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 御蔵学園高等部一年生、月夜里誠十郎は、校内でも有名な《変わり者》のようだ。

 中等部の頃から欠席が多く、それでもテストの成績は学年トップクラス。そんな漫画や小説でしか許されない設定を、現実で彼は持っていた。しかしこれは、月夜里誠十郎という存在に触れるか触れないかという表面だけの話で、彼が《変わり者》だと言われる所以はもっと他にある。
 裸足で登校し、裸足で授業を受け、裸足で下校する。いつも制服の上に羽織を着ている。昼食はわらび餅。彼が歩くと、周りにある物が落ちたり壊れたりする。学園長とタメ口で話していた――いくつもの目撃情報が度重なって、彼は《変わり者》という立ち位置を与えられているのだ。
 私が御蔵学園に入学した当初から彼の噂は密かに広まっていたようだが、私は興味がないことにはとことん興味がない人間なので、彼の存在は中学三年生の時に知った。誰に聞いた、というわけではなく、実際に自分の目で見てだ。つまり先ほどの彼の変人話は、彼に出会った後に同じクラスの新聞委員に聞いた話である。
 それでも、彼が《変わり者》と言われる所以を知らなかった私でも、出会って一瞬で理解した。初対面でも、興味がなくても、彼は《変わり者》だと。

 ここで私から、月夜里誠十郎という一人の先輩について話そう。新聞委員から聞いた彼の武勇伝を差し置いた、佐倉弥生の主観の話だ。
 のんびりとしててマイペース。全体的に緩い。基本的に人の話を聞かない。野生児。友達を作らない。一般人と常識が違う。年下の女の子が好き。暑がりで子供体温。
 上げても上げても上げ足りないと感じてしまう彼の話だが、最後に極め付きの話がある。彼が《変わり者》と言われて頷ける話が。

 月夜里誠十郎は、《霊能力》という力を持っている。テレビでよく見るテレパシーやサイコキネシスなど、世間で超能力と言われているものと同じ分類だと彼は言っていた。
 突拍子もない話でにわかに信じがたいと思うが、これはどうしようもない事実そのものである。

 御蔵学園の裏山にある幽霊屋敷。学園の付近で目撃される、この世のものとは思えない奇怪な存在。そして、《霊能力》を持つ月夜里誠十郎という男。
 《変わり者》の先輩と出会ったことにより、私の学園生活は少しずつ、普通からおかしな方向へと傾いていくのだった。


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