誰かの両親の話ですが、まともな夫婦だと思っていた理想?が壊れますのでご注意ください。





「レイ……見合いを持ち込まれたんだが…会ってみてくれるか?」

「父上……俺はまだ17歳なんですけど」

見合い自体はそう珍しい事ではなかったが、まだ17歳ということもあり中々この年齢で見合い話を持ってこられることは無いはずだ。中には家同士、子どもの頃から婚約をしている場合もあるらしいが。

「断わるにも……中々難しいんだ。会ってみるだけでも良いから、会ってくれないか?」

仮にも父は国王の弟で、俺は国王の甥だ。身分的には早々誰にも負けないのだが、こんなに父上が遠慮しがちということは陛下から命じられた話なのだろうか。

「誰なんですか? 相手は。どこに婿に行けと?」

「婿ではなく……嫁になるが。公爵夫人の弟の息子に当たる方だ。次期当主アンリ殿の従兄弟で側近をしている。家柄や血筋はこれ以上ない嫁入り先で」

家柄は公爵家の一員なら確かにそうだが、血筋なんかは誘拐しまくっている、母方の家系図は誰も知らない(夫は知っているかも)という一国の公爵家にあるまじき血筋だろう?
わが国では普通といえば普通だが、他国で祖先を遡って五代先まで分からない大貴族なんてないそうだ。
一応我が王家は、王家だけあって誘拐は止めようと自主規制しているお陰で、家系は正しい。親戚の公爵家は母方の家系どころか名前すら書いてない場合もあるらしい。

「それはまあ……こちらからは断われないんでしょうね」

わが国で一番勢力が大きいといえば王家ではなく公爵家なのだ。勿論、王家には皆が敬意を払って蔑ろにされているわけではない。あの公爵家でも王家に仕えてくれており、反逆をしようとしたことなど一度も無い。むしろ誘拐するほど広がっていく領地にウンザリして、毎回王家に奪った領地の半分を献上(押し付け)ていくほど敬意を払っているが、力関係は明らかに公爵家のほうが大きい。

「最近、公爵家でも国内から花嫁を見つけてくれるようになって、兄上も喜んでいる。レイが公爵家に嫁いでその波を広げていって欲しいと兄上は考えておられるのだ。公爵家と王家の繋がりを磐石にしたいという考えもある」

別に仲が悪いという訳ではないが、同じ兄弟から派生したとは思えないほど、今の王家と公爵家では性格が違う。
ハチャメチャやっている公爵家についていけずに呆然と見守っているのが代々の国王といった有様で、磐石なものにしたいというよりは、王家の血を公爵家に流して、もう少しまともな血にしたいと考えているんじゃないのだろうか。

「慣例では王族は婿にいくわけですが、公爵家の方が相手では俺は嫁になるんでしょうね。分かりました、会うだけ会います」

どうせ相手だって好みがあるんだし、誘拐が好きな一族だから向こうから断わられるだろう。ただ陛下が薦める見合いなら断わるわけにもいかないし、という気持ちくらいで見合いをすることにした。先方だって同じだろう。誘拐と略奪大好きな一族が見合い結婚なんてするわけないし……。


「え?……話を進めてほしいと言われたんですか?……」

一応会うだけは会った。それできっと終わりになるんだろうと思っていたが、先方からはすぐにでも婚約をと父から聞かされた。

「ああ、お前の事を気に入ったらしい。あとはレイの気持ちだけだが、彼の事をどう思う?」

「俺は……」

どうせ断わられると思っていた。
だから期待しないで、優しそうで穏やかに笑う人だなと思いながら見ていた。俺も一目見て彼を気に入ってしまったが、公爵家の一族の人だから、政略結婚などするはずはないと思って断わりの連絡が来るのを待っていた。

「彼が気に入ってくれたのなら……結婚しても良いです」

「そうか、では話を進めるぞ?」

父はホッとしたように笑った。俺が断わったら陛下からも先方からも期待されているのに、気まずい思いをするからだろう。勿論、強制するような父ではないけれど、良縁だと思うからだろう。

