6時15分起床。タイマーをかけておいた暖房の音が携帯のアラームとかぶる。月曜日、ふつうゴミの日だ。学校行く時に出さないと。冬場は週に2回しか生ゴミが出せないから、これを逃すと部屋が女の子の部屋としていかんことになる。
トイレに行って洗顔して、化粧水を叩くともう25分だった。めずらしく早く上の階のドアが開く音を聞きながら、わたしもパンをトースターに突っ込んでからパジャマ代わりのスエットのままスニーカーを履く。ドアを開けたとたん飛び込んでくる朝日に目をつぶった。


「おはようございまーす」


指紋認証のエントランスを抜けて叫ぶと、おはよおと各々眠そうな声が返ってくる。徐々に開けられるようになってきた視界にいるのは、スエットからかわいいパジャマから高校時代のジャージまで、色んな寝呆けた格好の可愛い娘たち。寝癖のついた銀髪をひとつにまとめた隣の部屋の住人が最後に出てきて、庭にうちのアパートに住む全員が揃う。

皆さんおはよーございま、なんて適当に挨拶をすませて、隣の住人―――佐久間くんは片手のラジカセをこれまた無造作に地面に置いた。流れ始めたのは国民的に有名な前奏と声。朝のはじまりをヘルシーかつダイナミックに感じさせる一般的なレディオ体操である。

この年にもなって、何が悲しくて週に3回もラジオ体操に勤しまなければならないのだろう。寝起きのせいで伸びない体に鞭を打ちながら前で動く住人たちを見た。

まとめられた長いきれいな髪。細すぎるしなやかな身体。始める向きを間違えて笑い合うその様子はひどく可憐で華やかで、どこから見ても美少女と呼べる人材が集っている。わたしはその中に混じった一つだけの平凡分子だ。
ただでさえ劣等感と切なさに苛まれる毎日だというのに、前でわたしの心中なんて何も気にせずに肩を伸ばす運動真っ最中の住人たちにはわたしの自尊心をずたずたに切り裂くどころか水に流すくらいの秘密があった。

奴らはうら若き女の娘でもなんでもない、いわゆる男の娘だったのだ。






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