04

「ねぇミズキ、不死川くんとはどうなの?」と嬉しそうに聞くカナエに対し、ミズキは首を傾げた。どう、とは何のことか、と顔に書いてある。
カナエは霊感があるのか何なのか、予知夢を見るミズキですら驚くような突拍子もないことを、時折口にするのだ。

「ずいぶんご縁が深いみたいなんだもの。ほら、袖すり合わすも他生の縁って言うじゃない?」
「他生って、前世でも知り合いだったっていうこと?」
「ふふ、どうかしらねぇ」
「そうだったら素敵」
「『次』もかもしれないわ」
「もっと素敵。カナエさんともまた会える?」
「えぇきっと」

ミズキは嬉しそうに目を細めた。彼女の人生は常に孤独と手を繋いでいて、ひとり月を見上げては仲間たちの武運を祈ることしか出来ない。朝になって鴉たちが訃報を運んできても聞くことが出来ず、日没に目を覚ましたところで兄や義姉から聞き、皆が寝静まった後でひとりその死を噛みしめるのだ。
カナエの言う『次』のときには、誰も死なず、太陽の下で笑い合えるだろうか。

「次の世でも会えるなら、カナエさんとお買い物に行きたいな」
「素敵ね、何を買おうかしら」
「何でもいいの。簪でも、帯締めでも、髪紐でも。お買い物をして、甘いものを食べて、ずっとお話してたい」
「きっと行きましょうね。今だって、そうね、次に来るときにはミズキに似合う簪を持ってくるわ。綺麗な髪だもの」

妹の髪を梳いてやるようにカナエの手がミズキの髪を撫でると、ミズキは一拍置いてからにっこりと笑った。「楽しみにしてるね」と。

「それじゃ、そろそろ行かなくちゃ。次に来るときには不死川くんとの仲が進展した話を聞きたいなぁ」
「もう、変なこと言って。実弥さんが困るでしょう」
「ミズキは困らないのね」

ミズキはもう一度「もう」と繰り返して、カナエに手を振った。
遠ざかっていく背中を呼び止め、蝶の髪飾りが振り向くと、一度ためらってから口を開いた。

「あのね、カナエさん、だいすき」

「私もよ」と笑い返してカナエは去っていった。

次の朝がきて、また日が沈んだとき、ミズキは彼女の訃報を受け取った。

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