特別なんて必要ないほどの
「ん、」
目を覚ますとすでに隣の温もりは無くなっていた。
素肌に触れるシーツが少し冷たい。
寝ぼけ眼で周りを見渡すが部屋にいる気配はない。起きるか再び横になるか考えて、ベッドから降り落ちている服を適当に着て扉を開けた。
「お、起きた?飯できたけど食えそ?」
「うん。ありがと…」
「はい、ドーゾ」
まだ目の覚めてない私の前に出されたのは
カフェオレとフレンチトースト。
淹れたてのそれは一口で身体に温もりを与えてくれた。
ホッと一息ついていると肩にかけられたパーカー。
それは私には明らかにオーバーサイズな彼のもの。
「そんな格好じゃ冷えるでしょ」
その辺に落ちてた服を適当に着たため短パンにキャミソールという超薄着。心配されるのも当たり前か。
「ありがと。なんか今日甘いね」
「まじ?砂糖多かったかな」
「カフェオレじゃなくて、貴大が」
「いつも色々家事とかやってくれてるから休みの日くらい名前孝行しないとね」
「なんだそれ」
基本、私には甘々な貴大だけど今日は糖度が高めのようだ。
「ごちそうさま。美味しかった」
「そりゃどーも。もう昼だけどどうしよっか。でかける?それとものんびりする?」
目の前のお皿が片付けられる。
もうお昼か。朝ごはんと言うよりはブランチになってしまった。
「洗剤どれ使えばいい?」
「目の前の青いやつ」
あーあ、出しすぎ。スポンジあわあわじゃん。
やべっ、と慌てている貴大が愛おしく見えた。
「貴大」
「ん?ちょっと待って」
「いいから、こっちきて?」
泡のついたお皿。スポンジもそのまま。これ終わってからでもよくない?私でもそう思う。それでも私のわがままを聞いて来てくれる貴大。
黙って両手を広げるとどした?と抱きしめてくれた。
「皿洗いなんてやってくれなくてもいいよ」
「休みの日くらいやらせて欲しいんだケド」
「そんなのどうでもいいからさ……」
「何?」
「いちゃいちゃ、しよ?」
洗い物も洗濯物も全部自分でやるから、
貴大がいないとできないことしたいな
「そんなのどこで覚えてきたの…」
ぎゅうぎゅうと抱きついてきて、赤い耳を横目で見ながらいとしさを噛み締めていると、体が浮いた…浮いた?!
「ちょっと!何すんの!まって!怖い!」
いつのまにか腰まで降りていた腕に持ち上げられていわゆる俵担ぎ状態。
「いちゃいちゃ、するんデショ?とりあえず移動」
「どこに!?」
「寝室に決まってんじゃん。俺としかできないこと、シよ?」
お互いの服が散らかった部屋に逆戻り。
まだ昼だけど、こんな休日も悪くないと思ってしまった。