▼ そんなこともありましたが
人生80年と言うならば、わたしは何年生きるのだろうか。
現在、精神年齢4-歳。
肉体年齢は18歳になりました。
「おぎゃあっ」
「ん?」
「あーイルミ泣かないの」
「俺が行こう」
「ありがとう、シルバ」
おんぎゃあっ!と元気よく泣くのは我が息子のイルミ。
それをよしよしとあやしているのは、暗殺一家次期当主のシルバ。我が最愛の夫である。
なかなか由緒正しい(?)家なので、子育てなんぞ妻がするものだ!なんて言い出すかと思えば、そうでもなく。
「ほらイルミ泣くな」
今だって泣き止まないイルミの前でダンディーなはずのシルバの顔は総崩れ。
顔面崩壊をおこして少しまずい顔を曝している。
きっと笑わせようと必死なんだろう。
さらに泣き出した(たしかにちょっと怖かった)イルミに、顔をいつもの真顔に戻して唸るシルバ。
なんとか泣き止ませようと、ガラガラなんかも握っている。
仕事中の冷徹なイメージもガラガラと崩れ、今や粉々、見る影もないのが現実である。
この家の人は、といってもシルバとお義父さんのゼノさん、お義祖父さまのマハさんしかいらっしゃらないのだけど(なぜ女性陣がいらっしゃらないのかしら?)、子育てに積極的な人達だった。
すでにイルミのオムツ替え、添い寝は男性陣を何巡もしている。
上げた中にミルクが入っていないのは単に私のわがままで、子供は粉ミルクではなく母乳で育てることを譲りたくなかったから。
結局粉ミルクも使っているのだけれど、前に男性陣がミルクを上げてみた時に加減がわからず右往左往してしまったのも理由の一つ。確かにイルミったら苦しくても黙って飲んでるから加減が難しいんだけどね。
ついでに拷問の訓練はせめて4歳より後、と約束を男性陣ととりつけた。
かくして、私は赤ちゃんを育てながらもきちんと睡眠をとることができた。
前世では成し得なかった快挙である。
一家の男性陣もよくしてくれるが、使用人たちもよくしてくれている。
むしろ、可愛い盛りのイルミに関わりたくてうずうずしているようにも思える。
遠慮無く来てくれていいのにと思うが、使用人の分際で厚かましいですから、といってなかなか来てくれない。
「ふぎゃあっ!!」
「お?キキョウ、イルミが腹減っただと」
「あーはいはい。イルミーご飯食べよーねー」
今ではイルミの泣き声でイルミの感情まで分かるようになった男性陣とともに、私は楽しく育児に励んでいます。
prev / next