夏祭り


「お祭りに行きたい」
と大好きなタミヤ君に誘われた僕は
歩きづらい下駄をガタガタ言わせながら
待ち合わせの公園への道を急いだのです


蛍光町の小さなお祭りだけどタミヤ君に誘われた事が凄く嬉しくて
夏嫌いの僕も今日の夕暮れを楽しみにしてた
浴衣や下駄なんて慣れてないものに
身を包んだのも、相手がタミヤ君だったから
ダフやヤコブに誘われてたら間違いなくジャージで行くよね


「2人でいくの…?誰か誘う?」
僕としては結構ストレートに聞いちゃったんだけどね
タミヤ君は笑って
「2人で行こう」
と言ってくれたから


待ち合わせの公園には既に屋台が出ていて
見慣れた公園とは全く違う場所みたいに思える
此処から神社までの通りにちょっとした屋台通りが出来るんだ

人波をかい潜っても
タミヤ君を見つけるのは簡単です
Tシャツにデニムってラフな格好だから
スタイルの良さや整った顔がより目立っちゃって
何処に居ても目立つ彼に軽く目眩を感じます


これじゃあ、そこの女の子と同じだ
熱い視線は送るのは僕だけじゃない
タミヤ君をうっとりと眺める女の子の多いこと
本人は別段なんとも感じないみたいだけどね

「あ…カネダ…」
僕に存在に気付いたタミヤ君は口をポカンと開けて固まってしまった
あれ何か、間違がっちゃった…?
せっかくだからと家にあった藤色の浴衣を着せてもらったんだけど…


そのままズカズカと大股で歩いてきて僕の耳元で小声で囁いた
「すっげー脱がしたい」


僕は自分の頬が一瞬にしてほてるのが分かった
開口一番これだもん
思わず背筋にゾクってきちゃったけどさ

「タミヤ君のばか」
「リク顔赤いぞ」
そう言ってタミヤ君は僕の手をひいて歩きだした

「…ちょっと…タミヤ君」

自然に繋ながれた手が恥ずかしくて挙動不振になる僕

「人多いから大丈夫だって、それにカネダすげぇ可愛いから大丈夫」
何が…大丈夫か分からないけど
とりあえず大丈夫らしい

そのまま僕らはゆっくりと屋台を見て回って
タミヤ君と一緒に買って半分こして食べるベビーカステラの
甘さと香ばさにすっかり僕の身体は幸福感で満たされました


神社まであと少し…の所で聞き覚えのある声

「おや、タミヤじゃないか」

タミヤ君はあからさまに面倒くさそうな顔をして振り返った

釣られて振り返った僕はただただア然として
口に入れた林檎飴を思わず落としそうになった


”ゼラが女の子を連れて歩いている”


じゃなくて…
「それは…ジャイボ」
僕とタミヤ君の声は同時だった

「えへ、可愛いでしょ、雷ちゃんに借りたんだ★」

ピンクの花柄の浴衣に髪をアップにして化粧までしているジャイボはどこから見ても美少女だった


「…その、ゼラが、可愛い女の子と歩いてるって思った」

タミヤ君と僕の素直な感想にジャイボがさらにご機嫌になった

「ジャイボ、美しい」
こちらも日本人形のように美しいゼラが
ジャイボに囁くと途端にさっきまで、はしゃいでいたジャイボの顔が赤くなるのである



タミヤ君が突然僕の手をグッと引いたから
僕は足元がつっかえて反動でタミヤ君の腕の中でよろめいた

「うわっ…ちょっとタミヤ君…」
そのままタミヤ君は僕の薄い身体を抱きしめた
僕は鼻筋をタミヤ君の胸板にしたたかぶつけた

おやおや…とゼラの含み笑いが聞こえた
「タミヤやるねぇ★キャハ」
僕はと言えば突然タミヤ君に抱きしめられ
頭に血が登ってくらくらするのと背中に回るタミヤ君の手が異常に熱くて仕方なかった

「これは邪魔しては悪いな、行こうかジャイボ」
「そーだね!ラブラブだったのに邪魔してごめんねぇ、またね★」
僕の背中に2人の声だけが届いた



「あ、あの…タ、タミヤ君。ちょっと、休憩しよ…」
どもりながら情けない声をかけるまでタミヤ君はそのままだった



「だって、なんかラブラブしやがるからさ、こっちも見せつけなきゃさ」
神社の隅っこで口を尖らし膨らむタミヤ君
「見せつけるって…」
「こっちには可愛いリクが居ますよーって」
屈託ない笑顔でそんな事言わないでよ

「だからって…あんな大勢の前で」
「大丈夫だってリクの顔は俺がちゃんと隠してただろ」
僕はさっきから動悸が止まらないよ

「リク座ったら」
石段の隅っこにタミヤ君が座って
ポケットから出したハンカチを広げて手招いた


「タミヤ君…なんかさっきからかっこいいよ、ズルイ」
「あはは、俺は紳士なのこう見えて!」


タミヤのハンカチの上にお邪魔してやっと息が整ってきた


「ジャイボも綺麗だったけど、やっぱりリクがいいな」
浴衣の僕を改めてまじまじ見てタミヤ君がいった
「タミヤ君、、目おかしいよ」
「そんなことない」




「ところでさ」
恥ずかしくて必死にやり過ごそうと親指のかわりに
林檎飴の続きをかじっていた僕の顔を
タミヤ君がキラキラとした目で覗きこんだ
「こんなに可愛いリクが浴衣を着て
俺の目の前に居てるんだから
今晩この浴衣は勿論俺が脱がしていいんだよな?」


フリーズする僕


「リク、林檎飴落ちてるぞ」


ウワァァァ!!
なんて事を言うの!?

「だってリクが可愛いんだもん仕方ねーだろ、今すぐ襲いかかりたいけど自重してんのっ」


タミヤ君は紳士なんかじゃないです。変態です訂正します

「で、でも自分で浴衣着れないから…帰れないし困る…」
僕の抗議に
「今夜は帰さない!!!」
笑顔で速答



ああでも僕も幸せです
これはお祭りの効果ですか?
ALL NIGHT LONG
どうぞ、この夏一番の幸せを僕に満喫させてください


2009/12/34/Web



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