キスとばーすでい

熱い。顔が熱い。まるで熱が出たみたい。


目の前の飛鳥さんも頬が赤い。多分俺と一緒なんだろうけど、俺より照れてるんだろうなと思う。


ものなんかより、ずっとこっちのがいいや。むしろ毎日されたい。飛鳥さんからのチューだなんて。


事の始まりは、一週間前『誕生日なにかしてほしい?』だなんてわざわざ電話してまで飛鳥さんが言うから、『誕生日会開いて、二人だけで』そんな我が儘ダメ元でいった。そしたら、『ん、おっけ。』って言われた。


飛鳥さんは大学受験終わったばっかで、疲れてるし、大学から宿題でてるし…だから絶対ダメって言われると思ってた。だからその分何倍も嬉しかった。


そして、誕生会は飛鳥さんの新しい独り暮らしのためのマンションでやった。まさか新居に案内してもらえるなんて、びっくり。でも、そのあと手料理作ったりしてくれてさらにびっくり。


なんか随分してくれるから、ちょっと調子乗って「キスしてください」っていったのが今の状況のはじまり。


飛鳥さんは、少し戸惑ったみたいだけど、すぐ「構わないけど…お前がするようなのはしないぞ。」と顔を赤らめながら言った。


すごく可愛くて、心臓が自分のなかで大きく高鳴るのを感じた。


あぁ、理性持たない。こんなの。と独りで必死に理性を押さえていると、さらに強烈な一撃「鬼丸、目瞑ってくれないか?」だなんて。もう、理性吹っ飛びそう。


しかし、ここで理性が崩れればせっかくの誕生会も台無しだし、何より飛鳥さんからのキスがなくなるので今は必死にその感情を押し込め、目を瞑った。


俺が目をつぶった2、3秒後飛鳥さんの顔が近づいてくるのをまぶたの裏から感じた。でももうちょっとってとこで止まってしまう。


「飛鳥さん…?」


俺が名前を呟くと、覚悟を決めたのかそっと、触れるだけの優しいキスを俺の唇にしてから、飛鳥さんはすぐ俺から顔を離した。


「あの…」


「もう、しない…」


「えっ?」


「もう、キスは…しないからな。」


そう言って、スクッと立ち上がり、台所に向かう飛鳥さん。俺はその手を掴み、強引に引く。


倒れ込む飛鳥さんを後ろからギュッと抱き締め、「いやっす。誕生日だしもう一回」といいかけた時、唇に柔らかい感覚。


「今回は特別。次はないからな。ハッピーバースデイ。」


そう言って俺の手をほどき、また台所に向かっていく。あぁ、まだ俺はこの人には敵わないや。








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