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▼ かごめに成りました(犬夜叉:転生知識あり,原作崩壊あり)

突然現れた、信じてすらいなかったはずの妖怪の手によって実家の神社内にある井戸の中に誘拐され、500年前の戦国の世でひょんなことから四魂の玉のかけらを集めることになり。
これ内容あまり覚えてないけどあの漫画だよね、、、。
ちゃっかり主人公枠にいる悲しさ。
生まれかわり前の自分と恋でドロドロするんだったかなーと、目の前の犬耳をしげしげと見つめる。
なんていうか、言うほどいい男か?こいつ。

そんなことを思いながらも奈落を無事倒し、四魂の玉の消滅イベント。なんか変なとこ連れていかれた。よくさらわれるよなー自分。ピーチ姫かよ。
四魂の玉の中は地べたが無いのでふよふよと漂う。
たぶん、ここが地面!って思えば地べたができて立てるんだろうけど、ふよふよ浮く機会なんて滅多に無いので却下だ。なんだかんだ楽しんでるあたり、私まだ余裕があるな。さすが図太い。悟ったあたりからいろんなものがログアウトしたような気がする。

ふいに気配を感じて視線を巡らせれば、ここ一年戦ってきた相手、奈落がそこにいた。
、、、さっきまでいたか?
周囲は真っ暗だけれども、ぼんやりとその秀麗な顔とお決まりの着物の彼が浮かび上がっていた。
ていうか、ホント好みの顔。声も素敵だったしなー。
そりゃやることなすこと外道っちゃ外道だけど、漫画と違ってどんなにピンチでもピンポイントで非戦闘要員(私とか七宝ちゃんとか)を狙ってこなかったから、そんなに根は悪いやつじゃないんじゃないかと思ってたりする。
希望的観測だけど。正直そんなに嫌いじゃない。
むしろ当たり前のように二股かけた犬夜叉より好きだけど、こいつも桔梗が好きだもんなー。
でも一途なところがいいよね。私を代わりにしようなんて、ちっとも思っていなかったし。
犬夜叉は無意識にそう考えてる節があるから嫌なんだよなー。
今も同じ空間にいて私を探してるみたいだけど、根本的に2回目の喪失を恐れて私を探しているようなので却下である。やっぱり惚れる要素なかったなー。
犬夜叉回収しないとだから待つけどさ。ホントいらんことするよね。来なかったらさっさと出てったのに。これだから忠犬()は。

ふよふよと漂いながら近づいて、奈落が眠って(?)いることをいいことに、私好みのご尊顔をしげしげと眺める。
そっと頬に触れてみれば、ひんやりと冷たい。

「、、、、私はね、奈落。一度貴方とちゃんと話してみたかったわ」

願わくば、こんな戦いになる前にもっといい形で出会いたかった。

「それが望みか?」

ふっとわいた感想に反応して、すかさずこの願いを叶えると言う玉は訊いてきた。

「いいえ、違う。過去形だから訊いたでしょう、四魂の玉」

いつのまにやら私の近くでぼんやりと浮かぶ、無垢の色を宿した玉。肯定すればさっさと叶えていただろうこの玉は、ゆらゆらと空間を漂っていた時から私が願いを言わないか、思い浮かべないか、じっとうかがっていた。
真っ暗で何もない空間に放り込んだのも、誰かに会いたいと思わせるためだったんだろうけれども、なんとこの空間、自分のことや四魂の玉が見せたいと思うものははしっかり見える仕様のようで。
他の人は割と簡単にこの方法で落ちるんだろうけれども、あいにく相手は図太い私だ。
自分が見えるならばとりあえず問題はない。いや見えなくても問題ないので、実質大差ないんだけれども。見えないなら見えないで、とりあえず寝るだけだ。
というわけで、心細くなることもなく、前述のように楽しんですらいたので、あえて無視していた。別に何もないのに願いを言えとか。願い叶える券の押し売りとか、うっとおしいよね。

