桐野さまの頂き物

※合宿の夜のお話です


「傑ー、電気消して」
「ああ、小さいの点けとくか?」
「…、頼む」

きっかけは何でもいい。
どんな些細な用事でも、どんなにくだらない話でも、ただ傑と一緒に同じ時間を過ごせるならば俺は満足感で満たされる。
本当に、ほんの些細なことなのに。
男の癖に、バカみたいだと自分でも思う。


電気を消して暗くなった部屋の壁には、影が2つ、うつっている。
この間クラスの女子に勧められて嫌々ながらも読んだあの少女漫画でも、こんな描写を見たような記憶がある。もちろん最後はハッピーエンドで終わる漫画だった。だけれども自分自身の場合はどうだろう。

自分の場合、好きな奴が自分と同じ性別であるというところから間違っているとは思う。だけどどうしたって俺はそいつが好きだ。他の、どんなに俺好みの性格を持つ女も、どんなに俺好みのルックスを持つ女もそいつにはかなわない。
ああ複雑。恋する乙女ってやつの気持ちが少しだけわかったような気がした。



「なあ傑、俺がホモだったらどうする?」
やっぱりうじうじ悩むのは性に合わないようで。こうやって悩んでばかりいるなら結果はどうであれ、俺の好きな奴である傑本人に聞いたほうがいいと思った。本当は不安で不安で仕方ないけれど。

「別に。荒木の好きな奴が男だったとしても今まで通りだろ。」

「じゃあさ、もしお前が好きだって言ったら?」

「…本気でか?」

「あ、ああ本気だ」

「そうか。じゃあ俺もお前が好きだって言ったらどうする?」

「……」

俺の質問に質問で返した傑の言葉。
一瞬何がなんだかわからなかった。
ああ、これは

「どうした」

「…嬉しい」


頬の表面温度、只今上昇中









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