▼ *02
菫さん死にかけた記憶がないため、周囲の認識とのギャップがひどいんです。「あ! あのあのコナン君! 聞きたい事があるんだけど!」
「え?! う、うん、菫さん、調子が戻ってきたみたいだね? よかった――」
秀一との打ち合わせが済み、コナンが病室へ戻ると菫が慌てて問いかけてきた。落ち着きはないが当初の危うさは微塵も見えない。コナンが離席している間にだいぶ理性を取り戻していたようだ。
正気に戻った途端に恐慌状態になるのではないかとも危ぶんでいただけに、一つめの心配事が解消され内心ホッとしながらコナンは菫に応えてやる。
「それで、どうしたの菫さん?」
「あのね……」
「うん? 何?」
「えっと……」
何かを知りたがっているのに、菫は口ごもってその先を言わない。
「菫さん? あの、大丈夫?」
感情が希薄だった菫が元に戻って喜ばしいと最初は単純にそう思ったものの、ウンウンと唸っている菫は何か悩んでいるようだ。やはり忌まわしい記憶が甦ったのかとコナンにも焦りが芽生えてくる。
ただコナンの心配をよそに菫は大きく一つ深呼吸すると踏ん切りをつけたのかようやく口を開いた。
「……ここにはいない三人の事なんだけど、聞いていい?」
「あぁ……あの人達、ね」
そういえば監禁されていた時も真っ先に彼らの存在を疑問視していたな、とコナンは思い出す。だが秀一達も懸念していた事件そのものへの関心ではなく、菫から三人の幼馴染について尋ねられた事にひとまずコナンは息をついた。
「何で皆一緒にいたのかな? コナン君はもう……全部、知ってるの?」
「安室さんや菫さん――ついでに赤井さんも隠していた事なら、大体教えてもらったと思う。事件解決には公安の力が必要だったんだ。赤井さんが公安に協力を要請したんだよ」
「秀一さんが?」
「うん。この件はあの二人……安室さんと景光さんっていうか、正確には降谷さんとヒロさんにも協力してもらおうってね? あの二人が公安だっていうのもそこで知らされたんだ。元々は赤井さんと話をしている時に菫さんが事件に巻き込まれたって分かって――」
「あ、そういえばコナン君、どうして私が誘拐されたって分かったの?」
「う……」
コナンにとって後ろ暗い事を指摘され思わず胸を押さえて呻く。盗聴器の存在が当たり前すぎて今の今まで忘れてしまっていた。だが、もちろん最終的には謝罪する予定ではあったのでコナンは項垂れながら事の次第を説明し始めるのだった。
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「――私、盗聴器仕掛けられてたの……。気付かなかったなぁ……」
若干虚ろな目で乾いた声を菫は漏らす。コナンは菫の反応に居た堪れずに頭を深く下げた。
「ごめんなさい! プライバシー侵害だよね。こんな事されたらいい気分はしないし、気持ち悪いよね……」
それには菫も焦って両手を横に振った。
「あぁコナン君、違うの。プライバシー云々っていうより、曲がりなりにも協力者として警戒しないといけない人間が盗聴器に気付けなかった事にね、凹んでいるというか……」
零と景光――公安の協力者になるからには、自身も盗聴される可能性を自覚し自衛するのは菫の義務であった。この世界では盗聴はされるものなのだという非常識を菫も柔軟に理解はしていたつもりでも、あまり身には染みていなかったのだ。それを菫は落ち込まずにはいられなかった。
今回はそれが良い方へと転がりはしたものの、通常ではありえない失態であろう。
(盗聴器の事も、こうやって皆に助けられた事も、私……協力者としての能力がやっぱり足りてない)
不安に思っていた事が目に見える形で露呈してしまい、菫は情けなくて堪らなかったが自分が脱線させた話を元に戻す。
「でも盗聴器のおかげで事件が発覚したから、コナン君達がいち早く動いて助けてくれたんだね」
「菫さん、盗聴器の事、本当にご――」
「コナン君、盗聴器については怒ってないからもう謝らないでね? 私、今回は運が良かったって思ってるんだよ?」
犯罪に巻き込まれたにもかかわらず、コナンや幼馴染たちという完璧な布陣が如何なくその力を発揮し、早期に無事助け出された事を菫は感謝せねばならない立場だ。何度目かの謝罪を口にするコナンに菫は妥協案を出した。
「今回はコナン君もちょっとおイタをしちゃったけど、私はそのおかげでこうしていられるんだから、それで相殺って事にしない?」
「そういう訳にもいかないよ……」
「うーん……」
あまりにも気に病んでいる様子のコナンに、菫は一計を案じる――というよりも、以前からコナンに頼みたかった事を思いつき、期待を胸に口にした。
「それなら……コナン君、そんなに責任を感じてくれるなら、一つだけ私のお願い聞いてくれないかな?」
「なに? ボクに出来る事なら……」
この状況でコナンが否やを言う筈もない。コナンからのいい返事に心が湧きたつ。
(わ! もしかして怪我の功名かも?)
