愚かなナイト


もし、俺がもっと大人なら
もし、俺に余裕があったなら


もし、………

そしたら
1駒の自分でも、こいつの存在を独り占めできるんだろうか




ゼラとSEXを終えると酷く惨めな気分になる
熱に浮かされてた最中は考える暇もなく
必死にゼラを求めてたのに
身体の熱が冷める頃、俺は死にたくなるような
惨めな気持ちと絶望感に包まれる

大好きなんだ
ゼラ
何度囁いたって明確な解答はかえってこない
暖簾に腕おし、豆腐に釘、風になびく柳か


でも俺とそういう行為をしてるってことは
ある程度は認めてくれてるんだろうか…真意の程は不明

隣で静かに寝息をたてるゼラ
廃墟の帝王は死んだ魚のように眠る

ゼラの人形のような真っ白な肌は
この濁った廃墟の闇の中の僅かな光源でもぼんやりと浮かび上がって見える


ゼラとSEXをすると
自分が責めているはずなのに、いつのまにか
してやられているような、そんな気がする
時折見せるゼラの微笑みには余裕すら感じられて
馬鹿な俺1人が必死になっている

そんな自分に気付く瞬間
心臓の左上くらいの所を
グッと締め付けられる感覚
このまま潰されんじゃないか
ってくらい苦しくなる
きっと俺の心臓を握り潰すのはゼラだ
ゼラの細くて白い指が俺の心臓を弄ぶ

そして苦しくなった俺は我慢出来なくてゼラを強く叩きつけるように抱いてしまう
細く折れそうな身体を乱暴に揺さぶって
ゼラの限界が見えた時にようやく心臓上の締め付けから解放される


そして今、絶望感に包まれている


眠るゼラの肩に俺は自分の顔を押し付けた
気づいたら涙がでて
ゼラの白にシャツは吸収しきれない俺の涙で溢れて
ゼラの肩先は濡れてしまった

どうして
こんなに辛くなるんだろ
なぁ、ゼラ
一思いに殺してしまいたい
お前なんか居なかったら楽なのに
でも、お前が居なきゃ俺生きていけないわ
矛盾した思考がどうどう巡り
どうして、手に入らないんだ


ひとしきり泣いて
俺は重たい瞼を閉じる
明日はきっと目が腫れていつもに増して間抜け面だろう

廃墟の帝王は真っ白な指でチェス板の上で転がる
愚かな黒のナイトを哀れむ
転がるナイトは自立で起き上がれない

間抜け面の自分を見て
きっと全て理解した上で
ゼラは黙って微笑むのだろう


2009/12/34/Web


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