野獣のような男という言葉がある。文字通りの言葉だが、この国では毛獣という表現がある。
その意味は……


「ロズウェル先輩! 俺のこと先輩のお嫁さんにして下さい!!!」

可愛い顔で、可愛い顔だけだったらお嫁さんにしたくなる可憐な容貌だったが、今はその顔は夕方のせいで可愛い顔に髭が生えていた。これでも朝・昼休憩と剃っているらしいが夕方までもたないらしい。

「……お嫁さん?」

俺は目の前の可愛らしい髭男ワイリーからみんなの前でプロポーズを受けていた。
皆もビックリしている。
まず一つ目の理由は、この可愛い顔をした系の男はプロポーズすることができない内気なのが多い。
大抵は後をつけて見つめているだけで、周囲が結婚してやれとと丸め込むことが多いのだ。なのにワイリーははっきりと求婚してきた。
そして第二はお嫁さん発言だ。
お前のほうが魔力が高いだろ、と言いたいところだが、こいつは魔力感知能力が生まれつき弱いそうで、俺の魔力のほうが自分より高いと思い込んでるようだ。しかし俺は訂正しない。何故なら、訂正したところで良いことはない。

「ワイリー、気持ちは嬉しいが、俺には婚約者がいる。彼と結婚をするつもりなので諦めてくれ」

「そ、そんなっ! 俺諦めませんっ!!!!!! 俺、その婚約者からロズウェル先輩を寝取って見せます!!!!!」

寝取る……強姦して見せますと言われなくて良かった。その気になればワイリーは俺を強姦することなど朝飯前だが、自分のほうが魔力が劣っていると思っているので、自分が妻になるほうだと思い込んでくれている。だから絶対に訂正するつもりはない。

「おい、お前たち、絶対にワイリーのほうが魔力が高い事を教えるなよ」

「教えないけどなあ……あの、辺境伯家の男に惚れられたら何をしても無駄じゃないか?」

「ワイリーは辺境伯家の直系じゃないはずだろ? 確か母方の祖母が辺境伯家の出だとは聞いているが、傍系も傍系だろ」

「それだけ辺境伯家の血が強いってことじゃないのか? 辺境伯家って公爵家の派手さに印象が薄れがちだけど、公爵家にも負けないほど、諦めが悪い男ばかりだって言うぜ。好きになったら何をしても結婚をする……っていうか、周りがどうにかして結婚させてやるらしいし。一族の結束が固いらしいから、逃れれた男はいないらしいぞ」

「怖いこと言うなよ……」

「その上、ワイリーのやつ体は辺境伯家の血を引いているくせに、傍系だからか精神的にはイケイケだしな。押しが相当強そうだから直系の辺境伯家の男達よりも手ごわそうだぞ?」

俺は婚約者にお願いをして早く結婚をして欲しいと言ったが、色よい返事がもらえなかった。
まさか理由を話すわけにもいかない。格好悪すぎるからな。
正直に話せば良いが、年下の同僚に寝取られる発言をされているので、早く結婚をして下さいとは恥ずかしくて言えない。
見合い結婚だから、余計に気を使ってしまう。

「あの、ロズウェル先輩! 夜這い用の下着、どれが好みですか? ジブリールさんのお店で購入してきました! どれでも選んでください!!!」

セクシーな下着だな。だがな、可愛い顔をしているがきっとワイリーには似合わないだろう。顔は可愛いがどうせ拗ね毛も凄いだろうし、アンダーヘアもモジャモジャなはずだろう? 

「あのな……婚約者がいるので裏切れない。ワイリーの気持ちは嬉しいが、他の人を好きになってくれないか?」

「嫌です! 俺、先輩の婚約者と決闘をします!」

「やめてくれ! どうして辺境伯家の男なのにそうポジティブなんだ?!」

お前のほうが絶対に強いだろう! 本人は妻だと思っているが俺からしてみると夫になる魔力をあるワイリーが妻になる婚約者に決闘を申し込むなどただの虐待だ!

