視線


「に、兄さん、ちょっと」
迫りくる黒い塊を押し返そうと
クダリは必死に腕に力をいれるが
一瞬の間に押したおされのし掛かられ
自分の力ではすでに押し返すのは不可能だと悟り
ため息をついた

ノボリのリミッターが外れてしまった
黒のボスはいつも冷静で涼しい顔で
挑戦者達を蹴散らし隙のない仕草で
サブウェイを支配(良い意味だよ)しているけれど
ごくごく稀にリミッターが外れてしまうときがあるようだ

まさか兄さんだって人間だもん
ぶちギレちゃうときもあるよね
と内心クダリは思うのだが
このぶちギレたノボリは少々厄介である


「クダリっ」
強引にソファーにクダリの体を押し付け
無理やり脚の間に体を滑りこませ
引きちぎる勢いでクダリの前髪をつかみ
噛みつくようにキスをする

慣れているとはいえ
クダリにとってたまったもんじゃない

が少し心覚えはある
さっきダブルトレインにきた挑戦者の男の子にやさしく話かけたところを
休憩前に迎えにきてくれたノボリに偶然見られたのだ

負けて素直に悔やしがる少年が
昔の自分を彷彿させて思わず肩なんか抱いてしまったから

普段敗者に興味のないクダリの
珍しい行動をわざわざ迎えにまできたノボリが見てしまったのだ

最悪のタイミングだった


「んっ、、ノボリ、兄さん、はぁ、息できない」
漸く解放され涙目で見上げてもノボリの目は据わったままだった

「随分仲のよい様子でしたね」
性急にベルトを外しにかかるノボリに必死に言い訳を考えるも
どれをとってもノボリに油を注ぐだけと判断し
そのまま言い訳を飲み込んだ

「ねぇ、クダリ」
「っ」
珍しく口角をあげ厭らしく笑うノボリの顔
正直、強引なノボリも大好きだった

「ねぇ、見せてあげましょうよ」
「な、何いって」
先走りを親指で拭い塗りたくるように
しごけばすぐにぐちゃぐちゃと水音が聞こえる
「はぁ、、兄、さん、あっ」
「わたくしにしごかれて腰を揺らすような貴女の姿を皆さまにお見せすれば」
「や、やぁ、あぁ」
「さっきの彼にも」
そう言うとノボリは片手でクダリの根元をぎっちり固定した

快感は先走りもう果てそうだったのに出口がない!
「あっ、痛っ。う、兄、さ、、あぁ」
「おや、おかわいそうに」
赤く腫れ上がったそれを片手で撫でれば
もう喘ぎ声しかでてこない

「はぁ、はっ、、にぃ…さん」
じれったいもどかしい逝きたい
いつしかクダリの頭はそれだけで占領される
ノボリの戒めから逃れるように腰がはずむ
腰が勝手に動くことを指摘されても
もうそれどころでない

「あっ、あ、やだ」
短い呼吸を繰り返し必死に訴えるも
ノボリに変化はない

ときおり痙攣するように大きく揺れる体をノボリは楽しそうに見つめる

「わたくしに何か言わなければならないことがあるでしょうに?」
空いた片手が背中から腰にかけて厭らしくなぞると
ゾワゾワとした感覚が体に広がってどうしようもなくなる