菫はここしばらくの悩みの種が消えそうだと不謹慎だが嬉しくなった。
「あのね、何かあった時、零くんとヒロくんの力になってくれないかな?」
「あの二人の? 公安と協力するって事?」
「うん。コナン君は秀一さん達FBIと強い信頼関係があるよね? だから全面的に公安に協力は出来ないかもしれないけど、でも可能なら零くん達にも力を貸してほしいの。……お願い」
断られはしないだろう、とは思いつつも菫は固唾をのんでコナンの返答を待つ。
「それは……ボクも彼らとは同じ敵を持つ者同士で協力し合えたらって思ってるから、もちろんいいけど……でもそんな事でいいの?」
「いいのいいの! ありがとう! コナン君が零くん達の味方になってくれるだけで嬉しいの。きっと百人力だから!」
訝し気なコナンに菫は満面の笑みを浮かべた。しかしコナンはあまり納得が出来ないようだ。
「菫さん、ボクのこと買いかぶりすぎだよ。だけどそれだけ? ボクのした事ってそれだけじゃ足りないと思う――」
「本当にそれで十分だから! あ、あともう一つ聞きたい事があってね……」
委縮して謝罪を繰り返しそうなコナンに菫は待ったを掛ける。いつまでも終わらなさそうな話題を断ち切るように菫は矢継ぎ早に他の質問を繰り出した。
「コナン君達は私が捕まってる間の事、把握してたんだよね? 私、犯人の人に何かをされたのかな? されたって言うよりは、何かを聞かれたのかな?」
零と景光の正体がコナンへと問題なく明かされているならば菫のもう一つの心配事は、犯人の自白剤だった。
「私を閉じ込めた犯人は自白剤を使ったって言ってた」
「あ……うん……」
やはり聞かれたか、とコナンは一瞬目を眇めた。
「ヒロくんは問題ないって言ってたけど、内容を教えてくれる? まさか自白剤に抵抗して何も喋らなかった、なんて都合のいい事はないでしょ?」
「そうだね……何も喋ってなかった、って言ったら嘘になるね」
「コナン君。私、何を言っちゃったの? 皆の秘密、迷惑になるような事を本当に黙ってられたの?」
「菫さんが一番心配してる事は言ってなかったよ」
コナンは先程秀一と打ち合わせた事を振り返る。菫から自白剤の影響下の事について問われた時の方針は、ほぼ三人の意向通りにする予定だ。
(聞かれたら答える。出来る限り真実を)
菫は今まで幼馴染たちにも秘密にしていたらしい過去について語っていた。
(でも必要最低限に、だ。言わずに済むなら表面的な事だけ)
組織の事、菫の自殺未遂は決して明かせない。だからこそ秀一達はせめてそれ以外は誠実でありたいらしい。そして三人の男達は菫の過去を知り、今後付き合っていくうえで菫の隠したい過去でも知らない振りをしたくないそうだ。そのためこの点は説明する事になっていた。
「菫さんは、プライベートな事……家族の事を喋ってたよ」
コナンは本当に触りの部分だけ答えてやる。何が刺激になるか分からないのだ。今の均衡状態は崩せない。さらに菫のこの件は後ほど秀一達の手が空き次第来訪し、幼馴染の口から説明する予定であり、これらの説明はコナンの役目ではない筈だった。タイミングによっては自分がそれを担わなければならないと伝えられてはいたものの、今まさに出番が回ってきてしまいコナンには荷が重く感じる。
「家族? え? ヴィオレさんとノアさんの事!?」
菫は想像していたものとは違う方面の、こちらはこちらで秘匿せねばならない秘密を暴露していたのかと動揺する。それはすぐさま否定された。
「そうじゃなくて、その、菫さんって養子って言ってたよね? 昔の、本当のご両親について、話してたよ?」
