今までどれほど脅されても、元妻を害そうとは思わなかった。
私が彼を妻として扱わず、辛い目にも合わせたのだろうし、セイレスを引き取りたがっていたのに許さなかったのも私だ。
セイレスの稼いだ金と分かっていても奪っていくのだ。母として愛情があってセイレスを引き取りたがっていたとは思えないが、それでもこの男はセイレスの、息子の母親だ。ただ黙って金を渡していれば満足をするのならそれで良いと思っていた。

だが、このまま私も元妻も生きていてはセイレスの邪魔になる。
セイレスのために私も彼も死ぬべきなのだ。

この国ではそれほど高いとは言われない魔力を高めた。こんな私でも、妻を殺すのには充分すぎるほどの魔力はあるはずだった。

「確保しました!」

「こちらも確保をしました!」

「えっ…?」

元妻を殺そうと思って瞬間、誰かに身体を後ろから抱きとめられ、攻撃魔法が霧散した。

「その男は牢に」

「な、何で俺が牢に?! 俺を殺そうとしたのはあの男のほうなのに!!??」

「我々が知らないとでも? 貴様がセリアを脅迫し、金を脅し取っていたのは分かっているんだ。今まではセリアが望まないからそのまま放置をしておいたまでで、こうやって事件にまでなっては放っては置けない。貴様は脅迫罪で逮捕だ。セリアは直前で止めたので何の罪にも問われない」

「お、おかしいだろう!そんなの!殺人未遂でっ!」

「いいから黙って連れて行ってくれ。セリアの目に触れさせると、穢れる」

同級生らしい少年たちにそう告げる、私を後ろから抱きしめているのは、あの少年ルクレチアの声だと分かった。
何故、私のことなどを庇おうとするのだ。私みたいなくだらない男を。

「セリア、こんなことをするまで追い詰められていたのに、どうして何も言ってくれなかったんですか?」

「き、君になどには関係ないっ! そもそも、なぜ私が君になどに言わなければいけないのだ!」

私とルクレチアの関係など、補導される男と、補導する少年に過ぎない。

「関係ないはずないでしょう? 貴方が起こす醜聞は皆、兄のお嫁さんになるセイレスさんに関係することです。未来の兄嫁の父が関係ないとでも?」

「そ、それはっ…」

確かにそう言われてしまえば反論のしようがない。
私と少年とはその程度の関係であり、セイレスを通してでの関係でしかない。
すべて少年の兄のためにしたことなのだ。

「すまなかった……考えなしだったようだ…私は」

確かに、私が元妻を殺したら、殺人犯の子だ。連帯責任はないとはいえ、名家なら気にするだろう。
セイレスのためと思ってしたことが、また足枷になりかねない。
少年は兄のために、私を止めてくれたのだ。

「冗談ですよ」

「え? じょ、冗談? な、何が、なのだ?」

「兄のことは、今回の行動に何の関係もありません。貴方があまりにもツレナイので、ちょっと意地悪をしてみただけなんです」

い、意地悪? 意味が分からない。

「どうして、毎回毎回、貴方を補導するのは僕だったか分かりませんか?」

「それは、私がセイレスの父親で」

「違いますよ…だいたい、最近ですよ。兄の想い人が偶然貴方の息子だったと知ったのは。始めから分かっていたんです。貴方があの男に強迫されていたのは……初めて会った時から、僕の心は貴方の物で、貴方のことだから、僕は何でも分かりました」

勿論、セリアは知らない。何でも分かりましたと言った少年が、地道なストーカー行為の末、元妻に脅迫され金を取られていたという事実を。息子のために我慢していて、誰にも知られたくなかったという事を。
しかしその事実を知らないセリアは……

「貴方のことが好きだから、貴方を守りたくて……僕が見張っていればあの男にも脅し取られなくて済んだでしょう? 補導という名目しか取れなかったのは、貴方は息子さんに、事実を知られたくないと思ったからです。でも、それも今日までです。いくら貴方が事を荒立てたくなくても、あの男は貴方に害しか与えない。安心してください。二度と貴方にも息子さんにもあの男は姿を現すことはないと約束します」

「なっ…わ、私はっ」

私など、息子にすら無駄飯食らいの淫乱男だと思われているのに、この少年は私が何も言わないのに、私の事を分かっていてくれたというのか? 