「ねぇ、クダリ、お兄さんに言うことがあるでしょう?」

耳元で流れる低音と背中になぞる爪に力がはいり、皮膚が熱く感じる

「うわぁっ、あぁっやぁ」

いよいよ渦巻く快感と痛みをノボリがもっともっとと与えてくれる

ただ出口は与えてくれない

何度も爪をたてられ、その跡をじんわりとなぞられ
熱と快感がクダリの体を蝕んでいく
痛くされて感じる自分を嘲笑うノボリの視線がたまらない


「あ、あ、おにぃ…ちゃん、ごめ、、あっっノボ…リ」
ごめんなさいお兄ちゃん
涙がポタポタ流れても気にせずにノボリにすがり付く

「あっ、、だめっ、もう、いやぁノボリ…ノボリっ」
ノボリの制服を涙で染めながら悶える
ノボリはようやく満足したのか言葉を続ける

「わたくし以外にこの姿見られたいですか?」
「やだぁぁっ、っ」

「ねぇ、そしたら」
わたくしが見ていて差し上げます
このまま逝って下さいまし

「…え?、、え?」
見ていて差し上げますから

そういうとクダリの戒めをほどし
今度はクダリの両手首を掴む
足の間に体をいれ固定する
「は、うっ」
これじゃあ自分で触れられない
言葉通り、ノボリの視線だけで逝けということである

たしかにさっきまで本当に逝きかけだったけど…
急になくなった刺激に物足りなさで体が揺れる


「ほら、クダリ、逝きなさい」
「あぁっ、、そ、んな」
無茶をいう兄にまた視界が霞む
見上げた兄の顔にクダリは釘付けになる
兄さんなんて表情
それは捕食者の眼
視線を絡めると体に熱がともる


「はぁ、ノボ…リ」
「おや、呼吸が乱れてますよ」

「どうして欲しいですか?」
どうして
どうして


ノボリがほしいほしいほしい

「あぁっノボ…リ」
灰色の瞳が光った

もっと苛めてぐちゃぐちゃにして壊して

自分の最奥の欲求が浮上して気付く
「あっ、あっはぁ」
自分のはしたない欲求に早まる呼吸
気付いてしまった
変だ酷くされるほうがいいなんて

「貴方、本当に淫乱なんですね、見られてるだけでこんなに喘ぐんですから」

「あぁ、んっ…ノボリっもっと」

「もっと…なんです?」

その視線が下半身に降りていくだけで熱くなる

「もっと、苛め、て、もっと…あっ」
その捕食者の顔を見せて
はしたない淫乱とののしって
ぐちゃぐちゃに壊して

上がる呼吸をとめるすべは知らない

「クダリお望み通り、壊して差し上げます」
耳元で流れる低音にクダリは体を震わせる


「もう、、だめ、逝っちゃう」

「ほら逝きなさい。私の事を考えて」

妖しい笑みの兄に喉がなる

「あぁっっ!ノボリっ」
ノボリが見せつけるように、自らの唇をねっとりと舐めた瞬間に達してしまった






「ばかばかばかノボリ兄さんのばか」
「すいません」
真っ赤になって怒るクダリにノボリは平謝りする

「酷いよ、職場で僕を逝かすなんて、」
「いや、私なにもしてませんよ見ていただけです」
「ぐぬぬっ」
いけしゃあしゃあとこんな事をいうのは誰の兄?!

「クダリ」


急に体を抱き締め耳もとで囁く

「あまり他の人に優しくしないで下さいまし」
素直なノボリの言葉に

「うん、解った。ごめんなさい」
自然に出てきたごめんなさい

にっこり笑顔…


「今晩お望み通り苛めて苛めてぐちゃぐちゃにして壊して
差し上げますから安心して下さいまし」

はぁ?!

「許してくれてないの?!」

「私、許すなんて一言も言ってませんし
そもそも怒ってなどいませんし
ただ可愛いクダリの欲求に答える優しい兄でございますよ」

口許を押さえて笑う兄
完全にしてやられたクダリは口をあけて固まる

「では、今晩を楽しみにお待ちください」

リップ音のするキスを落として
ノボリは浮き足だったまま休憩室をあとにする


してやられたしてやられた
クダリはソファにつっぷして
一枚上手の兄に呪いの言葉を唱えた





でも…あの兄さんが見れるなら
ちょっと楽しみ


いまはこの熱を楽しもうとクダリは考えた




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視姦はエロス
2人とも変態なんですよ




2012/ / /Web

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