「昔の? 何だろう? そんな言う事あったかな?」
二人の事ではないならまぁいいか……と、菫は気を抜いた。そして菫は不思議そうに首を傾げる。
「…………ごめんね? 私、何を言ったの?」
バツの悪そうな声で、だがどこか困っているような表情だ。それにはコナンが意表を突かれる。想像とは違う反応だった。
「私、本当の両親の事、よく分からないの。親子の縁が薄かった人達だから、もう他人だって思ってて。もし何か言ったのなら、どうでもいい人達だ、なんて澄まして薄情な事言ってそう。違う?」
「えぇ、とぉ……」
いざとなるとコナンも何と言えばいいのか、どう言えば菫が傷付かないのかと言葉が出てこない。現在の意識と無意識では菫の両親への認識が違うようだと伺えた。一瞬、傷に触れずに伝えないままでもいいのではとコナンは思ってしまった。
ただ菫はコナンが口ごもったのを見て嫌な想像をしてしまったらしい。
「? え、そうじゃないなら、人間性を疑われるような事を言ってたりした? 口汚く罵ったりするような。そんなところ聞かれたとしたら相当恥ずかしいけど……」
「菫さんはそんな事言わないよ……」
「でも――それなら私は具体的になんて言ってたの?」
詳細を聞きたがる菫にコナンは観念する。自分は知ってしまったのだから、それを伝えなければならない。
「両親を、忘れたいって……」
「忘れたい?」
コナンの言った内容に今度は菫が怪訝そうに眉を寄せた。本当に思い当たらなかったからだ。
「……そもそも思い出す事もなかったけど。もうあまり覚えてないよ。昔の事だもの。だけどやっぱり薄情な事言ってたね?」
菫の誤解にコナンは首を横に振った。そしてコナンの次の言葉を聞いて菫はハッとする。
「そうじゃ、ないよ。菫さん、自分はいらない子だって、悲しそうだった」
「あぁ……それ、ね。そういう事……」
何となく話題の本質を理解した。自分が口にしたらしいネガティブな発言に菫は苦虫を噛み潰したような気分になる。それでも菫は言い繕った。
「でも、本当に昔の事だよ。子供の時の……。もう気にしてないけど、そっか……別の意味で恥ずかしいね」
「え? 恥ずかしい?」
またもや予想し得る反応とは違うものが返ってきた。
「恥ずかしいなんて、そんなこと思わないよ?」
「そうかな。私ね、親からあまり好かれてなかったの。放っておかれてた。親に手間を掛ける価値がないって思われたも同然だから、それがずっと恥ずかしくて……こんな事聞かされても、コナン君困るね?」
苦笑を浮かべた菫に、ううん……とコナンは否定するが、申し訳なさそうに俯く。
「デリケートな事、聞いちゃってごめんなさい」
「不可抗力な状況だったと思うし仕方ないよ。コナン君のせいじゃないんだよ? でも、あ――……」
「な、何?」
「コナン君だけじゃなくて、あの三人も聞いてたよね、多分」
眉尻を下げて菫はそれまでで一番難しい表情を浮かべていた。
「赤井さん達? うん、みんな一緒にいたね」
「やっぱり? 聞かれちゃったのか……」
「菫さん、あの三人にも言ってなかったんだね?」
それがコナンにはどこかしっくりしなかった。菫にとって辛い過去なのは分かるが、あれほど親身な関係の幼馴染である彼らに打ち明けていないというのは違和感があった。しかし、菫は暗い声だ。
「言えないよ……恥ずかしいもの。親にも大切じゃないって思われてるなんて、なんだか情けないでしょ? 私には価値がないんだって、あんなすごい人達に知られたくなかったの」
