ロベルトは勇者だと世間では思われている。美人な妻に熱愛され、寝取ろうするほど愛されている男はそうはいない。

「ロベルト、お前良いよな……お前だって一族の血を引いているのに、何でお前だけ」

母メリアージュが公爵家の息子だったのは一家では秘密だったのだが、最近では祖父たちが家にいるため、その素性が分からないほどロベルトも馬鹿ではなく、また最近公爵家の男達が結構ロベルトに絡んでくるようになったため確定的になった。

「さあ…? 父方の血のせいか?」

そう、ロベルトの父ロアルドを見ればその説明も納得するだろう。メリアージュに溺愛と言う名のとんでもない束縛を受けている男だ。

絡まれるだけなら良いが、一族会議に出ないか?ともてない男達から誘われるようになり逃げるのに苦労するようにもなっていた。なんせロベルトだけ不遇の身ではないのだ。それなりの魔力を誇るロベルトも公爵家の男達が一斉にかかってきたら勝てるはずはない。

そして最近、どうしたらもてるのか、妻(恋人・好きな人)に好かれるのか相談をされるようになってきており、酷く鬱陶しくて仕方がなかったのである。
ロベルトは出会った頃からマリウスに好かれている自覚があったので、どうしたら円満に結婚できるか悩んだことはあっても、好かれるためにはどうしたら良いかと言う事は悩んでことはない。父も同様だろう。
だから相談をされても正直答えられないのだ。

「どうしたらエッチに積極的になってもらえる?」

どうせならこういう質問のほうが得意だった。

「ガッツクから嫌がられるんだろう。しばらく求めなければ奥方から求めてくるだろう?」

「それはロベルトの所だからだ! 俺のところは放置しておけば楽でラッキーとばかりにあっという間にセックスレスにされてしまう!!!!」

ロベルトの一家は絶倫一家といっても差し支えはないだろう。母メリアージュは言うまでもなく、祖父母アルフやオーレリーも老齢?ながら毎晩励んでいる。だから、セックスレスになると言われても困るのだ。

妻から愛されている男ほど相談しても意味はないのに、周りのもてない男たちは分かっていない。

「ロベルト先輩! 相談があります!!!」

「正直俺に相談をしてもあまり意味がないんだが……」

最近の相談と言えば、仕事のことではなく恋愛ばかりで、この部下の相談も恋愛ごとだと決め付けていた。事実そうだったのだが。仕事のことなら真剣に悩み事を聞く気になるが……

「その! 奥様とお話させてもらいたいんです! 俺……奥様みたいに、相手を誘惑してノッカって既成事実を作って妊娠して責任を取らせたいんです!!!!」

こんな悩みなら、聞きたくも無かった。

「マリウスもそこまではしなかったが……」

勝気なところもあったマリウスだが、自分の事をこれ以上なく卑下しており、ロベルトを押し倒したときも責任を取って結婚をさせるという考えは一片たりとも無かった。ただ、最後の思い出という悲しい気持ちからだった。
だから妻に相談をしても無駄だし、そしてこんな相談を受けさせたくないのですげなく断わった。

ロベルトとしてはそれで終わったつもりだった。


「……お前、何でここにいる」

「あ、先輩! どうしても奥様に相談をしたくて訪ねてきました! 久しぶりにお会いしましたが、前よりずっと綺麗になられましたね! 先輩の愛のお陰でしょうね!」

仕事から帰ると、部下(ワイリー)がいた。マリウスが対応してくれていたようだが、表情は硬く、顔色も悪かった。

「マリウス、顔色が悪い。調子が良くないのか?」

「ロベルト……ワイリーは、好きな人には伴侶になる人がいて……押し倒して妊娠して結婚したいんだって……」

マリウスも同じ部隊にいたので、ワイリーのことは親しく付き合っていたわけではないが、顔くらいは知っている。
だから家にあげたのだろうが、部下が上司を訪ねてきたにしては、マリウスの様子がおかしい。

