猫な彼


秘密基地に入ろうとした瞬間
頭上から音がした



ニャー



ふと見上げれば
灰色の子猫


入口の錆びた骨組みの上に
なんか、目があった気がする



子猫は用事深く
ぽとっと地面に着地
俺と距離を置きながら
なおも注意深く俺を見つめる


「おいで、おいで何もしないから」

俺は思わず地面に膝をついて
身体を屈め夢中になって猫に呼びかけた



少し猫は距離をつめ
また ぱたっと足をとめる

よく見れば子猫というには
成長した顔立をしてた


元々小柄なのかな

別に痩せてガリガリという訳でもないんだが


「お前いつから此処にいるわけ?」

ミャ


小さく鳴き俺のかなり近くまでぽとぽと歩いてきた


割と人懐っこいのかもしれない

でも撫でようとすれば
避けるようにまた少し距離をとる


俺は猫に夢中になった


地面に腰を下ろして猫をかまう


俺が手を伸ばすと避けてくるのに
ほっておくと猫パンチを食らわしてくる


ニャニャ


「捕まえたー」

ゥニャ

慣れてきたのか
猫が身体を抱かしてくれた
腕時計をみれば結構な時間がたっていたが
気にならなかった



「なにお前、可愛いな、名前考えようかな」

家で猫は飼えない
でも秘密基地に住んでくれるなら大歓迎


学校の給食でいつも牛乳が余るから
それをあげたらいい



色々考えていたら
ふと気付いた

「解った、お前…」


「何してるんだ?タミヤ」


見上げればゼラ



「おお、ゼラ、こいつ此処に住んでるらしい」

「猫か、いつのまに住みついたんだろう」


ニャ



俺は思わず吹き出してしまった

「ぷ、、あはは」


「何だ?」
怪訝な顔のゼラ



「この猫、ゼラに似てる」

「は?」



「おいでって言っても中々こっちに来てくれない
でもほっておくと猫パンチしてくるんだ
こうやって抱きあげれば大人しくなる」


デジャヴュ。通りで見たことあるはずだ


俺はプニプニの肉球を触った

猫は大人しく寛いでいる



「ゼラって名前つけようか」


ゼラは少し口を尖らしていった
「馬鹿か、それじゃあ、、
タミヤがどっちの名前を呼んでいるか
僕は分からないじゃないか」


ぷいっとゼラは顔を背け
そのまま秘密基地の中に
すたすたと入っていった



ニャ


遠ざかる小さな後ろ姿を見ながら

「恋人がお前にヤキモチ焼いちまった」

小さく猫に呟く



今度はゼラを構ってやらないと
いつ猫パンチしてくるか分からない


「お前の名前は雷蔵とジャイボに決めて貰おう」


拗ねた恋人を追って
俺も猫を抱いたまま秘密基地に


2009/12/34/Web

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