そして婚約の日を迎え、陛下や公爵家からは当主や次期当主なども顔合わせの場にいる豪華な日になった。

「あの……本当に、俺と結婚する気なんですか?」

「勿論だ。何故そんな事を思うんだ?」

彼は不思議そうな顔をした。婚約の日だ。結婚する意志があるから婚約をするのであって、そう聞かれることが理解できないのかもしれない。

「……公爵家の一族の方で見合い結婚などする人は聞いたことがないですし。まだ一回しか会った事がないのに」

一回しか会った事が無いのに結婚に了承した俺が聞くのもおかしいかもしれない。けれど、彼が俺で本当に良いのか、不安だった。

「レイ……私は一目見て、君が私の花嫁になる人だと分かったよ。伯父から押し付けられた見合いだと思っていたが……こんな近くに私の花嫁がいてくれて私は幸せだと思っている。レイ、私の花嫁になってくれるね?」

「……はい」

「外国までレイを探しに行っていたら、見つからないところだったよ。こんなに早く出会えてよかった……レイが18歳になったらすぐに結婚しよう」

思わずそれにも、はい、と返事をしそうになって口を噤んだ。まだ学校が残っている。俺は8月生まれなので18歳になるのはあと3ヶ月だが、卒業まではまだ半年以上ある。

「まだ俺は学校が残っているので、18歳になってからすぐというのは無理です。せめて卒業してから……」

とは言っても、それだって異例だと思う。王族・大貴族問わず魔力の高い者は軍に入ることが多く、国に貢献してから結婚する場合が多い。

「それだと結婚できるまで一年近くも待たないといけないことにっ!」

「そうですが?……」

「学生をしながら結婚してはいけない法律はないだろう? 18歳になったら法的には結婚をして良いわけだし」

「確かにそうですが……そんなに急ぐ必要はないでしょう?」

「そ、そうだな………すまない。レイ……君と早く結婚して一緒にいたくて焦ってしまったんだ。早く君を私の花嫁にしたくて仕方がないんだ。君に囚われた哀れな男だと思って、許してくれないか?」

学生結婚は流石にどうかと思うが、そんなに俺の事を思っての言葉なら許すと請われるほどのことでもない。逆に嬉しいとさえ思う。

「俺も早く、貴方と結婚したい……かもしれません」

「レイっ!………君が卒業するまで待つよ。だから、君のその美しい唇を許してくれるかい?」

勿論婚前交渉なんか論外だけど、今日から彼は婚約者で一年後には夫になる人だ。キスくらいはしても良いのかな?


**********
さて、無事婚約者からキスを奪った男エリーはと言うと。

「苦しいっ!!! 股間が破裂する!!!!」

とその後、のた打ち回っていた。

「エリー……手を出せば良かったじゃないか」

「相手も好意を持っていたのなら、抱いて何が悪いんだ?」

一族の(独身)が集まって、エリーに疑問を抱いていた。何故一族の男が集まっていたかと言うと、円満な結婚をするための参考にするべくだ。これまで恋愛結婚もなければ見合い結婚もなかった一族だ。エリーは恋愛結婚ではなかったが見合いをして、相手からも色よい返事を貰い、一族で初めて夫に好意を抱いて貰った相手との結婚になるかもしれないので、興味津々と今後の参考にしたい男たちでこの部屋は一杯だった。
ちなみにエリーは公爵家から見ると傍系血族だ。名前からも分かるだろう。直系に近い者は長男なら名前にアを貰ってつけているがエリーは長男でもアから始まっていない。だが伯父(オーレリー)が当主に嫁いでいるので注目株でもある。

「相手はあの潔癖な王族だぞ?……5分時間を戻すことができて私は幸運だった」

さて時間を巻き戻して見てみよう。


「……公爵家の一族の方で見合い結婚などする人は聞いたことがないですし。まだ一回しか会った事がないのに」

なんて可愛いんだ。私のレイ! 私の愛が見えずに不安なんだね?!
それは公爵家で見合い結婚をするのは私たちが初めてだろう!!
だが、私の愛は間違いなく本物だ!
私の股間を見れば、触ってくれれば私の気持ちがすぐに分かってもらえるはずだ!!!

