絆だっていえば
飛鳥は甘え方を知らない。
というより、泣き方も、人への頼り方も忘れてしまっているようだ。
現に今がそう。
好きなものを諦め、親の決めた未来へと進まなければならないと言うのに、
飛鳥は弱味も見せずに、ただ俺を心配させまいと必死に今にも溢れ出しそうな、
気持ちを隠そうとしている。
でも
それが俺にバレバレになるくらい今の飛鳥は分かりやすいのだ。
今にも泣きそうな目に、ふるふると弱々しく震える肩。
見るからに平気ではない。
でも出る言葉は強がりこの上ないものばかり。
そんな飛鳥を見るに耐えなくて、ギュッと力強く抱き締める。
「飛鳥…。別に嫌なこととか納得いかないことに従うことねぇだろ。お前は我慢
しすぎなんだよ。」
「そんな…ことない…。約束だったことだし。」
ほら、また強がりだ。
「お前が辛いことなんか見ててバレバレなんだよ。だから、強がったりしたって
わかんだよ。」
「別に強がったりなんかしてない。もう好きだけじゃ、サッカーを続けられる余
裕がないんだ…。」
「じゃあせめて、そういうのを誰かに相談してくれ。じゃねぇとお前…いつかど
うにかなっちまうぞ。」
「わかってる…。」
そういって飛鳥は俺の胸に顔を埋める。
「わかってても、出来ないんだ。多分、いまこれが俺の精一杯の"甘え"なんだ。
タカからしたら頼ったに入んないかもしれない。でもこうやって甘えるのが精一
杯で、頼るのもタカで精一杯だ。」
だとしても…
「もっと…もっと、泣いたり、喚いたりしろよ。なんだって受け止めてやんだか
ら。」
「ありがとう…。」
そういって、涙を隠す飛鳥の頭を撫でながら思う。
飛鳥の弱いところを全部受け止めることが自分にできる最大のことで、
今泣いている飛鳥の涙を拭ってやれるのはおれしかいないということ。
その事実が飛鳥と俺が信じあっている紛れもない事実なんだ。
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