「まあ、そんなことは言っていたが、どうでも良かったから」

「………ロベルト…俺と離婚したい?」

「はあ?」

ロベルトは来た!と思った。マリウスの謎のネガティブが。何故ここで離婚をしたいとロベルトが思っていると疑うんだと。

「離婚できないから……り、離婚したいんだったら子どもたちが生まれる前に……して欲しかったっ……お、俺は仕方がないけど…っ! でも、アルベルやアルトが可哀想でっ……母親のいない子になるけど、まだ小さいからワイリーがお母さんだと思ってくれるかな?」

「おい、何を言っているんだ」

と言いながら、謎のネガティブがどう働いたか、この言葉で何となく分かった。
ワイリーが好きなのはロベルトで、マリウスはロベルトがワイリーと浮気をして妊娠させ、ワイリーが離婚交渉に直談判にきたと思い込んでいるのだと。
一瞬でマリウスのネガティブ思考を読み解くことができるのはロベルトの才能である。

「お、俺っ……あの時死ぬはずだったけど、ロベルトがちょっとだけでも俺のこと愛してくれたって思わせてくれてっ…二人も子どもを授けてくれてっ……凄く凄く幸せだった。離婚はできないから……ロベルトを死なせたくないから、俺」

「死ぬなんていうなよ! 誤解だ! ワイリーなんて俺の趣味じゃないし、何で簡単に浮気したって思い込むんだ!? 俺はそんなに浮気性なのか? そんな行動したこと一度たりとも無いだろ?! むしろ父上のほうが綺麗な男性に見惚れたりして余程浮気性なのに、俺はマリウスしか見ていないのに、何で疑うんだ?」

「だ、だってっ! お、俺は……ロベルトを無理矢理押し倒して、レイプした卑怯者でっ…」

「それはもう何度も話して解決したことだろう? だいたいレイプじゃなかったし」

「でもっ……ワイリーの話を聞いて、俺って凄く酷いことをしたって思えてきて……もし、妊娠していたら…俺、妊娠を盾にロベルトに結婚を迫っていたかもしれないのに」

ロベルトとしては大歓迎だが、ネガティブの極みにいるマリウスには今は何を言っても無駄で、なんと言って諭しても効果がないのも分かりきっていた。

こういう時必要なのは、身体で諭すことだけだ。

「マリウス、俺は浮気もしていないし、お前と結婚をしたことも後悔していない。それを分からせてやる」

************

数時間後……

「お前、まだいたのか?」

諸悪の根源ワイリーがまだ城に残っていたので、追い出そうとしたところ

「先輩凄いです! あれが身体で言う事をきかすってやつですね!!! 俺も見習いたいです!」

「黙れ! お前のせいでマリウスが誤解して、また死んで責任(結婚をした責任=離婚できないので死にます)を取ると悲壮な覚悟をしていたんだ。さっさと帰れ!」

「先輩、それはないですよ! 俺だって悲壮な覚悟でやってきたのに」

「ロベルト……本当にワイリーの相手がロベルトじゃないんだったら、ワイリーに協力して恋人同士にしてあげて欲しい」

身体で愛を分からせた分、幾分正気を取り戻したマリウスは、それでも若干疑っているのかロベルトが相手じゃないのなら、他の男とくっ付けさせて、無罪であることを証明しろということなのだろう。

「………お前の好きな相手と言うのは誰だ?」

「はい! 同じく先輩の部下、ロズウェルさんです!」

「え?……ロズウェルって……俺たちの同期の?」

ロベルトの部下であるロズウェルといったら、同窓生であるマリウスの友人でもあったロズウェルしかいない。

「ロズウェルって……ワイリーよりも魔力低くない?」

マリウスもロズウェルのことを良く知っているため、激しい疑問に駆られたようだ。

「低いな」

なのに何で手篭めにするんじゃなくって、乗っかって妊娠したいんだ? 不可能だ。

「ええ? そんなことないですよ! 俺のほうがロズウェルさんより魔力低いです!」

たまに魔力感知能力が生まれつきいかれている男もいる。
普通は誰しもが魔力探知能力があり、自分よりも魔力が高い男に畏怖し、押し倒すことはできない。これは絶対の法則であるはずなのだが、魔力探知能力が上手く働かないと、自分よりも魔力が高い男も押し倒すことができる。ただし、相手のほうが自分よりも魔力が高いので、当然力で抵抗させ勝つことはできないので成就しない。

