「よしよし可愛いな、メリーベル」

俺にとって5人目の孫と同様のメリーベルを抱いてあやしていた。
実際の孫は4人でひ孫はもっといる。だがメリアージュが生んだ子は純粋に可愛がることができる。

俺が生んだ子たちは、俺の血を引いているせいで純粋に愛せなかった。

「……アルフ…俺は、お前と結婚できて幸せだったよ」

「オーレリー、私もだ」

「でも……ブランシュのことは諦めたつもりだったけど……死ぬ前に一度は会って和解したい」

ジゼルの事件があってから会ったことはほんの数回。おそらくジゼルを蘇生させただろうと思われる時期からは一回も会っていない。会話もほとんど拒否をされ、何時からか孫を寄こすようになり、二人の孫を通して二人のことを知るしか術はなかった。

それで良いと思っていた。それはブランシュを理解できないし、あの二人の世界には入って行ってはいけないのだろうと戒めていた。
息子可愛さでジゼルに婚約を強要して、あんな運命に陥れてしまったのだ。これ以上俺たちは関わることは良くない。

「俺とアルフの子なんだ、ブランシュは。もう俺たちは長く生き過ぎた。明日にでも死んでもおかしくない……」

お互いにもう90代だ。魔力が高いせいで肉体的な衰えは無いが、寿命はもう殆どつきかけているだろう。
このままブランシュに一度も会わないままで死んでしまうのは、後悔が残る。何よりも、ジゼルに会って……幸せでいるかみたい。
よく母親の話を聞くアレクシアからは、穏やかそうな二人の様子を聞くが、あんな目に会ったジゼルが辛くはないか。せめて一言でいいから謝りたい。

「ああ……私もそうしたいが……ブランシュが会ってくれるか」

「そうだよな」

会話ですら無視されるのだ。ジゼルに会わせて欲しいと言ったところで、話も聞いてくれないだろう。

「では、ジゼリアに頼むか」

「ジゼリア? 何で? アレクシアのほうが適任じゃないか?」

次男のアレクシアは夫婦仲が円満であり、孫も見せに行っている間柄になっているそうだ。仲を取り持ってもらうならアレクシアに頼むべきではないだろうか。

「ジゼリアの息子が、それはそれはジゼルに似ているようで、ブランシュがとても可愛がっているそうなんだ。孫の頼みなら断わらないのではないか?」

私たちのひ孫に当たる子がジゼルに良く似てるので、その子経由でおねだりならブランシュも無視はしないという作戦のようだ。

しかしジゼリアは、そのまんまブランシュといった感じの孫で……

「ひいおじいちゃま〜ひいおばあちゃま〜おいでなさいませ」

「ジーナ、おおきくなったなあ」

ブランシュの長男ジーナは確かにジゼルに似ている。ジゼリアもアレクシアもブランシュというかアルフ系統の顔立ちなので、孫になってやっとジゼル似の顔が出てきたのだろう。これまでジゼルは絶対に生き返っているという確信があったが、ジーナがそれを証明していた。

「よくいらっしゃいました。オーレリー様、アルフ様」

「あ、ああ……リーナも元気……そうで」

思わず口ごもってしまう。ジゼリアの妻リーナを目の前にすると。

俺もアルフも子どもや孫の結婚や恋愛には口を出さないようにしようということにしていたので、たまに孫の相手がこういう不幸な目に会っているのを目にすると、子どもを産んで申し訳ないと謝罪したい気分になる。
ブランシュの子だからと思っていたが、恋愛結婚をしたアンリの子たちの妻も両思いでないので、つくづく俺の血は業が深いといえるのだろう。

リーナにジゼリアは猛烈に片思いをして、一族の男にありがちな無理強いをしての結婚だった。




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