんで言わなかったんだよ!?」
「ふふ、びっくりさせたくて!みんなには内緒で受けたの」

なんでも、宗介先輩にも内緒で受けたとか。でも宗介先輩なら聞いてても興味無さげだしな……。ビッグニュースに徹平の眠気はすっかり吹き飛んでいた。やっぱり自分の好きな人が同じ学校にいるっていいな……と思いながらなまえと話していると周りがざわざわし始めた。

『誰あのかわいい子?』『あの白雪に話しかけて抱きつくなんて何者?』『もしかして入学早々脅されてるの?』―――雑音が聞こえる。


「お、やっぱここにいたのか!宗介の言う通りだな!おーい、なまえ!あと徹平!」

全ての雑音を押しのけて大きな声が2年の教室に通る。大和先輩の声だ。「お邪魔しまーす」と言いながら2年の教室に大和先輩と翼先輩が入ってくる。後ろから面倒くさそうに宗介先輩も続いた。

「ついでっぽく言うのやめて下さいよ。あと、大和先輩相変わらず声大きいっス」
「なまえがウチに入ったって聞いて、見に行ったら教室いなくてさー」
「話聞けよ」
「やっほーなまえちゃん、ここの生徒になったんだってね」
「はい!先輩達を追いかけて来ちゃいました」

なんとなく分かってたけどそれは初耳だ。

「いやー、本当びっくりだよ。なんで黙ってたの?」
「びっくりさせたくて秘密で受けました!」

『怖い3年達とつるんでるって噂本当なんだな』『白雪って巻先輩の舎弟だろ?』『ってことはあの女子も!?』―――先輩達となまえのやりとりを聞いているとまたも周りが遠巻きにざわつき始める。それには先輩達も気づいたようだ。

うぜぇと宗介先輩が遠巻きに見ているクラスメイトをにらみ、舌打ちする。「おいガン飛ばすなよ宗介」と翼先輩は笑って言う。

「俺ら違う学年だからやっぱ目立つなー。屋上でお昼食べながら話す?」
「だとよ、なまえ。テメー徹平に迷惑かけてんじゃねぇよ」
「えー、違う学年なのはお兄ちゃんも一緒でしょ」
「いいなそれ!外の方がきっと気持ちいいな!」

次のライブの打ち合わせもしたいしね、と翼先輩が提案し、宗介先輩がなまえに言う。なまえは頬を膨らませながら反論し、大和先輩の足取りは既に教室の外へ向かっていた。

「兄がうるさくしてすみませんでした」
「俺じゃなくてお前がだろ」
「徹平くん、行こっ!」

『あの子、巻先輩の妹なの!?』『あんな純情そうに見えて実はヤンキーとか』―――などと動揺のざわめきが聞こえる中、クラスメートにぺこりと頭を下げ、徹平の手を引っ張るなまえ。彼女はまぶしいくらいの笑顔で笑っていた。

「おい、置いてくぞ」
「あっ、待ってよ、お兄ちゃん!」

あっけにとられているクラスメートをよそに、宗介先輩の背中を追いかけるなまえ。文字通り宗介先輩を追いかけるためにこの学校に入ったんだろうなと彼女の横顔を見ながら徹平も先輩達を追いかけるために立ち上った。


「…うれしそうだな」
「うん!これからは学校でも全員揃ってBLASTとして行動できるから」

宗介先輩達に追いつくと、寄り添うように徹平の腕のあたりの袖を掴むなまえ。彼女のその仕草がかわいくてたまらない。これからは学校でも一緒なんだなと幸せを噛みしめながら顔を緩める。

「それとね……徹平くんと同じ学校に通うのが夢だったんだー」

一緒にいられる時間も増えるからうれしいの、って微笑むなまえ。すげぇ殺し文句だ。そういや、「もう1年早く生まれて一緒に活動したかった」ってずっと言ってたもんな……。

「これからもよろしくね」
「ああ、よろしくな」

前に進む先輩達に続いて屋上へ続く階段を上りながら、手を繋いだ。これからもこうやってなまえと一緒に未来へ進んで行くんだろう。





「えっ、なまえちゃんのお弁当豆苗だけ!?」
「まだ宗介のもやし弁当の方がマシに見えるな!」
「大和、マシってどういう意味だ、ああ?」
「えー、豆苗ヘルシーだしおいしいよー」
「……ここまで似た者兄妹なんスか!?」




タイトルはBLASTのあの曲名から。巻妹が緋ノ山第一高校に入学してきたら、のお話でした。
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