ワイリーの場合、ロズウェルを自分よりも魔力が高いと思い込んでいるせいで、妻になろうと思っているのだろうが。

「じゃあ、聞くがな。本来お前は夫になりたいほうなのか? 妻になりたいほうなのか?」

「それは俺のほうがロズウェルさんよりも魔力が高ければ、夫になりたいですよ! ロズウェルさんの股間を嘗め回して、穴という穴を開かせまくってひいひい言わせたいですが、俺のほうの魔力の問題で妊娠して責任を取ってもらおうと思っているんですが。夫になりたくても魔力が低いから仕方がないですよね」

「いや、お前の魔力探知能力が壊れているだけで、間違いなくワイリーのほうが魔力が高い。作戦を変えて、妊娠して責任を取るのではなく、妊娠させ責任を取る作戦で行け」

「そんなはずはないですよ! それは……俺もそのほうが嬉しいですけど。正直言えば、妊娠して結婚したいと言いながら、俺突っ込まれるより突っ込みたいんですけど。でも物理的に無理だと思ったから……」

「俺とマリウス両方がロズウェルのほうが魔力が低いと証言しているんだぞ? 嘘だと思うのなら、ロズウェルの股間を舐めて穴に突っ込んでみろ。それができたら、お前のほうが魔力が高いことの証明になるだろう?」

「そ、そうですね! 先輩がそういうのなら! 俺頑張ってロズウェルさんを妊娠させてみます! もともと俺、夫派なので」

と、今まで妻になると言い張っていたのが嘘のように相手を強姦する気満々で飛び出して言った。

「……ワイリー可愛い顔をしているから、ロベルトのことが好きで……ロベルトもあんな可愛い顔をしていたら」

しかしまだマリウスは心配そうな顔をしていた。

「あのな…ワイリーの可愛さは、あの有名な辺境伯家の血を引いているせいだろ? 母方が辺境伯家のはずだから、隔世遺伝だ。お前は見たことないかもしれんが、凄く毛深いし、夕方になるとあらゆる箇所がボーボーになっている……全く好みじゃない。むしろ何で妻になろうと思ったのか……」

隔世遺伝のため毛はボーボーだが、直系のようにモジモジ君ではなかったため、無事成功したらしくマリウスとロベルトは二人の結婚式に呼ばれた。

「ロベルト! 親友だと思っていたのに、この仕打ちは無いだろ?!!!!」

「俺たち夫婦の仲のために、お前は犠牲になったんだ」

さすがのマリウスもワイリーが友人を妊娠させ結婚式にまで呼ばれたので、疑うことはなくなった。
可哀想な犠牲者は一人出たが、ロベルトにとってはささやかな犠牲に過ぎなかった。

「酷いっ!!!! あの大根も酷かったっ!!!! 今までお嫁さんにして下さいと謎の告白をしてきたヤツが、毛獣になって襲ってきた恐怖っ!!! それもこれも、お前たちの夫婦生活の安寧のために嗾けられたと思うとっ!!!!」

「いい年をして独身でいるお前も悪いだろう? ワイリーに狙われているのを知っていたんだからさっさと婚約者と結婚すれば良かったものを。隙を作ったお前が悪い」

こうしてワイリーの幸せと、ロベマリ夫妻のために犠牲になったロズウェルの結婚式は円満に終わりを告げた。

マリウスは自分が夫の浮気の心配をするのに夢中で、ロズウェルを夫が生け贄にしたことに気がついていなかったが、気がついたところで、結構ロベルトや家族(実両親除く)以外どうでも良いのでなんとも思わなかっただろう。

「ロベルト……もし、好きな人が出来たら、浮気する前にちゃんと言って欲しいんだ。そうしたら……」

「馬鹿だな。死ぬ覚悟をする時間ができるとでも言うのか? 浮気なんかしないから安心しろ。俺が愛するのはマリウスだけだ」

「ロベルトっ」

「マリウス」

どちらが新婚か分からないイチャラブを他人の結婚式で発揮する迷惑夫婦だった(BYロズウェル)

END



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