出逢っていたら


電気石の洞穴にてアクロマは見馴れないポケモントレーナーに出会う


アクロマの手持ちのポケモンたちは電気石の洞穴が好きで
アクロマは時間があれば洞穴に足を運ぶようにしていた
磁力で浮かぶ岩飛び散る電気
ポケモンたちは嬉しそうにその場を走り回る

「こらこら、はしゃぎすぎですよ」
返事は返ってこないがアクロマは笑みを浮かべ話しかける

浮かぶ岩に乗り笑うロトム
磁力に引っ張られて岩にくっついてしまったレアコイル
それを助けようとするジバコイルもくっついてしまったようだ
メタグロスの上でギギギアルは跳ねていた

オーベムだけはアクロマの腕の中でその様子を眺めていたが
悪戯好きもあってサイコキネシスで岩の位置をずらしながら小さく笑っている

…ように感じる
アクロマには手持ちのポケモンの気持ちが解らない
それを歯痒く思う。この子達は今楽しいのか?
リラックスできているのか?その真意を汲み取ることが出来ない

「殺伐とした毎日ですしね…わたくしは貴方たちを幸せに出来てますか?」
誰ともなく呟くアクロマにふいに声がかかった


「大丈夫だよ」

えっ?と振り返ったアクロマの視界に見馴れぬポケモントレーナーが居た
若草のような色の長髪
イッシュの人ではない…?
穏やかな表情。彼の視線はアクロマのレアコイルに注がれている
そして彼の白いシャツの袖は少し土で汚れていた
彼の目の前のレアコイルはおろおろと狼狽えている…ように見える

目を離した隙にレアコイルがぶつかってしまったのか
「大変申し訳ございません、お怪我はありませんか?」
慌てて彼のもとに歩み寄るも表情は変わらず穏やかなまま


「平気。凄く楽しいって」

「え?」
誰のことを言っている?

「大丈夫。おいで」
レアコイルに視線を送ればするするとレアコイルは彼の手元まで近づきくるくると回ってみせた

「貴方のポケモン達は幸せだ」

「でも貴方が色々無理をするから貴方が心配だって」
くすくすと笑う彼は幼い子供のようだった


貴方は…解るのですか
この子達の真意を汲み取れるのですか


「わ、わたくしはアクロマと申します」
上擦った声。自分らしくもない

「僕はエヌ」
かえってくるのは微笑と中性的な声

珍しく脈拍が早まっているのが実感できる
ドクドクと五月蝿いくらいに

「エヌ様…貴方は」






「あの、、」

「なに?」

「こんなのでいいんですか?」

服を汚したお詫びをしたいと伝えたら
「じゃあ、お茶を飲みたい」と
こんなことでお詫びになるのか
そして貴方は一体何者なのか
貴方はポケモンの意思が解るのか

アクロマの脳内でぐるぐる疑問が回る中
目の前のエヌはニコニコとコーヒーを啜っていた


「アクロマ、、僕とまた遊ぼうよ」

「はぁ…わたくしなんかでよければ」

「アクロマは良い人だから大丈夫」

目の前のエヌが酷く綺麗に笑うので
とりあえず様々な疑問はゆっくりと解くとして
いまはこの空間を楽しもうとアクロマは思い直した






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アクロマとエヌが結局出会わなかったのが残念すぎる





2012/ 10/4 /Web

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