あまいかおり


「クダリ、クダリ」
遠慮がちな揺さぶりで淡いまどろみからクダリの意識が浮上する
うっすら目をあければ覗きこむノボリと視線があった

「ん、おはよ…」
自分から出た掠れた声に気づきクダリは恥ずかしくなる
先程まで散々ノボリに弄られ鳴かされていた
どうやら最後は意識を落としていたようだ

「クダリ、こちらへ」
覗きこむノボリはいつもの調子

「わたくし、リビングで用意してますので」

ドアをあけて出ていったノボリ
どこかしっている香りが部屋に流れ込んだ


「ノボリ」
清められてた体のお陰でクダリはシャツをはおりすぐにリビングにむかった
「あ」
気付いたクダリにノボリは珍しく笑った

熱いクッキー
出来立てだ


クダリは大のお菓子好き
既製品でもなんでも
毒々しいキャンディーも生クリームまみれのケーキも油っぽいチップスも
ノボリが辟易するくらいに好きだ

でもその中で出来立てのクッキーだけは
別格だと思っている

しかもノボリが作ったクッキー!

ノボリの几帳面な性格はことお菓子作りでは遺憾なくプラスに発揮される
丁寧に粉をふるいキメ細やかにし、混ぜ合わせる
1つ1つが正確で丁寧だから出来上がったものはどれも素晴らしく美味になる
クダリも料理やお菓子作りが出来ないわけではないが
大雑把になってしまうことも多く大味になってしまう
ノボリの丁寧なお菓子には到底叶わない

「随分無理させてしまい申し訳ございません」

寝かしてさしあげたかったのですが
クダリは出来立てがお好きだったので
起こしました。もし良ければお上がりなさい

ノボリ天使!天使だよぅ
クダリの目の前には間違いなく天使が映っていた
先程まで散々この天使にいたぶられていたことも
この天使が厭らしくも嗜虐的に笑っていたことも
すっかり頭の片隅から抜け落ち追い出されてしまった

「ノボリ!ありがとう!食べるよっ」
ソファに座ったクダリが言うより先に
クッキーを口に入れた

「んー」
幸せそうに咀嚼するクダリの為の
カフェオレを持ってノボリもその横に座る

「あぁ幸せ」
「大袈裟ですよ」

そんなことないよとクダリは言う
「あのね、クッキー焼く匂いって幸せのかおりって言うんだよ」
「本当ですか?」
「かおりもだし、できたてだし、美味しいし、ノボリが作ったし、間違いなく幸せ」
ニコニコと答えるクダリの言葉に
ノボリもクッキーを1つつまみ口にいれる

「確かに。自分が作ってるのでね、1人で試食しても
ごく普通のクッキーだと感じるのですが、、
クダリは美味しいと喜んで下さったあとだと
とても美味しく感じますね」
わたくし、幸せです
視線が重なりクダリはノボリにぎゅっと抱きついた

「ねぇノボリ、また作って」
「ええ、クダリが喜んで下さるならいくらでも」

大好きノボリっ
ええ、わたくしも

遅いティータイムにリビングはあまいかおりと
幸せのかおりで満たされて
2人は長くソファの上でくっついたまま
休日を楽しんだのでした








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2012/ 9/21/Web

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