慈雨

ねぇ赤也。「慈雨」って言葉知ってる?


はてなマークを浮かべ、きょとんとする姿を見るにどうやらその言葉事態聞いたこともないらしい。
まぁ、ね。難しいしなかなか使わない言葉ではあるよね。と気を取り直して、


「ちょうどいい雨。どしゃ降りでもなく小雨でもなくちょうどいい雨のことだよ。」
「雨にちょうどいいもくそもあるんスか?俺からしてみたら、雨なんてじめじめして、やる気なくなるし、テニスも出来なくなるし…」


とつらつらと雨の嫌な点について話す。
「まぁたしかにそうだね。」
赤也にはまだ雨のよさは分からないかも。と付け足す。


すると、ぷくーっと頬を膨らませ物凄い仏頂面で「子供扱いしないでくださいよ。」と、言う。
だって、ねえ。分かってないんだもの。まあ逆に分かっててもなんか嫌だけど。

「ここの病室町から逆の方向に窓がついてるから、窓見ても、木しか見えないんだ。でも、ね雨が降るとこの木凄い綺麗になるの。でも雨って言っても慈雨じゃなきゃダメだよ?どしゃ降りじゃ、木についた葉っぱも落ちるし、なにより木が腐る。逆に小雨じゃ、水が足りなすぎて干からびちゃうし」

だから俺は慈雨が好き。


最後にそう言うと、悩んだようにうーんと声をあげた後、「そんなに部長が言うならその慈雨の日のあとに俺きます。雨のあと、ならテニスコート濡れてるから早くこれるし。」とまるで名案のように、顔をキラキラさせながら言う。


最初から、そのつもりでこの話を切り出したんだけど、ね。


(これから梅雨の時期に入るからなかなか晴れないよ)
(それで、も!!いつかきっと晴れるから!!)








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