変態か否か


いつもにまして僕は酷い顔をしてる
引き攣って自分でも口角のななめ上がぴくぴく動くのがわかるくらい


土曜日の朝の特撮戦隊アニメの中の赤レンジャー
そんな風に僕はタミヤ君を見ていた
憧れのヒーロー
僕はヒロイン…な訳ないけど、そんな気持ち

そんな淡い憧れは月日の流れと共に
湾曲しややこしい恋愛感情に変化
勿論、初恋です

そして生まれてきて良かったと初めて実感した
俯き加減のタミヤ君からの
「リク、好きだ」の一言
この一言で僕の初恋は奇跡的に報われ
晴れてタミヤ君と付き合う間柄になった
”僕のタミヤくん”なんて勘違いをしても許して貰えるかな…と自惚れたり自己中心的な思考を反省したり


そして自体はスムーズに進行
大人の階段をいっき駆け上がることになる

なんだかんだで僕たち中学生
知識だけは有るんです
好奇心と羞恥心と背徳感と色々ミックスして生まれた感覚は刺激的で
僕はあっという間にタミヤ君に溺れきってしまった
世の中にこれ以上に気持ちのよいことがあるのかな…
多分、タミヤ君も、そうなはず。また恥ずかしくなってきた


そんな僕の顔を更に醜い顔にする理由
”タミヤ君が近寄るとドキドキして困る…”

馬鹿みたいだけど、それはもうお構いなしに
学校でも光クラブでも
僕はタミヤ君と接近したり接触する度に
前回、いや前々回のソレを思い出してしまう
土曜朝の赤レンジャーからは想像出来ないくらい
色っぽい息を吐き雄を全面にだしてぎらぎらしている
そんなタミヤ君を思い出してしまい耐えれなくなり
タミヤ君の視線で身体が焼けるように思うし、何かの拍子に息使いを感じればすぐに”ナニナニ”を思いだし
意識とは裏腹に僕の体内は勝手に熱をもつ

平静を装うも顔が引き攣って仕方ない!
ああ、僕の馬鹿、万年発情期だ
自分の情けないなさに、ため息もでる

これじゃあゼラやジャイボと同じ変態だ
まさか自分があの2人みたいになるなんて思ってもみなかった
出来ればあのようには絶対になりたくない

タミヤ君の視線を引き攣った顔で避けつつ罪悪感にも苛まされる
”これじゃあ普通に話せない”不器用な自分に嫌気がさす



「おい、カネダどうしたんだよ?」
タミヤ君は整った上がり眉をハの字にして
困った表情で僕の顔を見つめた

「俺、なんか怒らすようなことした?」

下校時間になると同時に僕の下駄箱の前を占領し
よそよそしい僕を捕獲すべくタミヤ君は張っていたのである

「ううん、違うよ」
見事に捕まってしまった僕は
”いつから此処で待ってたの”と思いつつ全力でタミヤ君の言葉を否定をした
赤くなる頬を隠すように薄汚れた床に視線をおとし
微かに震える手を隠すようにさっさと上履きをはきかえた


帰り道。重たくしてしまった空気が僕に突き刺さる
タミヤ君はシュンとうなだれ、その姿は飼い主に叱られたあとの大型犬だ
メソメソと僕の後を追いそれでも僕の影を踏むようにちゃんとついて来ていた


僕は自分のお腹の中に溜まる”ソレ”を言うべきか悩む
だってあまりにもタミヤ君は弱々しい
それも全て自分のせいだ
タミヤ君は優しいから馬鹿な僕にキレたりせずに自分を責める
このままでは別れたあとも、ずっとしょぼくれていそうだ
大好きなおやつも晩御飯も明日の朝ごはんも喉を通らないかもしれない

間違いなく僕が悪い

しかし恥ずかしい
なんでわざわざ大好きな大好きな人に
自分、変態なんです。と告げないといけないんだろう
口から臓物が飛び出るよ


「ち、違うんだよ、タミヤ君」
ひっくり返った声が出てしまった

「え?」
弱々しい視線が、かちあった

「う…ち、違うんだ、タミヤ君、僕ね」
あぁとかうぅとか呻きつつ


「何?」
心配そうに覗きこむタミヤの視線に焼き付くされる

僕の生き恥よりタミヤ君に対しての罪悪感のほうが大きい
大好きなタミヤ君を悲しませたくない


「僕、その変なんだ
その…タミヤ君と一緒にいてるとドキドキして…
その…あの…身体が…」



意を決して言葉を繋いだものの、それから先は流石に恥ずかしくて
ひたすらモジモジするしかなかった

少し間をおいてその意図に気付いたタミヤ君は
…顔を真っ赤にした


あああ、最低だ
なんて、はしたないんだろう
「う…ごめん…タミヤ君」


「リク」
”僕、変態だよねごめんね”を言い切る前にタミヤ君は僕よりふたまわりは大きい身体で
僕にタックルしてくるもんだから僕はよろけて
情けなくタミヤ君の胸の中に収納されてしまう道のど真ん中で

「た、た、タミヤ君」
焦って身体を離そうとするけど勝てる相手じゃない

「リクに嫌われたかと思った」
タミヤは鼻を啜らせて呟いた


「嫌いなんて、そんな。ごめんね。そんなつもりはなかったんだ
ただ、恥ずかしくて…僕、変態なんだよ」


「変態上等。俺も変態だ」

至近距離でタミヤの息を感じると、やっぱりくらくらする
でもやっと今日一番の太陽みたいな笑顔が見れた

「た、タミヤ君もそんな事考える?」
僕が怖ず怖ず伺うと何故だか威張って「当たりまえ」と言い切った


「じゃあ、僕とタミヤ君もゼラとジャイボみたいになるのかな…」

「あ。」

「え?」
僕の心の声にタミヤ君が固まる
「リク、今すげー酷いこと言ったぞ」

「え、あ、え…ごめんなさい」
誰に向かってか分からない謝罪にタミヤ君が声をだして笑った

「大丈夫さ。リクは可愛いから。俺たち変態だけど、あれにはならねー」
「タミヤ君も十二分に酷いと思うけど…」

根拠は分からないし
根本的な解決は全くしてないのに
なんか、もう全部どうでもよくなった気がして
くっついたままで僕とタミヤ君は声をだして笑った


☆☆☆


「う」
「何、ゼラ?」
「なんか、寒気した…はっくしゅっ」
「ちょっと大丈夫ゼラ?」
「うう。誰かが僕らの悪い噂を。人間とは必ず裏切る生き物だから…」
「何いってんの?僕らが美しいから噂になるんだよ」
「ん…まぁ…そう言えなくもないな」
「考えてみなよ。例えばさ、ヤコブ×ダフをわざわざプライベートでまで持ち込みたいの?」
「ぐ。おぇ、想像だけで空気が澱む。脳細胞が死滅する。シナプスが切れる」
「でしょ。僕らが美しいからこそ!わざわざ他人の脳内で勝手に再生されて話題になりそして噂になるんだよ」
「ジャイボ、今日は実に冴えてるな」
「やだな、いつもだよ」
「はは、なんだか楽しい気持ちになってきた。やっぱりジャイボは美しいしその上賢い!」
「その調子だよゼラ」


2009/12/34/Web



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