カッコ悪い俺と泣き虫なお前


ひっくひっくとすすり泣く声がドア越しに聞こえる。今は二人きりとなったこの自分達三つ子の部屋で泣くのは一人しかいない。自分の兄貴であり、大嫌いで大好きなコーンしかいないだろう。

デントが旅立ってからというもの毎日、コーンは部屋で泣いている。もう1ヶ月近い。それだけデントの存在はコーンにとって大きかったんだと思う。

でも、さ。デントがいなくなっても、俺がいるのに。俺がいても駄目なのか?俺じゃ役に立たない?そんなに頼りないか?そんな嫉妬心さえ入り交じった感情が自分の中を引っ掻き回し、結局慰めることも、抱き締めてやることもできない。

きっと、デントならさっといって慰めるんだろうな。同じ三つ子のくせにこんなにも違うものかと思うくらいに優しく丁寧に。

そんなことばっかり考えてドアの前で止まっていると、ドアがガチャリとあき、涙でグシャグシャになったコーンが出てきた。


「……ぽっ…ど…」
「えっあぁ、その…」

長い沈黙。

何をいえばいいのかわからなかった。正確にいえば何をいえばこの雰囲気をどうにかできるかがわからなかった。


「あっあの…さ。お前、」
「泣いてるの、気づいてたんでしょ?」

沈黙を破るべく発した言葉が口のなかに戻される。

「うん…」
「そうですか…見苦しいところを見せてしまいましたね。すいません。」

そういうとコーンは洗面台のある部屋へ向かおうとする。

こっちだって、こっちだって言いたいことあんのに。なんだよすいませんって、そんなのずりぃじゃねぇか。最近まで『泣いたら誰かが慰めて』だったのにいきなり慰めらんねぇように、こそこそ泣いて。でも俺は気付いててあえて慰めなくて。で、せっかく慰めようとしたら、すいません。

そんなんじゃ、そんなんじゃおれがかっこわりぃーまんまじゃねぇかよ。


「まてよっ!」

大声と同時に遠くへ行こうとする手をギュッと握る。

「…なん…ですか?」
「俺じゃ頼りねぇかよ。俺の前じゃ泣けねぇかよ。俺じゃ駄目かよ。」
「え…」
「デントがいなくなってからメソメソしやがって。泣きたいなら、一人でばっか泣くなよ!デントみてぇに優しくねぇし。気が利くわけでもねぇ。でも…涙を拭うくらい俺にだってできんだろ?」

そういって、ギュッ。コーンのおれそうなくらいに細い腕を引き、抱き締めて抱き締めて。

きっと痛いって思ってると思う。でも、やめても離せも言わない。
その代わりにコーンの鼻の当たるかたは、涙で湿っていた。



・「確かに恋だった」様からお題を拝借





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