僕の宝物


その日クダリは1人先に帰ってきた

ノボリは学校に残らなきゃいけなくて

待っていようか悩んだクダリだったが
僕、、1人だしなぁ
生憎あまり学校が好きでないクダリは
先に帰ってノボリを待つことにした



さてノボリが帰るまで何しよう
早くノボリ帰ってこないかな

そんなことを考えながら
クリスマスにお父さんに買ってもらった
電車のジオラマのスイッチを押した
お父さんがノボリとクダリに買ってくれたものだ

これはお父さんの働いてるところ

これはお父さん


駅のホームにたつ人形に挨拶

さぁ出発進行


クダリはこのジオラマを見るのが大好きだった
もちろんノボリも
細部まで凝ったつくりをしていて
ずっと眺めていることができた
黒の電車と白の電車が交差するように走ってかっこいい
トンネルを抜けると森に付く


カタカタ小気味良い音を立てる電車を
寝そべりながら眺めていると
だんだん眠たくなってくる

カタカタ…プツッ

プツッ?
突然の違う音にクダリははっと目をさます

見ると白の電車がトンネルを差し掛かる手前で止まってしまっていた

あれ?
あれ?なんで?

宝物をそっと取りだし電車のスイッチをそっと押してみる

動かない
「…僕の電車が」

みるみる涙が溢れてくる
僕の電車、お父さんからもらった電車が


「うわぁぁぁ」
溢れる涙のとめかたはノボリにしか解らない
ぐずぐすと大切な電車を胸に泣くことしかできない


どれだけ泣いたんだろう
涙がかれかけた時にクダリはハッと気付いた

電池?
電池いれたら動くのかな?

そっと電車を線路に戻して
クダリは家中の戸棚をあけてみることにした

うん、お母さんがTVのやつに(リモコン)入れてた
だからどこかに絶対にある


リビングの本棚の下の引きだしに手をかけたときに少し異変
パッとあけた戸棚の中に目当ての電池を発見して
喜んだのもつかの間


「バチュ…?」

なにか黄色のがついている
「うわっ」
クダリは思わず出た手をひっこめた


「バチュ」
隠れるように引きだしの物と物の隙間に
潜っていく黄色の生き物に思わず声をかける

「ねぇ、待って」
「バチュ…?」
乾電池から覗くように顔をだす
黄色の生き物にクダリは声をかけ続ける


「僕クダリ。きみはバチュル?」
図鑑でみた名前を呼ぶとバチュルは頷いた

「バチュルは電池が好き?」
「バチュバチュ」
電池にすりよるように抱えて離さないバチュルがとっても可愛いく見えて
さっきまで号泣していたことも忘れてしまっていた

可愛い
すっごく可愛い

「バチュル可愛い」
こわごわ撫でてみてもバチュルは特に逃げもしなかったので
くすぐるように撫でてやると
うっとりと目をつぶりクダリの指にすりよった
鳴く度に少し指先がピリッとするけど
全然クダリには気にならなかった

「僕と友達になって」
「バチュ?」



「ただいま帰りました。クダリ?」
急いで帰ってきたノボリはリビングでうずくまるクダリを見つけて

「クダリ…なにかあった」
振り返ったクダリの顔はいつも通り
大好きな兄への笑顔でノボリは安心した

「お帰り、お兄ちゃん、こっちにきて」

促されてクダリの横に座ると
クダリが宝物のように包んでいた
手を広げて見せてくれた


「バチュ?」


「可愛い…バチュルですね」
「うん、電池にくっついてたの友達になってくれたよ」
「ノボリといいます」
「バチュ」

黄色の可愛いポケモンは
同じ顔の2人に抱かれて嬉しそうだった


「そういえば、クダリ、どうして電池を」

「あ、忘れた!僕の電車」
バチュルを抱いてノボリの手をひいてジオラマの前まで


「なるほど、電池切れですね」
「僕、凄く悲しくていっぱい泣いた」

よく見るとクダリの顔には
涙のあとが残っていた

「大丈夫クダリ」
チュッとクダリの目尻にキスを落とせば
クダリは安心したようにはにかんだ

「電池を」
ノボリが電池に手を伸ばしたときに

「バチュッ」

「ん?」
クダリの胸元のバチュルが鳴いていた
「あぁ」
ノボリは察してバチュルの頭を撫でた

「クダリ、バチュルをおろしてみて」

そっと床に下ろすとバチュルは
目を光らせてジオラマを見つめていた

「ッ」

カタカタ…
突然動く白の電車にクダリは驚く
白の電車だけじゃない黒の電車も
駅のホームも全部明るく照らされた

「バチュルが電気をくれましたね」
「凄い凄い凄いバチュル」

足下にとことこ近づくバチュルを抱き上げた
「ありがとうバチュル。僕の宝物なの」

お礼をいうとバチュルも嬉しそうに鳴いた



「だからねデンチュラは僕の宝物」
ジオラマはいまも2人の部屋に飾られている

クダリはデンチュラの頭を撫でながら伝える

「いつもありがとう。大好きだよ!」
頼もしくなったデンチュラがクダリにすりよった




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バチュルも可愛い



2012/ / /Web

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