上鳴とキスの日
「今日“キスの日”らしいよ」
最初に言い出したのは透ちゃんだったか美奈ちゃんだったか。
キスの日だからなんだ。私には関係ない。でもうるさそうなのがいる。
「な〜上鳴よォ、今日はキスの日らしいぞ」
「へ〜」
あれ、思ったより反応薄いな。話を振った峰田もなんだよ反応薄ぃなとつまらなそうにしている。
てっきり朝っぱらから「今日キスの日だからちゅーしようぜ!」とかしつこく言ってくると思っていたのに。まあ面倒が減ってよかったかな。

寮生活なので朝から晩まで一緒に行動するわけなのだが、昼休みを迎えた今現在何のアクションも無い。
別に期待しているわけじゃないけど。
「昼飯行こうぜ〜」
「あ、うん」
目の前のアホな彼氏よりも私のほうがよっぽど気にしているじゃないか。なんかむかつく。
「は〜〜」
「えっ何?!俺なんかした?」
「何でもないです」
っていうか何もないからむかついてるんじゃん。なんて本人は言えない。
「なんだよ〜」
結局今日一日何も起こらずに終わってしまった。


お風呂から上がって電気の部屋のベッドに腰かけ二人でダラダラ……私はいまだにソワソワしていた。
「今日ずっとおかしくね?」
今日何度目かの言葉。そんなに態度に出ているのだろうか。
「別に」
「なんか、いつもと違う」
理由はもうわかっている。“キスの日”だから。でもキャラじゃないし認めたくない。
「気のせいじゃない?」
ふーん、となにかを察したような返事に少しドキッとした。
「そういえばさ、今日キスの日なんだって」
「へー」
「知ってた?」
知ってるも何も誰かさんのせいで朝からキスのことで頭がいっぱいだ。
「うん」
「キスの日だから、ちゅーしとく?」
朝から連呼されると思っていたその言葉。
「……うん」
やはり分かっていたのか。ふわりと笑って顔を近づけてくる電気に素直に目を閉じる。
たった数秒触れるだけのキス。勝手に焦らされていた私には少し物足りず、離れようとする電気を追いかけるように顔を寄せ最後に下唇を食んだ。
驚きながらも嬉しそうに微笑む電気に引き寄せられ再度唇が重なる。先ほどとは違う啄むようなキス。キスをしながら体重をかけてくる電気に耐え切れなくなりそのままベッドに押し倒された。
離れた唇に電気を見上げると艶めいた表情をしていてドキドキする。
「ねえ、いい?」
「……うん」
何が、なんて愚問だ。さんざんだったがキスの日も悪くないかもしれない。




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