リーナは自分から離婚を願った、とはいえ、ほとんどジゼリアの非道により強制された。

それでも、ジゼリアを結婚をしてからは何の抵抗をするわけでもなく、ジゼリアという夫を受け入れ、ジーナを産み、良い母をしている。

ただ決してジゼリアを愛したからというわけではなく、何か全てを諦めて、運命だからと何もかもを受け入れているだけのようにも見える。

ジゼリアとブランシュは顔だけではなく性格までそっくりだと、結婚までの逸話を考えても思う。

愛し合った人がいるのに無理矢理割り込んで、受け入れてもらえないと、相手の見ている前で平気で陵辱するなんて息子や孫ながら人間のすることとは思えない。こう思うと、アルフやアンドレ様は扱いやすくていい夫だったんだと思わずにはいられない。

こんなのが自分の息子や孫だと思うと、本当にジゼルやリーナに土下座をしないといけない想いで一杯になる。ブランシュを産んですいません。でもあんなのでも可愛い息子なんです。

こんな無茶をしてもジゼリアもブランシュも、伴侶は側にいてくれるだけで幸せなんだろう。愛されていないのに、それでも好いと思える気持ちが分からないが。


リーナに初めて会ったのは、ジーナのお披露目の時だった。アンリとユアリスのほうが先に孫に会い来ていて、俺たちがジーナとリーナに会ったのはそれからしばらくしてだった。

リーナは俺を見ると縋るような目をしてきた。ジーナを抱かせてくれる時に、そっと一通の手紙を誰にも見つからないように渡してきた。

後で一人で見ると、結婚の経緯と離婚した妻の面倒を見て欲しいと言う懇願の手紙だった。

リーナの面会の許可も出さず息子に任せたアンリや、夫以外どうでもいいユアリスには頼めないことだろう。俺も無理矢理結婚させられたということは皆知っていることだ。俺なら、何かしら救いの手を差し伸べると思ったのかもしれない。

リーナもアンリのところに行くよりも、俺たちの方に来るべきだった。そうしたら、もう少し穏便に事を進めてやれたかもしれない。今更思っても仕方がないことだが。

「リーナ……あの事だが、安心して欲しい。良い縁に恵まれて……たぶん、幸せになってくれるだろう」

何時も幸せそうでもなく、かといって不幸そうでもない、そんな顔をしていたリーナは、俺の言葉に初めて表情を動かされたように、一瞬目をつぶると一筋の涙を零した。

「ありがとうございます……オーレリー様」

「こんなことしかできなくて……すまない」

もうあと何年残されているか分からないが、息子や孫の後始末くらいしていってやらないと。


そしてジーナを借り受けると、ブランシュの城にやってきていた。無論、先に約束をしていたわけでない。

「おじいちゃま〜おばあちゃま〜ジーナが来たの。いれてくだちゃい」

俺やアルフがどれだけ心話を送ろうと無視し続けたブランシュが慌ててジーナを迎いに現れた。

「おばあちゃま〜」

ジーナが走って向っていく先にいたのは……

ああ、微笑んで幸せそうにいてくれると……良いな。



END

俺は、一族の使命を受けて活動する、いわゆる始末人と言うやつだった。
始末人って何?と思われるだろう。特に役職があるわけでもなく、前当主オーレリー様に頼み込まれてやっている。
一族に生まれながら魔力が低かった俺は、治める領地があるわけでもなく、騎士にもならず(なれないわけではない。ただ、プライドだけは高かった俺は、他の親族が出世していっても、分隊長にすらなれないだろう魔力しかないため、一生平騎士でいるのが嫌だったのだ)嫁に行くしかなかった。

だが嫁に行くのも嫌だったので、オーレリー様が自腹で俺を雇って仕事をしている。

そしてその仕事は……

「なあ、そう落ち込むなって……え?人生が終わったって?婚約者を奪われたって人生はおわらねえよ。もっと良い縁談を世話してやるから」

そう。後のことなど何も考えないで横恋慕して、婚約者がいようが、妻子がいようが構わずに伴侶から奪っていく一族の男の後始末が仕事なのだ。

奪われていった相手は、当然落ち込み、自殺しようとしたりする。または公爵家の男の怒りを買ったことで、親族からさえ絶縁されて村八分になり、生きていく気力すらなくなったりするわけだ。

歩く災害だな、うちの男達って。そういう被害者の救済が俺の仕事なわけで。

例えば新しい伴侶を探してあげたり、仕事を探してあげたり、場合によっては国外に出してやったり。親族から村八分にされていれば、仲裁役を買って出たりと結構忙しい。

今回の俺の仕事は、オーレリー様の孫ジゼリアの妻になったリーナの前妻の救済だ。

離婚して実家に戻ったそうだが、案の定公爵家の怒りを買ったのではないかと田舎の小さな家に閉じ込めて、こんな人いなかった扱いらしい。ジゼリアだってそこまで暇じゃない。妻にかまうのが忙しくてもう前妻のことなど忘れた……わけではないだろうが。恨みは一生覚えているしつこい性格だろうしな。リーナの純潔を奪ったことを恨んでいることは間違いないだろう。

そこでまあ、公爵家としては彼は被害者なのでこれ以上制裁を加える気はないので、前妻を虐めるなと親族に忠告をし、新たな縁談を纏め上げた。

同じ一族とはいえ、どうしてこう常識が無いんだろうか。

今日も、決闘をして負けたほうの人間(当然、相手のほう)のフォローを頼まれた。
決闘をして勝ったほうが結婚できるそうで……当然うちの人間が負けるはずもない。

コテンパンにしてゴミのように捨てられている男を拾い上げた。

「うっ……私の婚約者だったのにっ! 公爵家の男はそんなに偉いのかっ!」

言いたいことは分かるけどね……男泣きをしている、その男を治療しようと血だらけの顔を拭いてやると。

「可愛い……っ!」

いや、辺境伯家のような可憐な感じではないが、守ってあげたいと思うような可愛らしい顔立ちの男だった。

可愛い可愛いっ俺の好みだ! そうだ! アフターフォローをしてやらないといけないんだったな。童貞をささげる相手を失ったのだ。俺が代わりに童貞を奪ってやろう!

「え? ちょ、ちょっと何をっ! どこ触ってっ! パンツ下げないで下さいっ!」

泣きながら裸にされた下半身を隠そうとする仕草も可愛いっ! 

泣きながら童貞を失った男を抱えて俺はオーレリー様に『フォロー完了しました! 俺の婿にします!』と報告すれば『……お前もやっぱり公爵家の男なんだな……』と言われました。はい、俺は公爵家に生まれましたが何か?




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