Barentain


もし、この箱を君に渡したら
君はどんな顔をする?
僕の行動にア然とするか?
大きな目をさらに見開いて息を飲む?
僕の愚行にお得意の薄ら笑みで答えるのか?




昨日夜遅くまでジャイボにお世話になり
簡素とはいえ、僕はチョコレートらしきものを
無事製作することが出来 、今に至る
昨日駆け込みで作った、ソレを本日中に
あいつに渡さねばならない
しかし、ジャイボのやつは何を考えたのか
ピンク色の包装紙でそれを包んでしまった
僕の手元にあるのは酷く派手な小箱だ
僕が持つのを憚れるくらいに、それは目立っていて
さらに僕が持つことによって胡散臭さは増した

ご丁寧にハートのシールまでついている…


僕は一度この包装をといてやろうかとも考えた
だけど、それじゃあ、あまりにもジャイボに申し訳ないし
僕はこういう作業が苦手だから
今よりさらに酷いことになるのが目に見えて解ったので辞めた


気持ち程度にと家にあった黒の紙の手提げの中に入れたんだが
今度は緊張で手提げの持ち手が危ない
ふやけやしないか心配だ

使い古しの制鞄の中で
小箱は異様であり出番を待っていた

こういうのは少女1号が持つと絵になって美しいのにな



あとはこのチョコレートをあいつに渡すだけである
これだけで、このイベントは終了する

考えれば簡単なことなのに
いざ実行に移すとなると
中々大変なものであった
世の中の女性の多くにこのような
苦労があったのなら、僕は飽きれ半分、感心してしまう


その日は1日そわそわと過ごした

今日の放課後は光クラブの集合がある
その中でチョコレートを”今日中に”タミヤに渡す必要がある


こういう時に限ってタイミングは中々訪れないものである


僕がいつも以上に警戒心を持って周囲を見ているのもある


結局、渡すタイミングを掴めないまま
光クラブは解散した


渡すタイミングが全くなかった訳ではないが
よい感じの所でいつもダフが邪魔をした


タイミング抜群のダフに苛々しながらも
僕は半分諦めていた


今年も光クラブの真ん中の粗末な長机の上に
綺麗にラッピングされたチョコレートが
”ご自由にお持ち帰り下さい”よろしく
山積みになっていた




「タミヤ」

曲がり角を曲がれば
彼の家が見える
そんな所で僕はやっと決心した

「ん?」

半歩先のタミヤは立ち止まって振り返った


「これを」

よれよれの紙袋をタミヤに渡した




「これをタマコちゃんにあげなよ」

僕は上擦った声でもごもごと告げて
視線をそらした




きっとタミヤは気付くだろう
僕の馬鹿みたいな気持ちと言い訳を



「おい、タミヤ」

タミヤは図体がでかく僕が支えれる訳がない

「重い」


「おせーよ、馬鹿」
タミヤの腕の中で僕は身動きを取れない状況だった

肩越しに光クラブのメンバーが見えた
きっと”気付いている”


「みんな見てるだろう」
僕は恥ずかしくなってタミヤを押しのけようとした


「いいじゃん、見せてやれば」
お構いなしのタミヤはやっと気がすんだのか
僕の身体から離れた

「よし、行くか」

「え?」

「戻るんだよ」

そう言ってタミヤは僕の腕を引っ張って
来た道を引き返した

振り向き様に手を振るジャイボと雷蔵を見えた


僕はアイコンタクトでそれに答えたが
すぐに先行くタミヤの背中を追うのに必死になった



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