月が綺麗、かも?
学校からの帰り道。辺りは真っ暗だ。
クラスが一緒で家も近いため学校の女子の中では月島くんと仲がいい方だと思う。現に山口くんと話している時以外は基本的に彼の耳を塞いでいるヘッドホンは首にかかっている。
「なんかごめんね、私が声かけたせいで送ってもらうことになっちゃって」
「別に。どうせ通り道だし。それに名字さんは悪くないデショ。こっちこそ先輩たちが勝手に話進めちゃってごめん」
委員会が思いの外長引き帰ろうとしたところで部活終わりのバレー部と会った。月島くんに声をかけたらあれよあれよと送ってもらうことになってしまったのだ。
「バレー部仲いいんだね。なんかすごく楽しそうだった」
「そう?単細胞バカばっかでそのうち僕にも移らないか心配」
「ふふっ、相変わらずの毒舌。月島くん、山口くん以外とも喋れるんだね。馴染んでてびっくりしたよ」
「はぁ?山口以外と喋れないと思ってたワケ?心外」
「ごめんごめん」
微妙な距離感で並んで歩く。お互い会話がなくても気を使うこともない心地よい空間。さっきまで気づかなかったけど、歩く速さを合わせてくれてる。やっぱり月島くんはなんだかんだ優しいな。
そんなことを考えながら空を見上げた。
目にとまったのはまん丸の月。
「月が、綺麗だね」
「どうしたのいきなり。……それ分かって言ってる?」
「さあ、どうだろうね?」
「なんかむかつく」
「だってほら、満月だよ?滅多に見れないじゃん」
「月に一度は見れるデショ。珍しくもなんともない。………でも綺麗、かもね」
「えっ…と。それはどういう?」
「さあね」
「時が止まればいいのに」
家まであと5分。
互いの気持ちはわからぬまま。