菫は肩を落としてため息をつく。コナンは何かが掛け違っているように思えた。
「赤井さんも、安室――降谷さんにヒロさんも、菫さんの事とても大切にしてるよ。そんな風には絶対思わないって断言できる。赤井さん達、菫さんのために全力を尽くしてたんだ」
「――そうだね。秀一さんも、零くんとヒロくんもそうは思わないかもね。でもなぁ……」
一度言葉を区切ると、菫は滔々と語り出す。
「自信がないの。結局は何より私自身が引け目を感じてるんだと思う。何か違うって気がする」
「引け目って……違うって何が? ボクはむしろあの三人と幼馴染の菫さんはすごいなって思ったよ?」
「私自身はね、すごくないんだよ。烏滸がましいって思ってる。どうして私なんかがこの場所にいるんだろうって。私みたいなのがこの人達のそばにいてもいいのかなって」
「菫さん?」
コナンの困惑した声は菫の耳を通り抜けた。
「零くん――ううん、零くんだけじゃない。ヒロくんも秀一さんも、皆は私にとっては本当に高嶺の花なの。花の王様――艶やかな牡丹、凛とした百合、気高い薔薇みたいな」
憧れの人をただ称える菫の様子にコナンはぎくりとする。いつの間にか目の焦点が合っていない。目の前の女性が生気のない人形のように感じられた。
「遠くから見上げて憧れるような人たち。私は名前も知らないような花なのに、風が運良く種を運んでくれて、あの人達のそばで根付けた。でも私は異物だから場違いだなって、年を経るごとに強く思うの」
「菫さん、そんな事な……」
菫はコナンの声に気付かない。ぼんやりと力なくどこかを見つめて独り言を続ける。
「それなのに、離れられなくて……。寄生してるみたい。私は皆がいないとダメで、だけど私はいなくてもいい。いらなかった――」
不穏で聞き覚えのある言葉だった。菫の言葉にコナンは薬の影響下の名残を見た。
(ヤバい! 菫さん、徐々に思い出し掛けてる?!)
注意していた筈の危険な状況に一気に冷や汗が出る。何がいけなかったのかと考える暇もない。
「だからせめて皆の役に立ちたかった。それなのに、今回みたいに迷惑を掛けて、仕事の邪魔をして――」
「菫さん! ストップ!!!」
コナンは咄嗟に大声で菫を呼び止めた。だがその呼びかけに菫は見事に動きを止めた。その一拍後、菫は忙しなく目をパチパチとさせてコナンへ問い掛ける。
「……あれ? コナン君、今、何話してたっけ?」
現実に戻った拍子に直前の会話が飛んでしまったようだった。
「あ、あぁ……ボクも忘れちゃった――って菫さん?!」
普段通りの菫にため息をついて安心したのも束の間、コナンは菫の顔を見て声をあげる。先ほどまで影も形もなかったソレを指差され、菫も異変に気付く。
「え? 目が……変だね? なんでだろ? 別に痛くもなんともないんだけど、止まらない」
どうして……と菫は自分でも困惑したように頬を伝うものを拭っていた。
「あ、あ、えーと、菫さん大丈夫?」
「あぁ、コナン君ごめんね。びっくりだよね? でも、私も分からなくて……」
「ボクが、怒鳴っちゃったからかな?」
「違うよきっと。色々あったし、自律神経が乱れちゃったのかも?」
菫は目を強く抑えたり、ごしごしと乱暴にこすり涙を止めようとする。赤くなっていく菫の目元をコナンは見咎め、腫れちゃうよ、と菫の手を掴まえハンカチを代わりにあててやった。
ただ、二人であたふたとしていたため、互いに近づいてくる足音にも扉を叩く音も聞き逃していた。
* * *
「菫、入るぞ?」
「返事ないけど、菫ちゃん寝てる?」
