おやすみのキスはおでこに、ね?
「ねむ、」
瞼が重い。せっかく久しぶりにあったのに。
なに疲れるようなことしてんだよ、俺。
眠いとか言っちゃダメだろ。
「昨日遅かった?」
傑の優しげな声。ずっと聞いてたら絶対眠くなる、そんな声。
そうだ、思い出した。
今日久しぶりに会うから緊張して寝れなかったんだ。
じゃあ、それは緊張させた傑のせいなのではと責任転嫁。
結局、緊張するほど好きになってるおれのせいなんですが…
「遅かった。」
お前のせいで
「そっか、」
そっかってそれだけかよと思わず突っ込みそうなった。危ない危ない。
まぁ傑らしいけど。
すると、傑は何を思ったのか、俺の腕を引っ張り、自分のあぐらをかいた足の中心に俺の頭がおく。
「なに?」
「なんでしょう?」
質問したのに質問で返された。なんだこいつ。
でも妙に心地よくて、眠気はマックス。
「膝…まくら?」
「そのとーり。寝たかったらどうぞ。」
「いいの?」
「荒木のことだから大方今日楽しみにしすぎて寝れなかったかなにかだろ?」
見透かされた。微妙に違うとはいえど、それなりにはっきりと。
なんか悔しくて、あぐらをかく傑の足をピンっと指で弾く。
いたっと小さな声とともに俺を睨む。
そしてお返しとばかりに、ピンっと俺のでこにデコピン。
「ったぁ…ぜってぇ傑のが俺より痛い…」
「五分五分だろ。」
満足げに微笑む傑が怨めしい。
「いや、お前のが痛いよ。あとになったらどうすんだよ!」
なるわけないけど。
でも、なんとなく傑を困らせたくて。案の定少し困って「えー」何て言ってる。
謝ればいいのに!
そんな心の声が聞こえたのか傑は頭を下げる。
謝るかと思いきや、傑の両手によって頭を包まれ、頭をあげられる。
そして傑の下げていた頭と当たるかと思って目を瞑るとでこには柔らかい感触。
どうやら、当たったのは傑の頭ではなく唇だったようだ。
「これでおあいこ、な?」
「結局眠気は覚めたし、得したのお前だけじゃん。」
「いーんじゃない?俺誕生日近いし。」
「都合いい誕生日だな。」
「そうだな。で、もっかいでこにキスしていい?」
傑の頭をガツンと一発殴ったのはこの言葉を発してから3秒もたたないすぐのことだった。
・「おやすみのキスはおでこに、ね?」