「父上! また無駄使いをしてっ! 僕の給料はそんなに高くないんです! 昔と同じように使われてはたまったものじゃありませんよ!!」
「私は公爵なのだっ! 貴族に相応しい暮らしというものがあるのだ!」
「そんな事を言って! もう僕たちは貴族ではありません! 身の丈のあった生活をしないといけないのに」
息子が私の無駄使いを責めるのはいつものことだ。だが、私は反省はしない。
反省したら、私は私ではないからだ。
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「はいはい、元奥さんに近寄ってはいけないと通告しておいたでしょう? 反省房に入りましょうか?」
騎士に補導され、これもまたいつものように牢屋に閉じ込められ息子が迎えに来る。
息子はまた説教をしてきたが、改善するつもりもなかった。
反省をする私など、息子も期待していないだろう。
「父上、また生活費をつぎ込んで、母上に性行為を頼んだんですか? 嫌われているの分かっているでしょう? だいたい離婚したので、母上とは赤の他人なんですよ。婚外交渉は逮捕されるんですから、ほんと止めて下さい。職場で恥かしいです」
息子には迷惑をかけている。申し訳ないと思う。こんな父親で。
息子が稼いで来てくれた生活費は、元妻に渡した。元妻は金がなくなると無心にくる。息子が息子ではないとばらされたくなければ、と、暗に脅迫してくるのだ。
息子セイレスは私の子ではない。誰が父親かは私も知りはしない。
セイレスの母の元妻は、気の強い男で、父が決めて嫁として連れてきた。恋仲だった男がいたらしく、結婚式の初夜の時にはすでに不仲で、私を嫌っていた。
私も妻が好きではなく、お互い嫌いあっている間柄だったが、それでも懸命に初夜をこなそうとはした。だが愛のない性行為も気が進まず、役に立たなかった私は散々罵倒され、妻に指一本ふれないまま長い年月がたった。
その間に妻は誰の子が分からない子を産み、私はそのままセイレスを息子として扱った。
他にもたくさんの妻がいたが、セイレスの母との初夜がトラウマになって、性行為をするのが嫌になったため、セイレスが息子としていたほうが都合が良いと思ったからだ。
元妻も何処の誰だが分からない子を認知するとは思っていなかったのだろう。公爵家の跡取りになるのだ。私の気が知れないと思ったのだろうが、妻に不都合はなく、そのまま仮面夫婦は続いた。
私の血を分けた息子ではなかったが、セイレスのことは可愛いと思い、妻よりも息子と一緒に過ごす時間は多かった。そのせいか、それとも私が頼りないからだろうか。離婚をしてもセイレスは妻についていかず、私の元に残ってくれたのだった。
正直私のような生活力も、働くこともできないような父の側にいてもセイレスが苦労するだけだとは思った。だが、元妻の元にやるのも心配だった。セイレスは不出来な私でも父親として慕ってくれていることは分かっているのだ。知られたくない。
妻に渡して、私が父親でないと知られたら……そのせいで、セイレスが稼いでくれるお金を元妻に貢いでいる。申し訳ないが理由をいう訳にもいかない。私が無駄使いをしたり、愛人を囲うのに使っていると思われたほうがマシだ。
私も働こうとしたことはあった。だが、何をしても続かずにすぐに首になってしまう。生活能力がない無能な男なのだ。
今日も今日とて息子の金を脅されるまま、元妻に渡している場面を発見され、補導をされた。しかも息子よりもずっと若い男にだ。何度ももうこの少年に補導されている。
この国では騎士の実習で高等士官学校の学生が主に、私のような生活に問題のある男を補導するらしい。騎士に逮捕されるのならともかく、こんな子どもに毎回補導をされる屈辱といったらない。
「息子さんに申し訳ないと思わないんですか? あなたの悪評は評判ですよ」
「煩い! よそ家庭のことに口を出すな! 若造がっ!」
どうみても未成年の少年に補導をされた挙句、説教をされる私。
「よそと言ってもな……親戚になるかもしれないのだし、兄貴の恋人の父君でしょうに? 義理の兄になる方の父君がこんな様子では……結婚も危ういのでは?」
