【枯葉、黄昏に積もりゆく】



「そう、ようやく死ぬの。」

「どうやら、そのようじゃ。」

「とうとう死ぬのね。」

「あぁ。」

「醜態を晒し、罪を重ね、自分の手を汚さずに大勢の人を殺し、不幸にし、ありとあらゆる卑怯な手段を使って目的を遂げようとし、それでも醜く生き長らえた貴方が。ダンブルドア。」

「…。」

「涙の意味は懺悔?よして。絵画の中の私まで、苛立たせないで。」

「すまん。」

「謝罪なんて、今頃星屑程の意味も持たないわ。それより、盛大に催されるであろうご自分のお葬式の演出でも考えなさったら?偉大な魔法使い、アルバス・ダンブルドアの名に恥じないものにしなくちゃ。」

「それは、死に逝く者の管理の範疇を越えておる。」

「そうね、おっしゃる通りだわ。その方がより人物に見えるものね。」

「君は、」

「何かしら。」

「ホグワーツに絵を移す気は無いのかね?」

「その質問には何度も答えたわ、アルバス。その気はありません。私はすっかり人気の消え失せたこの廃墟で、生前父が愛したこの屋敷と共に朽ちて行くの。それが最後に残った私の望み。」

「ナマエ。」

「アリアナと呼べば良いわ、お兄様。かつて私がこの世に生ありし頃、貴方がそうさせたように。」

「やめてくれ…。」

「いいえやめないわ。私は、命尽きし時、ようやく呪縛から解放されたと思ったの。亡き妹のかたしろとしか私を見ることが出来ない貴方を愛してしまい、どんな形でも良いから貴方に必要とされたくて必死になって、罪を重ねて。命尽きし時、ようやく解放されると思ったのよ。」

「すまない、ナマエ。わしはあの時どうかしていたんじゃ。」

「どうかしていたのではなくて、私の肖像画を描かせたのよ。そしてそれを私に内緒で隠し持っていた。」

「…。」

「泣きたいのは、私よ。アルバス。」

「…すまない。」

「貴方に少しでも私に対する贖罪の気持ちがあるのなら、さきの涙が嘘でないのなら、私の頼みを1つ、聞いて欲しい。」

「わしに出来ることなら。」

「なら、お願い。私を燃やしてしまって。この屋敷ごと。お願い。」

「ナマエ…。」

「お願い、貴方なら出来るはずよ。この120年間、ここに迷い込んだ魔法使いみんなに頼んできたわ。独り残らず。私を燃やしてって!だけど誰にも出来なかった。誰も、120年前の貴方にすら敵わないの。お願い、貴方にしか出来ない。」

「すまんが…それは、出来ない。わしは、二度も、この手で、アリアナを消してしまうことに…、」

「私はアリアナじゃない。貴方は私の兄でもなんでもない!」

「アリアナ…。」

「私はアリアナじゃない!こんなことしたって、貴方の罪は増えるだけよ!不幸なミス・アリアナは殺された!貴方か!貴方の弟か!もしくは貴方が愛した、」



かつて他に類を見ないほど立派に居を構えていた屋敷は、いとも容易くダンブルドアの杖にかかった。風雨に晒され僅かになっていた外壁や屋根や、かろうじてかつての豪華さを称えるカーテンなどの装飾品は、緑色と橙色の炎に包まれて、まるで紅葉の如く舞い散った。真夜中にも関わらず、屋敷の敷地は黄昏時のように橙色に染まり、死に至る呪いによって憔悴しきったダンブルドアの頬に朱をさした。


アリアナと呼ばれた、女の肖像画の高笑いはいつまでもいつまでも続いたが、それを最後まで聞き届けたのは闇夜に溶け込むフクロウが数羽のみだった。


End?

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