Suite Barentain Eve


正直いうと、元々チョコレートは好きではない

うまい棒のほうが断絶好きだ

どうでもいい奴に渡すのが義理チョコ
最近は友達に渡す友チョコ
逆に男から女に渡す逆チョコ…等
ようは全部お菓子会社の陰謀だろ


そんなことは解ってるんだけど
馬鹿みたいなんだがこの流れにのって
俺もあいつにチョコが渡したいんだ

俺がチョコ渡したら、あいつ驚くだろうな
で、すぐにいつもの冷静な顔に戻って
世間様の流行りに乗って浮つく俺を軽蔑した眼差しでみるだろう
きっと薄い唇は口角だけを上げてせせら笑っている

ここまで簡単に想像できるのに
何故か楽しくて仕方ないんだ
俺があいつを愛しているからだ
あいつの色々な顔が見たいんだ

しかし、俺がゼラに渡すチョコは、何チョコになるんだ??



2月に入ってスーパーは板チョコの特売が始まっていた
俺は頼まれた母親の買い物をすませながら
お菓子コーナーにでかでか積まれて売られている板チョコを確認した
1枚79円の板チョコはどんどん売れていく
こんなちっぽけな蛍光町の中で
こんなに板チョコがどんどん消費される。すげぇ
俺はその売り場に立ち止まるが、あとから続く女の子たちに
気後れしてしまって、早足にスーパーを出てしまう

あぁ、結局今日も何のアクションも起こしてない
時間を無駄にした俺は早足に自宅に帰る
道の中で困った時の乙女組とあいつらを思いだした
明日雷蔵とジャイボに聞いてみよう


「なーに、タミヤ?」
放課後いつも通りキャッキャしてた
雷蔵とジャイボに声をかけた
「いや、ちょっと相談があって」
俺がそういうと何故か2人ともひどく嬉しそうな顔をして
特にジャイボなんかは目をキラキラさせながら
メスを取り出すから焦る

「ま、あの此処じゃなんだから秘密基地にでも」
俺はキラキラの2人を宥めて秘密基地に足を向ける

今日はゼラからの集合もかかってない
あいつは今日図書室で本の虫になる日だからな

それにしても、こいつら黙ってたら最高に可愛いよな
一言話すごとに馬鹿が露呈するんだけどな



「タミヤがチョコレート?!」
うわあぁ、ギャアアと2人は頭を抱えて叫んだ暴れた

「ちょっと、何だよ、お前ら、馬鹿にすんなよ」
俺は焦ってムキになって声をだす
一瞬、秘密基地の真ん中で阿鼻叫喚状態に
あーもうこいつらに相談しなきゃ良かった

「タミヤ、ナイスよ!」
我に返った雷蔵は俺の肩をわしずかみにして
揺さぶるから、こいつ男だから結構力あるんだけど
「タミヤー」
よく分からないジャイボは椅子に座る俺の背中にタックルする
「う""やめろお前ら」
力あるから全力でくるな

「よーし、雷蔵ちゃんとジャイボが2人のバレンタインを
最高のものにしちゃうわよー」
「いつも、タミヤから気持ち悪いって言われて影で泣いてたゼラも
やっと幸せになれるね、僕も全力で手伝う」
俺より俄然やる気な2人は立ち上がって決意表明をした
「はぁ…」
良かった…んだろうか



うわ、結構だるい
雷蔵宅で板チョコ3枚刻みを命じられた俺は
既に面倒になってきていた
「頑張ってタミヤ!屁理屈をいうゼラと思って」
「カエルの実験だと思って」
ひらひらフリルのついたエプロンを着た
雷蔵とジャイボは勝手なことを言う
「お前ら本当にゼラが嫌いだな」
「愛情の裏返しよねージャイボ」
「そうそう、まぁ表に返ることはないけどね」
無茶苦茶をいう2人の横で俺はひたすら板チョコと格闘した


「お、終わったぜ」
「おつかれーじゃあ此処からは乙女組にお任せあれー」
バトンタッチした2人は俺が切り刻んだ
チョコ屑をボウルにいれて
お湯のはった鍋にボウルごと沈めた

「面倒なんだなー」
手際のよい雷蔵に感心しながら俺はそれを眺めた

「そうよ、あんたも毎年チョコくれる女の子に感謝しなさいよ」

「あー…」
こんな手のこんだ作業してくれなくていい寧ろ要らないんだが

「ジャーン」
そこにジャイボが割って入った

「きたきた!これがメインよね」
雷蔵はジャイボのもつ明らかに怪しい
白い粉末が入った瓶を手にとった
「お、お前らゼラを毒殺する気か?!」
怪しげな白い粉は戸惑いなくチョコ鍋にぶちまかれて
溶けて…なくなった…
俺にはもう一度チョコを刻む気力はない
ゼラ、すまんな


出来上がったチョコを雷蔵がご丁寧に包装してくれた
俺は出来たチョコを片手に揚々と帰宅

あいつらに世話になった
お礼しなきゃな
雷蔵がチョコを溶かす横で
ジャイボがハートの型を持ってスタンバイしてた
聞いてみるとハートの型はジャイボがわざわざ作ってくれたらしい

ハート型とか気恥ずかしいと思ったが
ジャイボをきれさせたら、流石に俺も殺されるから素直にお礼いって
ハートにチョコを流し込んだ

怪しい白い粉はデンタク製だった
デンタクにもお礼だな


明日これをゼラに渡そう
恥ずかしいのと嬉しいのと馬鹿馬鹿しいのと期待と
色々な感情が混じった手の中のそれは
間違いなく幸せの塊だった


2011/2/5/Web

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