いや、違う。そこにも感動をしたが、私の事を好き?

「愛していますよ、セリア」

そんな私の疑問を口に出す隙も与えられず、強引にしかし優しくキスをしてきた。
この歳で初めてのキスで混乱していた私は、それでも嫌がることもできない。少年がキスをしながら強く抱きしめてきて、私の両足の間に足を入れてくるのだ。
あの神々しいまでに素晴らしく見えたものが、今私に強く押し当てられいる。しかも物凄く熱くなっており、私の体温もその股間と同じくらい火照ってきてしまった。

「僕と結婚をして下さい」

「あっ…わ、私は、たくさんの妻がいたという過去がっ」

「そんなもの、嘘だって分かっています。僕のために純潔を守り続けてきてくれたんですよね? 僕のために唇一つ許さないでいてくれた。僕に抱かれるために、そうですよね?」

そういう訳ではなかったが、少年がそう嬉しそうにいうので否定も出来ない。
そうか、私はこの少年のためにこの歳まで純潔でいたのだとさえ思えた。

誰にも妻を抱いてこなかったなどと言わなかったのに、どうして分かるのだろうという疑問すらわいてこなかった。

「わ、私はっ、君の両親よりも年上でっ」

「僕の両親と同じくらいかもしれませんが、それが何だと?」

何の問題もないと言い切る少年に、それでも私は納得は出来なかった。こんな私を好きになってくれたというのも信じがたいが、もし本当だったら。

「私は……もし、私などと一緒になったら……長くは一緒にはいられない」

少年と私は30年弱ほど年が離れているだろうか。私が平均寿命ほど生きたとしても40年も一緒にはいられない。
私の寿命が尽きたとき、またルクレチアは50代のはずだ。
一人にさせる時間が長すぎる。
この国の人間は伴侶に先立たれても、再婚をしないことがほとんどで、伴侶と一緒に死ぬこともあるという。ルクレチアをそんな目にあわせるわけにはいかない。

「心配しないで下さい。貴方なしで長い時間を生きるよりも、短い時間でも一緒にいたい…ただそれだけです。それに貴方を一人で死なせたりしない。生きるのも、死ぬのもずっと一緒です」

「だからそれがっ!」

私の寿命に付き合わせるわけにはいかないのに。

「僕たちの一族は生と死を司ります。伴侶を不慮の死で失った時は蘇生させることもできるし、お互いの寿命を分け合って、同時に死ぬこともできます。ただし、どちらかしかできませんが。貴方が先に死ぬのなら、僕の寿命を半分差し上げます。それなら、僕は一人にならないでしょう。ああ、反論しないで下さい。僕に早く死なれるのがいやなら長生きして下さい」

私は色々反論しようとした。少年は簡単に片付けようとしているが、そんなに簡単な問題ではなかったはずだ。

「あっ…、だ、駄目だっ」

「そんなことを言っても、僕の物をギュっと離さないのは貴方のほうですよ?」

あの少年の素晴らしく男らしい物が私の中に入ってきて、痛みと快楽とで私の頭の中は真っ白になっていた。
少年は何歳なのだろうか? 私の評判は良くないが、実際に淫行をしたことになるのだろうか。これまでの未遂と違って、完遂してしまっているので、逮捕では済まないとか、頭の中では色んなことがよぎったが、少年が突き上げるのに従って、そんなことなどどうでも良くなっていってしまった。

「これで、貴方は僕の妻です。ただすいません、僕はまだ16歳なので、結婚まで2年待ってください。今日のことは、貴方が僕のものだと覚えていて欲しいから、貴方を抱きました。ただ、結婚できるまでに妊娠させてはいけませんから、これから先は初夜まで取っておきましょう」

「えっ?……」

ルクレチアは私の中に入れるだけ入れて、散々出し入れしたのにも関わらず、中に出すこともせず、未だに隆々と誇ったものを、私の中から出してしまい、それでも見せ付けるように勃起させたまま私にそう囁いた。