「なにっ!?」
セイレスが結婚? 私にはそんなことも一言も言っていなかったのに(言ってはいないし、ジョエルたちが勝手に結婚計画を立てているだけである)あの息子が結婚なのか……散々苦労してきたので、幸せになってほしいと思う。
この少年の兄が恋人なら、きっとかなりの大貴族なのではないだろうか。この少年も見目麗しく、それなりの家の出だということが伺いすることができる。
「セ、セイレスと、私の性癖は関係ないっ! あの子は良い子なのだ! 私がこんなだからと言ってっ! 結婚を許可しないなどと、セイレスが可哀想ではないか!」
「だったら少しは行動を慎んだらどうなのですか? 息子さんのためにも」
こんな子どもに言われたくはない。私だって……セイレスが本当の息子だったのなら、元妻があんな男でなければ。働いて脅された金くらい稼げれたら…。
「わ、私がこんなでは……息子の結婚に差し障りがあるのか?」
「まあ、どうなんでしょうかね……一人に決めたらどうなんですか? 再婚などされて、身を固めれば問題ないでしょう」
「し、しかし…」
私などと結婚してくれる人など…そもそも、性行為が出来ないし。
「そんなに、色んな男を抱きたいんですか?」
「……」
「まだこの国に慣れないかもしれませんが、それは重要な違反行為なので、ずっと補導対象ですよ」
「煩いっ! 放っておいてくれたまえ!」
今更、クズで愚鈍で、放蕩者を止めることなんかできない!
私は無能で働くこともできず、男としての本能も無く。出来損ないをやめることなんて。
「あ、危ないですよ」
運動神経の欠片もない私はその少年から逃亡しようと逃走をし、10メートルも走らないうちにぬかるみにはまり、転んだ。泥だらけになり、悲惨な有様だった。
「仕方がない人ですね。寮はこの近くなので、お風呂に連れて行って差し上げますよ」
「そ、そんなの必要ないっ!」
「まあまあ」
私は抵抗をするも、あっという間に転移をさせられて、風呂に連れ込まれてしまった。
「ほら、脱いでください。手のかかる人ですね」
「や、やめろ! いくら私でも風呂くらい一人では入れる!」
「なら、脱いでください。僕も貴方を抱き上げたせいで泥だらけなので、一緒に入りますから」
と、少年は私を降ろすと大胆にも脱ぎ始めた。
まだ幼い顔立ちに見えたので15歳くらいだと思っていたが、裸になっていくと凄い身体をしていた。
将来騎士になるのだろう、騎士養成学校の生徒だけはある鍛えられた肉体に、清らかそうな顔立ちに似合わない、股間の凄いものが目を引いて、視線を離すことが出来なかった。
「…す、凄い……」
思わず口に出してしまった。こんな大きな股間の物は母国にいた頃には見たこともない。元々他人のものなどほとんど見たことはなかったが、見たことが無くてもこれほど大きな人は母国にはいなかっただろう。
「ああ、これ?……正直嫌われることが多いんですよ。うちの一族は顔に似合わないでデカイのが多くて……僕なんかは、母に顔が似たので可愛らしい顔立ちじゃないので、まだ顔と一致しないと言われないだけ助かりますがね……やっぱり気持ちが悪いですか?」
少年は清潔感のある顔立ちだが、可愛いという感じではない。将来はきっとハンサムになるだろう。
「い、いいや…そんなことは」
「本当ですか? これ、MAXじゃないので、勃起したらもっと酷いことになるんですよ。それでも気持ち悪いとか思わないんですか?」
「……いいや」
私などは初夜で短小と罵られ、トラウマになり性行為ができなくなる心の傷を負った。
国では、男ならでかくなければ男ではないと言われていたのだ。でかければでかいほど男らしく、甲斐性があると言われていた。
少年はまだ若いのに凄いものを持っている。
あんな凄いものに貫けれたら一体どうなってしまうのだろうか。
わ、私は何て事を考えているのだっ!
息子よりも年下の少年のイチモツを見ながら、こんな事を考えるなんて。
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