俺、タミヤ ヒロシの平凡で退屈な、でも安定した毎日は
1人のお騒がせ男のせいで一変するのである
そういや、こいつ小学生の時から
既に頭のネジを数本どっかに落としてきてたなぁ


ライチ未来クラブ
同棲編



「あぁ…あの 野郎うぜぇ」
営業活動で疲れはて足が棒のようになった俺は
やっと自宅(社宅だけど)に辿りつき
疲れのあまり人使いの荒い上司に愚痴をこぼしつつ
重たい玄関の扉を空けた


いつもなら、日中狭い室内に閉じ込めた熱気が
むわっと玄関先になだれ込むはずが…今日は違う


「おかえり、タミヤ」

「げ?!」
疲れたはてた俺の眼球から真っ直ぐ先の広くもないリビングで寛ぐ常川の姿が確認出来た

「げ?!ってそれは、あまりにも酷いんでないか?」
ぷんぷんと怒る常川は全く可愛いくもなんともない

「な、な、なんで、お前がここに居るんだよってかどうやって入ってきた?!」

「何言ってるんだ、タミヤ、君が合い鍵をくれたんじゃないか?」

「はぁ、何言ってんだ…まさか」

目の前の常川は妖しく微笑んでいる

「お前あの時?!」
玄関まであと少しの所で張られ連行され
まさかのヴァージンを奪われた、あの夜
あまり思い出したくないあの夜

あれからひっきりなしに連絡があり
事あるごとにに連れ回され
あまつさえ俺を無理矢理犯すこいつ
いや、いつもいつもヤラレてしまってる俺もどうかと思うが
こいつ、頭だけいいから、いつも俺の読めない所をついてきては、なし崩しに
ウワァァァ

なのにこいつは
自分が俺の恋人だと思っている
なんて自分本意で都合のよい脳みそなんだ


「お前、まさかあの時鍵を…ストーカーか」
「酷いな恋人だよ」
悪気もなくニコニコ笑って棒立ちの俺を見上げてた
一回り華奢なくせに、なんか主導権取られてムカつく

いや、違う違う
ウザイんだよ常川こっち見んな

とりあえずと靴を脱ぎすて
狭いリビングの狭いソファーにどかっと腰をかける
今日は押しかけて来た馬鹿がいるから余計に狭い
「で、なんだよ。用は?」
こんな所まで押しかけてきて…というと
お構いなしに常川が嬉しそうに話しだした

「僕ね、良いこと思い付いたんだよ」
「あ?」
「タミヤが、僕の家に住んだらいいんだ」
「はぁ?!」
「僕、マンションを買ったんだ。でも毎日帰るわけじゃない出張もあるし
1日の長い時間マンションをあけてるんだよね
でもせっかく買ったのにもったえないじゃん
だから、君がすめばいいんだ」



やっぱり頭イカレてるこいつ

「大丈夫、2LDKだしトイレと風呂は別々だし
タミヤのこの部屋よりは広いぞ」
うるせーよ

「しかも駅近!タミヤの職場まで約10分」
「なっ、なに?!でもお高いんでしょ??!!」
「なんと今なら資金礼金家賃光熱費水道費含む全て無料さぁいかが?」

な、なんて魅力的な
妖しく笑う常川がムカつく

「まぁ、とりあえず僕の家に来てみなよ」
ふふっと笑って常川はテーブルに置いていた
車の鍵を取り立ち上がった



「お前、端から俺をここに住ますつもりだっただろう」
「なんのことだか、さっぱりだ」

広々とした2LDKのマンションは流石新築、綺麗で
さらに整理され几帳面な常川の性格が伺えた
白黒を基調にした落ち着いた家具
すぐに住めるよう全てが2つ用意されていた

これが生活するスペースなら
さっきまで俺がいた社宅はなんだ
薄ぼけて褪せた一昔前の風景だ

「なんか、もう凄すぎて言葉でねーよ」
「そんなことはないさ。とりあえず入りなよ」
俺の手を引きリビングに連れていく
黒の皮張りのソファーは俺の体重を優しく分散して支えてくれた

「何か飲む?」
「あ、あぁ」
目の前に置かれたビールはきっちり冷えていた
プルタブを引き抜いておもいっきり喉に流しこむ
常川も横にちょこんと座った



「でも、これは俺がただのヒモだな」
空けた缶を握ってへこませて自嘲気味に呟くと、常川が顔色を伺うように覗きこんできた

「だって全部お前じゃん。完璧じゃん。
こんな歳でこんなマンション買えるんだろ
俺なんか居てもいなくても同じじゃんか
目醒ませよお前…」

そこまで言うと常川の顔が悲しいそうに曇り
人差し指が俺の唇を塞いだ

「そんな事言うな
お金じゃ買えないんだ
僕は、君が居てくれないと…」

でた!泣き落とし
こいつ俺が口頭で責めると昔から泣くんだよね

「僕はタミヤと一緒に少しでも…っく、長く一緒に…ひっく」

「わー泣くなよ」
こいつに泣かれるとほとほと困ってしまう俺も昔から



「しゃーねぇなぁ。じゃあ、たまに来てやってもいいけど」


「本当か?」
泣いてたんじゃなかったのかと呆れるくらいに早く常川が顔を上げ爛々とこちらを見てくる


「俺も男なんだよ。全部を頼りきるなんて
そんな事はプライドが許せねぇ
でも、お前泣くから…たまになら来てやってもいいけど」

そうとだけ言うと常川は、わーっと俺の胸に飛びついてきた
白いワイシャツを握る細い指に力が入った
「僕は嬉しいぞ、タミヤ」
「本当馬鹿だよなゼラは」

昔の名前で呼ぶと一層顔を綻ばして
薄い唇を俺のビールで冷えた唇に押し当ててきた

なんだろう
ウザイのにほんの少しだけ少しだけ
俺は小さな背中が愛しいと思った
今は缶ビールのせいにしておこう


2009/12/34/Web



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