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シャルンネタまとめ

ついにシャルンホルストが日本にやって来ると聞き、ビスマルクは即座に迎えに行くと手を上げた。ビスマルクがドイツを発ったときすでに北洋、大西洋の戦闘は少なくはなっていたが、それでもまだ敵深海棲艦の脅威は残されていた。しかしついにシャルンホルストが日本に来ることができるということは、あちらもあらかた落ち着いたのだろう。大西洋よりも太平洋のほうが戦場が広く、そして敵の脅威も大きい。その上艦娘技術を実用化できた太平洋沿岸の国家は、日本とアメリカ、オーストラリア、カナダの4カ国のみだ。今でこそ数に技量で対抗しているが、無尽蔵であるかのように湧いてくる深海棲艦に立ち向かうためにはこちらも数を揃えなければならない。シャルンホルストは超弩級とは言えない艦だが、彼女の持つ戦闘技術の高さはその火力不足を補ってなお余りあるほどだ。十分に戦力として数えられるだろう。

そしてなにより、彼女ともう一度一緒に過ごせると思うと、ビスマルク自身が嬉しい。一期上の先輩艦娘、純白の巡洋戦艦シャルンホルスト。ビスマルクがまだ艦娘でなくただの少女だった頃からのあこがれの存在だ。

「シャルンホルストさんと会うの、久しぶりだね。」

無事で迎えメンバーに選ばれたビスマルクに、同行するZ1が言う。そう、とっても久しぶりなのだ。まさかこんなに長い間離れることになるとは思いもしなかった。

「そうね。2年ほど経ったかしら?」

戦況が落ち着いたと言って、日本へ回航されたのはZ1,Z3とビスマルクだけだった。それからプリンツ・オイゲン、グラーフ・ツェッペリンと順に日本に送られ、ついに今日、シャルンホルストがやってくる。Z1の姉妹も護衛としてそのまま一緒にやってくるらしい。最近イギリスやアメリカからも艦娘がやってきているので、いよいよ日本の鎮守府が国際色豊かになりそうだ。

「目標地点間近。そろそろ視認できるんじゃないかな。」

Z1の言葉に辺りを見回す。レーダー照射で探しても良いが、それで深海棲艦を呼んでしまっては面倒だ。長旅で疲れているであろうシャルンホルストにも酷だろう。

海面を滑りつつ、視線を何度も往復させる。晴天できらめく海が眩しい。

そんな時、一つ空砲が聞こえた。

「いた!シャルンホルストさんだ」

慌ててZ1の後を追う。彼女の目指す先には確かに、あの白い戦艦の姿があった。

「元気そうだね、Z1。それにビスマルク。」

艤装も艦娘本人の容姿もともかく白い戦艦、シャルンホルスト。ここまで長い道のりだっただろうに、全く疲れを見せない。

「シャルン、あなたこそ大丈夫なの?」

思わずそう尋ねるが、シャルンホルストは不思議そうに首を傾げる。

「問題ないよ。道中色々な国の船に補給もしてもらったしね。」

さあ、鎮守府へ案内してくれとシャルンホルストは言う。どうやらすぐに出発するつもりらしい。さすがというか、馬鹿というか。





無事に鎮守府にたどり着き、提督に挨拶も終えたところで、ビスマルクはシャルンホルストの手を引いて艦娘寮―それも戦艦寮へ向かった。彼女に会わせたい人がいちばんたくさんいるところだ。その後は間宮へ行って、ああ、イタリア艦娘たちに会いに行くのも良いかもしれない。それから、それから―

シャルンに見せたいものもある。一緒に演習もしたい。日本の美味しいご飯も一緒に食べたいし、温泉にも行きたい。したいことがどんどん出てきて止まらない。

「ビスマルク」

そんな彼女を静止するように、シャルンホルストが声をかける。

「なあに?」

「艤装、塗り替えたんだね。」

ドイツにいた頃より濃い青に染まった格好を見て、シャルンホルストが言う。そうだ、それもあるんだった。

「ええ、この辺りの海の色に合わなかったから…そう!それで、私こっちに来てから空母を撃沈したの!シャルンみたいに!」

今は外している艤装に戦果を描いたのだと報告すると、シャルンは目を細めて笑った。

「強くなったね。」

ところで僕も塗り替えるべきだろうか、と思案しだしたシャルンホルストをビスマルクは慌てて止めた。あの白さが失われるなんて!




「こちら、扶桑型戦艦姉妹よ!!」

魅力的な艦橋を持つ戦艦二人をシャルンホルストに紹介する。いつも冷静な質のシャルンホルストも流石に響くものがあったのか、興味深そうに姉妹の艦橋を眺めている。

「これは…すごいね。倒れないの?」

「倒れないのよ。」

触っても?とシャルンホルストが許可を取る。明らかにバランスのおかしい艦橋を小突き回して、倒れないことを確認したらしきシャルンホルストは目を瞬かせた。

「すごい…」




「大和クラスのネームシップ、大和!」

ビスマルクが日本に来て最初に心折られた存在とシャルンホルストを対面させる。

「初めまして、大和と申します。」

「シャルンホルスト級1番艦、シャルンホルストです。ビスマルクがお世話になっているようで…」

「ちょっとちょっと!何言ってるの!お世話になってないわよ!」





到着したのが昼下がりだったからか、すでに外は暗くなっていた。間宮に行くのは諦めて、食堂で夕食をとろう。そういえばドイツと違って日本は夕食は多いのだが大丈夫だろうか。

「ねえシャルン、日本のご飯だけど…」

「何が出るの?日本のご飯は美味しいってよく聞くから楽しみだ。」

頬を緩めてシャルンホルストが言う。そういえば彼女は料理をすることも食べることも大好きなんだった。少し食生活が変わるが、問題はないだろう。

「ライス中心よ。お箸は使える?」

「どうだろう。ペンみたいに持つんだっけ?」

こうかな、とシャルンホルストが右手の指をくっつける。悩みつつも、食欲は失せないらしい。

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