「決闘が駄目なら、今夜先輩の上に乗っかって妊娠して責任を取らせます!!! ロベルト先輩にお願いして誘惑の仕方をマリウスさんに聞いてきます!!!」

……誘惑って。せめて全身の毛を剃って来てくれ……勃起しないだろうけど。
まあ、今夜宣告どおり来たとしても本人妻だと思っているから、突っ込もうとは思わないだろうから俺の貞操は無事だろう。

と安気に思っていた。
まさか親友に裏切られるとは思ってもいなかった。

「先輩!!! 実は俺のほうが先輩よりも魔力が高かったそうです! なので、誘惑して寝取って妊娠して責任を取ってもらうことから、プラン変更をして妊娠させて責任を取らせてもらう方向にシフトチェンジをしました!!!」

「へ?……」

「俺、本当は先輩の奥さんになりたいんじゃなくって、先輩の体中を嘗め回して、穴という穴を拡張して俺のちんこを入れたかったんですが、仕方がないので諦めていましたが、夢を諦めなくて良いと知ってうれしかったです!! こんな俺ですが、先輩を大事に大事にして幸せにしますので、不束な夫ですがよろしくお願いします」

礼儀だけは正しかった。
正座をして、よろしくお願いしますと頭を下げた。流石上級貴族の令息なだけあるな……

「あ、穴を、か、拡張?」

「だって、先輩……俺のって……すいません、身体だけ先祖返りしたみたいで。大きくてすいません。でも、返品不可なのでっ!」

潔いほど早くマッパになるワイリーに、思考がついていけなかった。何でだ? この展開なに?

辺境伯家の血を引く男って、できるだけ肌を見せないようにするんじゃなかったのか? この脱ぎっぷりは一体。

想像した以上の毛だな……そして中央にそびえ立つ、有名な大根伝説。

俺は気を失った。



「ひっ」

俺は物凄い衝撃で目が醒めた。

違和感を感じ、己の下半身を見ると大根が突き刺さっていた。

凄いな俺の穴……大根入るんだと思わず感心してしまった。

「先輩が寝ている間にたくさん舐めて解して拡張しました!!! 寝ているほうが身体に力が入らないと思って、入れさせてもらいました! いい具合に力が抜けていて痛くないでしょう?」

俺は気を失っている間に突っ込まれた事を責めるべきか、それとも褒めるべきなのだろうか。
どうせ俺の魔力では、魔力に勝っていると悟ったワイリーには勝てない。あのまま目が覚めていたなら、拡張される恥ずかしい時間を何時間も味あう羽目になると思ったら、寝ている間に突っ込まれたほうが良かった……わけないだろう!!!

あれからさらに時間が経って、さっき見たよりもさらに毛深くなっている。
俺は野獣に襲われているんじゃなくて毛獣に襲われているんだ!!!

毛獣は自分は何も悪い事をしたと思っていないKYだ。こんなのが俺の貞操を奪っていくなんて……

「先輩……先輩、本当に格好良い。俺のくわえ込んで大股を開いている先輩凄くきれいです」

綺麗なわけはないだろ!
っていうか拡張したって言うけど、痛いっ! 大根入れられれば初体験なんだ痛いに決まっている。

「ちょっと……痛いから」

「はい、すいません。いくら広げても痛いですよね。先輩処女だったから……先輩の処女俺が貰っちゃったっ! あ、出ちゃった」

は、早いっ。あ、でも終わってくれて……

「お前、中で出したのか?」

「だって先輩に妊娠して欲しいからっ」

「ふざけんな!!! お前みたいなKYの毛獣が生まれてきたら世間様にどうお詫びをすればいいんだ!!??? ちんこがでかくて毛深くてKYなんて良いところ何も無いだろ??!! 性格が良いのが取り得のはずなのに、KYな辺境伯家の男なんて公爵家の男にも劣るだろ!!!」

「ご、ごめんなさいっ……あの……先輩に似た子ができるようにもう一発仕込みますので許してくださいっ」

だからそれがKYだってと叫ぶ前に大根を突っ込まれたので抗議ができずに終わってしまった。


その後、無事妊娠してしまった俺は親友に売られただけではなく、婚約者からも売られていたことを知った。何でもワイリーが俺に懸想しているのを知って、結婚した後に寝取られたらたまったものではないと思ったらしく、逆にワイリーの応援をしあの日の拡張道具すらプレゼントしたのは婚約者だったらしい。

親友にも婚約者にも夫にも恵まれない俺って……

「先輩っ! 大好きっ! 一生愛します!」

顔だけは可愛い毛獣に愛された俺は不幸だ……ただ、辺境伯家の男ってどこか憎めないって本当だな。KYな毛獣だけど、慣れれば可愛くなるのかもしれない……大根は絶対に可愛くは思えないだろうけど。



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