貴女に一目惚れ


確か8月の半ばに
ノボリは原因不明の熱に1週間うなされた

ただの風邪だと思ってたのに
病院にいって注射もして
苦い薬も飲んだのに全然なおらない

両親もクダリも心配そうにノボリを見つめる
「明日になっても熱が下がらなかったら入院しましょうね」
母の声にノボリよりも先にクダリが涙した

「うわぁぁんお兄ちゃんがぁ、やだやだ入院やだ」
大好きな兄とそうでなくても遊べないのに
入院なんかされたら暫く顔も見れないから

「クダリが入院するわけじゃないのよ」
諭す母親の声をクダリは聞かない

「うえ、、お兄ちゃんがっ」

「大丈夫クダリ。」
あまりにも大泣きするもんだから
病人のノボリが逆にあやさなければいけない



ねぇ、クダリ
今日の夜にわたくしの部屋に来て


兄の囁きにクダリの涙が止まった




「ノボリお兄ちゃん」

声を殺してクダリが尋ねる
ねぇ、どうしたの?


熱が上がってだるそうなノボリに
またクダリは涙目になる

「泣かないでクダリ、ねぇ見て」

ノボリの小さい手が指す窓をクダリは見つめる

ブルーのカーテンの隙間に


「ポケモン…?」
「そう、最近夜になるとくるんだ」


それは蝋燭のような形をしている
ヒトモシだ


「ねぇクダリ
わたくし1人では怖いのです
クダリも一緒に見てくださいまし」


ノボリの高熱の理由はこれだった
ヒトモシに憑かれている
でも幼い2人にそんなことは解らなかった


ノボリの手をギュッと握って
クダリはゆっくり窓をあけてみる

覗いていたヒトモシは突然の動きに驚き
転がり込んできてペシャッと床に落ちた


「んっ」「ぐっ」
2人は予想外のヒトモシの行動に
吹き出しそうになるのを必死で抑える

駄目声だしたらバレたらお母さんに怒られる

床につっぷしたヒトモシはふるふると
頭を振りノボリを見つめる


心なしかヒトモシが赤くなったような気がした

「ノボリ、きっとこのヒトモシはノボリが好き」

「そうなんですか?」

「だってノボリのこと見て、、赤くなった」

もじもじと居合わせるヒトモシに
ノボリは手をさしのばす

「ねぇ、おいでよ」
その言葉に
ふよふよとヒトモシは舞う


「わたくしノボリ。サブウェイマスターになるのが夢
貴女の力を貸して下さいまし」

そう言うとヒトモシはパッと嬉しそうに輝きだした

「ねぇ、僕クダリ。僕とも友達になろうよ」

クダリが手を差し出すと
ヒトモシは嬉しそうにクダリの手の上に乗った

2人はクスクス笑いながら
舞うヒトモシを見つめていた




翌日
ノボリの部屋で手を繋いだまま寝てる
ノボリとクダリ
その真ん中に寝てるヒトモシを母親に見つけられ
2人+1匹まとめて怒られたけど
ノボリの体調はすっかり戻り入院せずに済んだのだ




そんなことが有りましたね
頭の上で浮かぶシャンデラをみて
懐かしい記憶をたどり笑みがこぼれた


「貴女、わたくしをつれていく気でしたね」
「シャン」

いいえ、そんな
一目惚れしたのです御主人様に

美しく舞うシャンデラに
ノボリは微笑んだ

「さぁ今日も貴女の力を貸して下さい」
「シャン!」




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ヒトモシって可愛いですよね


2012/ / /Web

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