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▼ ジンの保護者様(探偵:ジン)

国際的巨大犯罪シンジゲート、通称、黒の組織。
その組織はコードネームに酒の名前を用い、その衣服は烏のように真っ黒のものを身に着けることからそう呼ばれている。その国際的犯罪組織に、ジンと呼ばれる男がいる。

「どこに行ったかと思えば、犯罪とはね」

愛車のポルシェに乗った女は、肩口で切りそろえた髪で遊びながら呟いた。信号が赤になった時、ちょうどよく端末に連絡が入ったため目を通してみれば、先日とうとう情報屋に依頼した成果が届いていた。決して長いとは言えないそれにざっと目を通してため息をつき、端末を助手席に放り投げ、青信号になったと同時にアクセルを踏み込んだ。

自分には、養い親、というものがいる。
幼い頃、俺は養い親の気まぐれに拾われた。あの日俺を見つけた養い親は、ドロドロに汚れた俺を構わず拾い上げ、そのまま小脇に抱えて家に迎え入れた。正確には、風呂場に放り投げられたのだが。傍目に見れば誘拐のようだが、スラムのどこにでもにいる小汚い小僧を、いちいち気に掛ける人間はいなかった。
不幸自慢ではないが、彼女に拾われるまでの自分の生活は、凡そ人と言えるような生活ではなかった。地面を這いまわって、辛うじて生きている生活。簡単にくたばってやるつもりはなかったが、それも限界だった頃の出来事だ。まさに青天の霹靂。

拾われてからというもの、自分の生活は一変した。
清潔な衣服や環境、暖かい寝床、腹いっぱいになれる食事に、決して勝てない養い親への挑戦。
最後一文がおかしいかもしれないが、この養い親にとっては当たり前のことらしい。家訓とも言えるらしく、養い親の本家筋に近い家はみんなそうなのだそうだ。一度会った幼い甥っ子も同じことを言っていたのでそういうものらしい。もともとは護身のためだったというが、殺意がすごい。
そしてそんな家訓を掲げるからか、この養い親、仮にも女のくせに滅法強かった。拾われた当初はまだ子どもであったのもあって、女性だが大人の彼女に勝てないのもわかる。だが成長して体格、この家訓のおかげで力も技能もつけてきたはずなのに、1度たりとて勝てないとはこれいかに。

もう何度目かもわからない敗北にイライラし、ちょっと裏道に入ってどこぞの悪党相手に憂さ晴らしでもしようとしたら、今の組織に捕獲された。困った。

初めこそ養い親のところに帰ろうと機会をうかがっていたものの、当時幹部だった奴らはトリガーハッピーが大半だったせいで、捕獲された数日のうちに幹部の大半が内輪もめで軒並み排斥され、内部幹部の席はすかすかになった。組織もそのまま霧散するなりすればよかったのに、あっさり幹部を補充しはじめた。そういうことするから、幹部がトリガーハッピーだらけに、、そうかそうか、これが初めてではないんだな。納得。
俺も騒ぎに乗じて抜ければ良かったのに、もめてる奴らよりも更に上位の幹部の目があったせいで身動きが取れず、更に迷惑なことに騒ぎが終結した(排斥されて静かになったともいう)瞬間に、コードネームを与えられた。本当にいらない。
が、ゼロ距離で44口径を頭にごりあてられれば頷かざるを得ない。
仕方なく、本当に、物凄く嫌だったが、ここにきて帰還への道筋を諦めた。幹部になった時点で悪党は確定だ。手を出されれば護身はしたが、殺人どころか盗みの1つすらしていない。本当に何もしていないけれども、幹部になってしまったのだ。仕方ない。
諦めはしたが、納得はできなくて幹部にした理由を一応聞いてみれば。今思い出しても腹が立つ。

顔が堅気じゃないから幹部ね、とかふざけんな。好きで悪人面ではない。

幹部にされた理由がたとえどんなにむかついても、あの脅しは本物だった。解せぬ。解せぬ、本当に。だがここは裏切りには死、そんな物騒な文言が当たり前のように叫ばれる組織だ。
何もしていないのだから抜けようとして、それが裏切りになるのか甚だ疑問だが、帰還しようとして自分が死ぬのはまだしも、一応養子縁組してくれた養い親に命の危険が差し迫るのはごめんこうむりたかった。

それは、ある程度自由が利くようになっても変わらなかった。一応恩のある人を自分のせいで殺したくはない。
世話になっていたころ一度も勝てなかった養い親が、何度かどんな伝手を使ったのか合法非合法問わず接触を試みようとしていたのも把握している。把握しながらすべて断ち切ったのも自分だ。分かっている。だがそれでも。
だからって、こんな邂逅の仕方はない。

「やあ、バカ息子」

ようやっとこの組織から抜けられる、正しく言うならば組織壊滅の足音がする日。トリガーハッピー共の内部分裂ではなく、本当に外部からの組織壊滅作戦。ボスの仕掛けた爆弾によって炎に包まれている建物の中で、いつ振りか会った養い親は、この場に似合わぬ気の抜けた挨拶を、へらりと笑って片手をあげてよこした。

まるで毛を逆立てた猫のよう。
数年ぶりの再会に、挨拶を返すどころか殺気を返すとは躾をどこかで間違えたらしい。

「、、、何故ここに居る」
「居なくなったバカ息子を探しに来て何が悪いのさ」
「はっ、数年どころかずいぶん経っても顔を出さない男に息子とはお優しいな」
「馬鹿言ってんじゃないよ。拗ねてひん曲がったこと言って。あんたがどこで何していようが、何年経とうが、あんたが私の子どもなのは変わらないんだよ」

息をのむ気配ににやりと笑って、わざわざ構えてやる。挑発するよう、昔のように手であおってやって。

「来な。拗ねたアラサー男に灸をすえてやるよ」

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ちょっと力尽きました、、、、。
やる気が起きればちょっとしたシリーズ化の予定です。
補足付登場人物たち↓
養い親 →海外をふらついていたらジンを拾った。名前と伝手で戸籍を発見。さっさと養子縁組する。養い親の名字は京極。ライフルを避け、A氏作品で素手で最強と言わしめたかの京極さんの、叔母さん。彼を鍛えたのは私ですが何か?人外を生み出した人外に、一応人のジンに勝ち目はなかった。悪の組織に息子が所属しようが、滅茶苦茶殺ししてますよと言われようが、あれは私の息子であると、堂々宣言する懐の広い人。養子?だから何さ、あれは私の子ども。裏にいるなら表に連れ帰るだけだね、と組織壊滅作戦に便乗参加。手柄を上げまくるのは主人公やクラッシュな彼らではなく間違いなくこの人。人外に人は、、(ry

ジン →当家ジンは本名黒澤陣の予定。養子縁組したので京極陣。なかなか物騒な名前である。日本人だけど海外にポイされ、スラムで死にかけているところを拾われた。家訓のせいで戦闘スキルを身に着けるも養い親に勝てたことはない。人外に人はかなわないのだよ。あれよあれよと黒の組織のジンとして爆誕するも、実はまったく悪事をはたらいていない。そんなことしてまして殺しでもしたら養い親に〆られるだけでは済まないガクブル おめでとうトリガーハッピー1抜け。でも44口径ごり押しはもう嫌なのでNOC専門の殺し屋ということで地位確立。そこ辺に転がして回収されるのを確認するか、セーフハウスの家政婦(夫)をお願いする。大体被害者(noc)に目ん玉ひんむかれて固まられ、その後笑われる。ちくしょう。顔が怖いせいで堅気に見てもらえないし誤解される不憫。
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