hall


「ねぇエメット」

クダリの視線は先程から1点を見据えていた

「なんだいhoney、そんなに見つめられたら襲っちゃうヨ」
ぐいっと前に乗り出したエメットを笑顔でもってあっさり無視してクダリは続ける

エメットはというと唇を尖らせやや不満気である

「これ、、痛くない?」

それは耳の…軟骨部分に空いた穴
ピアスホールを指差した
ソレが気になって仕方ない
キラキラと光る青い石はエメットによく似合っていた

「そんなとこに穴あけるの…痛くない?」

「随分昔だからねーもう覚えてないけど…痛かったカナ?」
ふーんそんなもんかぁとクダリは納得して頷く



「仕事なさいこの愚弟」
バンっとドアを蹴破るようにしてインゴが怒鳴りながら入ってきたものだから
クダリは背中をびくつかせ恐る恐る後ろを振り返った
クダリはこのエメットの兄であるインゴが怖かった

インゴはというとクダリを視界で捕らえた瞬間に
口角を怪しく上げるものだからエメットから胡散臭い敵意つきの視線を受けるも
全く気にせずに猫なで声でクダリに挨拶をする

「クダリ様、お久しぶりでございますね、珍しいことで」
インゴ気持ち悪いと呟くエメットの足を踏みつけてクダリの元に近寄る

「ごめんなさいインゴ、邪魔したのは僕…ごめんなさい」
プルプルと震えるクダリにインゴは邪に笑う
「いえ、そんなゆっくりして下さい」

あああ、何故うちの愚弟はこんなに図々しく意地汚いのに
こちらの弟様は無垢で綺麗なんだろうか
真っ白なこいつを散々虐めてやりたいと
よからぬ妄想ばかりが頭を過ぎる

「あ、」
クダリが声を上げたことでインゴのよからぬ妄想は物切れに終わった

「インゴもここについてる」
それはエメットとは逆の耳の軟骨部分
赤くキラキラした宝石を見つけた瞬間にクダリは宝物を見つけた子供のように笑うのだ
「エメットとインゴお揃いだ」

インゴからすると思わぬところ指摘されとっさに耳を手で隠すようにするから
エメットからブーイングが飛び
エメットの足をクダリに見えない机の下で
もう一度踏みつけるのだった
ぐぇっと汚いうめき声が聴こえたような気もした

「ねー痛くないの?」
先程エメットにした質問をインゴにもなげかける

「痛くは…ないですね」
なんとなくバツが悪そうにインゴは答え
クダリはというと「お揃い」を大発見し
2人は交互にふにゃふにゃ笑って見つめている
その視線にインゴはいたたまれなくなり視線を反らしてしまう


「エメットとインゴがお揃い…ふふ、僕も好き」
そう言い残し、うふふと笑いながらクダリは部屋を飛び出した

あとに残った2人は呆然とその背中を見送った



「なんかあれだ」「なんです」
同時に声を出してインゴとエメットの視線がぶつかる
「…子供」「全くです」
飛び出していった白は大人の殻をした純粋
これがあの物騒な兄の純水培養かと思うと
2人の背中にゾワリと嫌な寒気がした

「あれに手をだしちゃ駄目だよインゴ」
「そんなこと解っております」
クダリをだしにノボリをからかう程度ならまだいい
本気で手をだしたら最後、彼は地の果てまで追いかけてきて
日本刀というらしい大変殺傷力の高そうなswordで
間違いあっさりcutされるのだろう

いや、そのまえに
鬼畜の塊ノボリとあのべたべたのふにゃふにゃのクダリが
引っ付いていることが2人にとっては既にcrazyなことであった


「ところでインゴ酷い」
クダリにばっかり優しくしてさー
表情だけは笑いながらも拗ねるエメットにインゴはため息を溢す
「本当に貴様は愚弟で低脳なんですね」
悪態をつきながらもインゴのきっちりと手袋をつけた右手が
エメットの頭を撫で信じられないくらいの優しさで頬を撫でた

「ウソ!インゴ大好き」
インゴの罵りが愛してるであることを知っているエメットは
クダリとはまた違う笑顔で無表情なインゴの手をひいてキスを求めた



僕、いいこと見つけた!
ノボリに報告しよう!





2012/ 10/6 /Web

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