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 私は今まで、普通に生きてきたつもりです。


 お母さんとお父さんの間に生まれて、育ててもらって、学校に通って友達と遊んで、お風呂に入って眠って、起きて、一日を過ごす。そんな風に普通に生きてきました。

 家庭だって普通です。お母さんもお父さんも優しいです。不満だってないし、不幸でもありません。むしろ、幸せだと思うくらいです。私には勿体ない、そう思うくらいに、幸せです。


 でも、何かが足りないのです。一つだけ、ぽっかりと穴が空いているようです。

 私には分かりません。何が欲しいのかなんて、解りません。どうやって埋めればいいのかは、不明です。


 そんなある日、彼が現れました。私を助けてくれました。とても、素敵な方でした。

 それから彼を見ると、私のぽっかりと空いた穴が、埋まるような気がして。気づけば、私の視線の先にはいつも彼がいて。


 運命なんて言葉を信じたことはありません。でも、今だけは、信じています。信じます。信じて、信じなければいけません。


 真里くん。我妻真里くん。

 頭の中で彼の名前を呼ぶ。それだけで、私は幸せで、幸せでした。


 そうです。私は悪い子です。いけない子です。高望みなんて、してはいけないのに。

 幸せでも、穴は埋まりません。まだ、隙間まで埋まってはいません。私はどうしても、その隙間を埋めたくて、埋めたくて、真里くんに。

 そう、真里くんに。埋めて、もらいたくて。だから。


「真里くん、好き。好きです。好きなの。大好き。ねえ、真里くん。だから」


 だから――

 私のことを、私のことだけを見て。見てください。真里くんに、ただ、見て欲しいの。見て欲しかっただけ、なのに。


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