、、、何が望みだ。
私の思考を読み取ったのか、不服そうになおも願いを言えと言う四魂の玉は、思った以上に感情豊かなようだ。
ふっしぎーと思っていれば何となく近くで騒がしい気配がする。
そろそろ頃合いだろうか。

「、、、自分の望みくらい、自分で叶える。あなたに頼って叶えられる望みなんて、私の分を越えたものだし、あなたに願う望みはない。
もういいよ、四魂の玉。消えなさいな。お疲れ様、おやすみなさい」

犬夜叉も近くに来たみたいだし、もういっかな。
漂うさなか、忠犬のお迎えを察し、四魂の玉に告げれば、そうか、と満足なのか不服なのか、はたまた両方なのか、そんな声がして玉は砕けはじめた。
パキパキと細かくヒビが入る。
多くの人間や妖怪が狂おしいほどに求めたそれは、以前私がしてしまったように飛び散ることもなく、まばゆい光を放って消えた。

−−−−−−−

「で、なんで貴方は生きているの奈落」
「知らぬな」
「ふーん」

四魂の玉が砕けて、変な空間から帰ってきたと思ったら、変なおまけ、奈落がくっついてきた。あれだけ苦労して倒したのに、えらくあっさりと復活しやがる。さっき話してみたかったとは言ったものの、なんか複雑。
とりあえず、きゃんきゃん吠えるワンコロはお座り。
まともに話もできないでしょうが。うるさい。ハウス!

奈落と言えば、そういえば。
身内に彼が存在するだけで生命の危機に瀕する人がいなかったか。

「弥勒さま、風穴また空いてたりします?」
「いいえ、かごめさま。この通りキレイな手のままですよ」

まさしく仏の笑みで答えてくれる弥勒さま。
そうですか、それはよかった。実証するのは大変よろしいですが、私の精神衛生上それはそれはよろしくないのと、そろそろ珊瑚ちゃんがブチ切れ待ったなしなので、私のおしりから手を離しましょうか。
だがしかし、半瞬間に合わなかった。
いつものように怒られる弥勒さままでがセットですねわかります。珊瑚ちゃんホンコワ、、つおい。

さて、目下の悩みだった、弥勒さまの風穴に関しては再発することも今のところはなく、問題なさそうである。
ならば。

「奈落」
「なんだ」
「家来ない?」
「は?」
「はあああ?!!!」
「犬夜叉うるさい」

おすわり。
もはや慣れてしまった音と悲鳴をBGMに、私は奈落の顔をしっかりと見る。
相変わらず好みの顔。実際は人見家の若様のお顔なんだけど、漫画でも早々にご退場なさった故人だし、中身が奈落であってこそのこの色気で、私の好みのご尊顔になっていると勝手に思っている。

「私、前々から貴方とちゃんと話してみたかったのよ」
「、、、奇遇だな、わしもだ」
「わ!うれしいー!」

両想いー!なんて冗談を言い、ちゃっかり手を握りながら喜ぶ。
私の倒す前との態度の違いに、七宝ちゃんが目をむいているが気にしない。どうも穏やかそうだし、問題ないからいいじゃないか。
そうして、恐らく四魂の玉の計らいとやらであろう機会を大切にすべく、私は己の欲に全力で正直になることを心の中で誓った。

だってしょうがない。所詮は私も女だった。
彼を倒す選択肢に、生かすことを追加しようか悩むくらいには一応私は乙女だったのだ。

「ねえ奈落」
「なんだ」
「実は一目惚れでした、なんて言ったら引いちゃう?」
「はっ、その程度でわしは何とも思わんが、殺すべきであり殺した相手に惚れるとは難儀な奴よな」
「そういうはっきりしたところも素敵と思うよ」
「そうか」

いくらなんでもな私の主張にも冷静に、けれど悪い笑みを浮かべながらもしっかりと答えてくれる。少しひねているけれど、やっぱり素敵な人だ。妖怪か。
私たちのやり取りを見て、漫画で私の伴侶となる相手は、真っ赤を通り越して真っ白だ。
君とラブラブした覚え無いんだけどなあ。原作の力は強いね。
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