「菫? ボウヤはいないのか?」
コナンは助けが来たと思い切り振り返った。続々と入室してきた頼りになる大人たちにホッとする。何故か秀一は沖矢昴の変装が解けていたが、今は些末な事であった。
「あぁ三人とも……助かった」
コナンは安堵の息をついていたが、視界を塞いでいたコナンの身体がずれた事で来訪者の姿を確認した菫は、そのまま瞬きを忘れた。
「……ぁ」
子供の頃ならいざ知らず、零と景光と秀一が揃っているところなどもう長い間見た事がなかった。そして見れる筈もなかったものだ。
コレを自分は台無しにするところだった。――それは一瞬だけ甦った記憶ですぐに掻き消えたが、途端に新たな涙が零れ出てしまう。
「零くん、ヒロくん、秀一さん……」
菫は弱々しく声の主たちの名前を呼ぶ。
「?! どうした菫?!」
「えぇ!? 菫ちゃん泣いてる!?」
「な、何があった菫」
ギョッとしたのは頼りになると思われた男達だ。ハンカチで拭っていた菫の目元は真っ赤で、それを見逃さなかった三人は慌てて駆け寄った。
「わぁー! 菫ちゃんどうしたんだ? 泣き止んでくれ〜」
「ど、どうする……こんなに泣いてる菫を見た事がない」
「すまん。俺は菫に泣かれたらもうお手上げだ」
「赤井、諦め早すぎ! 俺だって、菫ちゃんが泣いてると泣きたくなるんだけど!」
「あぁ! もう! どっちも頼りにならないな?! 菫、どこか痛むのか? 何があった?」
「菫、本当にどうした? 言ってみろ」
泡を食ったように三人の大の大人があれやこれやと菫を宥めすかし始める。頭を撫でたり、泣かないでくれと懇願したり、何か甘い物を買ってこようか? などとその宥め方が何とも子供のやり取りだった。
(なんかスマートじゃないっていうか、大人の慰め方じゃねーな……)
言う方も言われる方も良い大人なのでコナンにはちぐはぐな気がしてならない。コナンから見て普段は泰然として余裕のある男達だ。泣いている女性だろうがそつなく扱えそうな、そんな彼らのらしからぬ様は意外性が強く呆気に取られた。しかし肩を震わせ俯いている菫に男達のいつもの冷静沈着さはどこかに行ってしまったようである。
(……あれ?)
だが、途中でコナンは気付いた。他の三人より目線が低く、ベッドに座って下を向いていた菫をつぶさに観察できたからだが、菫はいつの間にか泣き止んでいた。そしてハンカチに顔を埋めてクスクスと笑っていた。
どうやらコナンと同じように幼馴染たちの慰め方が拙いと感じたようだ。
目聡いコナンに自分の状態がバレたらしいと菫も察したのかハンカチの隙間から目を合わせてきた。すでに泣き止んでいる事を黙っているコナンに、共犯者へと向けるような悪戯っぽい視線を投げ掛けてくる。
(何だかもう、大丈夫そうだな……)
それを見てコナンは今度こそ本当に肩の力を抜いた。
また菫が笑っている事に幼馴染たちも気付き始める。
「ん? 菫、お前もう泣き止んでいるな」
「あ! 本当だ。菫ちゃん、なんで笑ってるの!」
「だって、フフ。皆、慰め方が、子供っぽい」
「泣いている菫が子供っぽいんだから、これでちょうどいいんだ。……全く、心配させるんじゃないぞ、菫」
目尻に涙を残し肩を揺らしている菫のおでこを零はピンとはじく。そして誰にも聞こえない小さな声で呟いた。
「また会えて、良かった……」
無事に帰ってきた幼馴染に万感の思いを込めて呟いた。
赤井さんの変装が解けていたのは、ジョディさんに引っぺがされたからです。コナン君と仲良くなるのにすごい時間が掛かりました、すみません……(更新期間5月〜12月)。