「そ、そんなっ…」

「僕も辛いんです。貴方の中に出したかった、セリア。でも、貴方の中に出してしまっては、僕は2年も我慢はできないでしょう。2年後、楽しみに待っていて下さい」

私生児を産ませることになっては、いかに一族の力が強くでも擁護をしてもらいようがないから。僕も早く大人になりたいんです、と私に切々と訴えながら、あの素晴らしいものを仕舞いもせず、私に握らせながら、18歳になったらすぐに結婚をしましょうと、約束をした。



「最近、愛人は良いんですか?」

「うむ…あまり、セイレスの金を使っては申し訳がないからな」

「今頃殊勝なことを言い出しても、気味が悪いんですが……結納金をたくさんもらったので、父上は使いたがると思ったんですけどね」

あれから2年。セイレスとルクレチアの兄、ジョエルと結婚が決まり、明日セイレスは嫁に行くことになった。
私も息子の婿になる予定のジョエルの紹介で結婚が決まっていた。
セイレスは私が誰と結婚するか知らないようだが、まさか自分の夫の弟が父親と結婚するは思ってもいないのだろう。私もしばらくは秘密にしておいてくれと頼んだ。そんな不思議な縁組を嫌がるかもしれないと思ってのことだ。

誰が見てもおかしな縁組だろうし、ルクレチアの両親に反対されないのだろうかと、散々悩んだが、悩んでも結局私はルクレチアと結婚するという魅力に逆らいきれなかった。
この2年間、キスしかしない清い日々だったが、ルクレチアは水浴びが好きなのか、私が会いに行くたびに全裸で水浴びをしていて、私に笑いかけるのだった。
16歳の時でさえ、あんなに大きい物を持っている者はいないと思っていたのに、成長するに従ってますます大きくなっていき、今では神々しすぎて見ているだけでからだが熱くなってしまうほどだった。

あれが一度私の中に入ったことがある。そう思うだけで愛おしくて、さらに大きくなった物で挿し貫かれたくて仕方がなかった。

「父上の縁談はジョエル様とリオン様が探してくださったので、ご迷惑をかけないでくださいよ。本当は父上を置いていくのは心配なんですが、ジョエル様がちゃんとあとのことは手配したから心配ないと言いますし…」

「私を何だと思っているのだ! 私だとて一人でっ」

「無理だって分かっていますから…結婚相手にご迷惑かけそうで本当に心配です」

本当に息子には心労をかけ通しだった。本当の息子ではないが幸せになってほしい。
母親にも父親にも似ていない。元妻は最後まで父親の名を明かさなかったが、これと言う人は見当がついていた。私の父親と不倫をしていたのだ。おそらく、セイレスは私の異母弟だ。けれど、血の繋がりなどどうでもいい。

最後に心配する息子を嫁に出し、私を嫁入り装具としてやはり連れて行こうと真剣に悩んでいるのを見送った。

「妬けますね。息子さんだと分かっていても、僕の妻が愛する人は」

「ルクレチアっ」

「良いんですか?……結局、誤解されたまま一生過ごすことになりますよ」

息子には真実を知る必要はない。父親は放蕩者で、夫の斡旋で夫を紹介され、そうして姿を消した…で構わないだろう。

「良いのだ。真実は誰も知らないままで、このままセイレスが幸せになってくれればそれで…」

「僕が真実を知っていますよ……貴方は馬鹿ですが、優しくて可愛い人だ。僕の奥さん。今日まではセイレスさんの父親として生きてきたかもしれませんが、今日からは僕の奥さんです。それ以外の生き方は許さない」

少年が、いやもうルクレチアは少年ではない。18歳をむかえ、立派な青年になっていた。

「さあ、僕の城に行きましょうか……セイレスさんから頼まれているんです。貴方の夫になる人の条件は、貴方を愛して、幸せにしてあげて、そして外に出ないように閉じ込めてあげる人。貴方のように騙されやすい人は、永遠に閉じ込めてあげないといけませんからね……心配しないで下さい。僕の愛で、そんなことも気にならないほど愛してあげますから」



END
時間があればルクレチア編?もかきたいな〜と思っています。



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