春の陽気

暖かい…

俺は教室に入って左の窓側、奥のいつもの席に着いて隊長の授業を聞いている。


この席は窓側。
晴れていたら、だいたい太陽の光が差す。

その太陽は春独特の陽気を足していて、春の訪れを感じさせる、が。
昼が終わった午後授業の今。…それは眠気を掘り起こす悪魔と化していた。




つまり今、俺は眠い。
かなり…尋常ではなく、眠い。


先程から睡魔と熾烈な戦いを繰り広げているが、0組の兄弟達は気がつかない。
…後ろの席で本当に良かった。ジャックなどにこの事が伝われば、笑い者になってしまう。


クラサメ隊長は、時折此方を一瞥するがマスクのせいで表情が掴めずにいる。
…気付かれているのだろうか?



その授業の内容は、よりによって俺の興味が薄い分野。食い入って聞いて、眠気を覚ますことは出来ないだろう。
…まず授業中にこれほどの眠気が襲ってくるのは初めてだ。食い入って聞いて起きれるかは定かでは無い。




眠気の理由ー…
それは数時間前の行動が仇を成した。
そんな俺のコンディションは、太陽光によって身体中が暖かい。これはかなり危ない。

そして腹の具合。…満腹ではないがそれなりに満たされている。
リフレでエイトと食事したからか、あいつの食いっぷりを見ていると腹が空いて、いつもより少し多めに食事を平らげた。


それから授業直前まで。
教室で何やら機嫌の悪いナインに遭遇する。理由は大方エースが構ってくれないなのだろうが、少し声を掛けてやるとトレイのように沢山話してきた。意外だったな。
…身体が怠くなるほどに。





これらを踏まえて、現在に至る。
コンディション評価、E。


「最悪…か」


窓の外を見つつ呟いた。瞼は重い。
らしくない。最悪だ。



せめて昼にもう少し多量に食べて満腹になっていれば、腹が張って寝れなかっただろう。


あの時ナインの事を放っておいて話を聞かずに済んでいれば、身体の不快感が眠気を助長しなかっただろう…



直前の行動に呆れ、そして悔やんだ時に長い溜息を吐いた。
その時、いつもの癖で目を閉じてしまう。




…だが、これらは過ぎた事。
今直面している問題は、睡魔との戦い。
過去を振り返って反省すべきなのは、今でない方が確実に有効的だ。

終わったことを悔いる事はもう止めようと…少し遅れたが、俺は板書をするために閉じた目をあけようとした。



「…して、このように変貌を遂げ進化した。我々は既にこの事柄を知っているが、実用するのは困難を強いる。そして……」



隊長の声は聞こえる
だが、視界はいつまでも闇の中。


…おかしい。
…いや、おかしい。…どういう事だ?
俺が一体、何をしたー…



「……で、この事件は結末を迎えたが根本的な解決には至っていない。なので次は……」



隊長の声をBGMに、俺は落胆した。
俺はここまで愚かだったのかと。
また、溜息を吐いた。


確認の為、瞼に手をあてがう。
心臓が鼓動を早める。
冷や汗が薄らと額に浮かぶ。




手が目蓋に触れた。
瞼はー…閉じていた。

閉じていた。


……とじていた。




……俺は間抜けか………
シンクやナイン、ジャックも。産まれたばかりの小さな赤子でさえ、瞼の開け閉じぐらい明確にわかるだろうに…




その瞬間、後悔したと同時に睡魔は猛攻を仕掛けてきた。

激しい眠気が肩の上に重い石を置いたような感覚にし、意識を彼方へ持ち去ろうとする。


そう。
夜寝る時は目を瞑る。少なくとも俺は瞑る。
このように瞼を閉じるということは、寝る準備をしてしまった事に変わりない。


寝る前に考えていた色々な事柄が、どうでもよく思えて眠りについてしまう俺だか、それが眠気を助長させてしまうとは思わなかった。


そしてまさか、自分から最悪のコンディションを微調整してしまうとは、…夢にも思わない。




遠くなる意識、隊長の声。

俺はもう…落ちるのか……

…もう疲れた…諦めて寝よう

起きたら…怒られる、が……




そう思って、意識の灯火を消そうとした刹那。



「は…はっくしょんコラァァァアア!!」





この大きな 0組教室に
響き渡る 壮大なくしゃみ。




俺の意識の灯火は
この瞬間に燃え盛った。



語尾からして、ナインか。
右側を横目で確認すると、皆の視線を浴びながら鼻をグズグズ鳴らしているナインがいた。



「花粉がムカつくぜコラァ…」



あいつも春の犠牲者か。
そう思うと少し救われた気がした。


まぁナインのお蔭(不本意だが)…で、今俺は背筋を伸ばして座れているし、ノートに黒いミミズを描いてしまうこともない。



ここは一つ、
ナインに感謝すべきか?




まさか。と内心笑みながら、ふと教室を見回す。


既にジャックは、春の陽気に敗北して机に突っ伏しながら寝ている(シンクも同じく)し、
マキナは教科書を立てて、レムの写真を眺めている。こいつは春の陽気に当てられていなくともこれか。



……こんな発見があるとは思わなかった。


クイーンは…予想通りにしっかりと授業を聞いて板書している。
エイトは手を握っては解放している…戦闘イメージを掴んでいるのか?



俺の見ていなかった兄弟が、ここにいる。
新たな発見だな。

そして…



セブンに視界を移す。
…お前はいつもサイスを見てるな。



やはり、叶わないか。
少し皮肉を思うが、元々からわかっていた事実だ。…見守ろう。




「後ろの席も、悪くないな」



そう心の中で思った言葉が口を突いてしまった。
小さな音だったが…近くのエースに届いてしまっただろうか。


エースの様子を後ろから窺うが、先程と何ら変わりなく板書をしている。


少し落ち着いた俺は、窓の外の空を見上げた。

…眠気は要らんが、この平穏が続けばいい。



そう思うと、少し口角が上がる。
そしてまた、眠気が俺に忍び寄る。


…だめだ、また眠気が……








いつもは授業を受けるだけだった。
珍しい体験をすれば、新たな発見が待っていた。



この春から、一つ楽しみが産まれた。





(A「おやすみ、キング」)



収集ついてませんですはい←

キングがちょっと…うとうとしているのが可愛いかなと…つい…(笑)
ナインが花粉称っぽいですけど至って健康な設定です(´・ω・)マキナはニヤニヤしてたらいいな…
セブンはいつも見てるわけじゃなくて、たまにチラ見します(笑)そこをキングに見られた訳ですが…(笑)


サイト初小説になりました!
ここのところ、ナインは全て参上していますね←

お読みいただきありがとうございました!

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