昔の人の虚言の噺

昨日ねブン太の夢をみたよ。すごく気持ちいい夢だった。こんな狭い鳥籠みたいな冷たい、感情のない場所じゃなくて、優しくてふわふわしてて暖かい場所でさ。

夢について語る幸村くんは清々しいほどの爽やかさで、最近の幸村くんからは考えられない笑顔だった。
(最近の幸村くんは病気の悪化により更にテニスを続けることが難しくなったらしい。)
それが嬉しくて、相槌ひとつひとつまで賜物のように優しく扱う。


そう言えばブン太しってる?昔の人ってね、自分の夢に出てきた人物が自分に好意を寄せる人物だって思ってたんだって。なかなかロマンチストだよね。昔の人は、さ。


ロマンチスト…ねぇ…
ただのナルシストの間違いな気がしないでもないのだが。
「それって幸村くんは俺が幸村くんのこと好きっていいたいの?」
「けして、そんなことは言わないけど。あくまで昔の人の考え方だから。」

ただ素敵な考えだよねと、どこか悲しそうな顔をしながら呟く。


ぎゅっ
幸村くんの体は思っていたより細くてか弱かった。

無意識なのか、なんなのか俺はそのおれそうな肩を抱き締める。


「別に好きだ、よ。幸村くんのことなんか。だって幸村くんだってそうだろぃ?」


「勿論、そうだよ。大好きさ。」
そう言って俺の瞼にキスひとつ。結局、その昔の人が描いた虚言は虚言なんかじゃなくて。ロマンチックでもなんでもない、ただ愛を求めさ迷う行為でしかないんだ。そして俺達はそんな行為に意図も簡単にはまってしまう。そんなもの。





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