「レイ……私は一目見て、君が私の花嫁になる人だと分かったよ。伯父から押し付けられた見合いだと思っていたが……こんな近くに私の花嫁がいてくれて私は幸せだと思っている。レイ、私の花嫁になってくれるね?」

「……はい」

「外国までレイを探しに行っていたら、見つからないところだったよ。こんなに早く出会えてよかった……レイが18歳になったらすぐに結婚しよう」

っていうか、今すぐ押し倒したい!
こ、婚約したから良いだろう?
未成年に手を出したら死刑?
そんなもの隠滅すれば良いだけだ!
そもそも18歳未満に手を出したらいけないのは魔力が安定していない場合は死んでしまうことがあるからだが、大抵は15歳にもなれば安定する。だから他国では15歳で結婚できる国も多い。
レイもあと三ヶ月で18歳なんだ。今手を出して何が悪い!

思わずそれにも、はい、と返事をしそうになって口を噤んだ。まだ学校が残っている。俺は8月生まれなので18歳になるのはあと3ヶ月だが、卒業まではまだ半年以上ある。

「まだ俺は学校が残っているので、18歳になってからすぐというのは無理です。せめて卒業してから……」

とは言っても、それだって異例だと思う。王族・大貴族問わず魔力の高い者は軍に入ることが多く、国に貢献してから結婚する場合が多い。

「それだと結婚できるまで一年近くも待たないといけないことにっ!」

「そうですが?……」

「学生をしながら結婚してはいけない法律はないだろう? 18歳になったら法的には結婚をして良いわけだし」

「確かにそうですが……そんなに急ぐ必要はないでしょう?」

「無理だ!!! そんなに待っていたら股間が爆発する!!! 待てても18歳までだ! いや、それだって待てるか疑わしいっ! すでに私の股間はもう限界まで来ている!!!」

一目気に行ったら、すぐ持ち帰ってベッドインするのが習慣だった先祖を血を引いているせいか、一年なんて待てるはず無い! 18歳までだって無理だ! いや、もう今すぐしたい!

「レイ、愛しているんだ。今すぐ私の物になってくれるね?」

両思いなんだから、婚約者なんだから、レイを私の物にして良いはずだ。レイを私の城のバラ園のベンチを押し倒すと、こんなに私は君を思って待ちきれないとレイの手を私の股間に持っていった。

「………サイテーです。こんなに貴方が、下劣な人だったなんて。やっぱり公爵家の人なんですね」

押し倒した私の体の下で、軽蔑したレイの顔が見えた。



「それだと結婚できるまで一年近くも待たないといけないことにっ!」

「そうですが?……」

「学生をしながら結婚してはいけない法律はないだろう? 18歳になったら法的には結婚をして良いわけだし」

「確かにそうですが……そんなに急ぐ必要はないでしょう?」

「そ、そうだな………すまない。レイ……君と早く結婚一緒にいたくて焦ってしまったんだ。早く君を私の花嫁にしたくて仕方がないんだ。君に囚われた哀れな男だと思って、許してくれないか?」

5分戻せるところまで戻した。
レイは婚前交渉は勿論却下で、股間に手を導くことなどしてはいけない人だったんだ。例え公爵家では、出会って5分で押したおして当然でも、レイにやってはいけなかったのだ。

「俺も早く、貴方と結婚したい……かもしれません」

そうだ。やはり、ちゃんと法律を守って、結婚まで待って初夜でレイを抱くのが正しい道なんだろう。例え股間が破裂しようが、レイの意向を守らないと!

「レイっ!………君が卒業するまで待つよ。だから、君のその美しい唇を許してくれるかい?」

許可を得て、許可を得て、紳士で(無理だ!!!!)いなければいけない。

こんな私と結婚してくれると言ってくれる人なんだ!こんな幸運な男は(公爵家では)いない!


「やはり見合い結婚だと初夜まで待たないといけないのか……」

「当たり前のことなのかもしれないが、その当たり前のことが難しいのかもしれないな」

そう、皆、股間が緩い血筋を引いているせいか、世間で当たり前のことが非常に難しいのだ。

「待て、エリーは偶然伴侶が未成年なだけで、18歳を迎えているとしたら、翌日に結婚しても良いはずだ!!!! だったら24時間くらいなら私たちといえども股間を閉まっておく事は可能かもしれない!」

「いや、早く婚姻届を提出できれば数時間で済むかもしれない!!!」

「当主の許可を得て、陛下の許可状を手に入れなければいけない。どんなに急いでも翌日だろう……こうなると、どう考えても股間は持ちそうに無いな」

「だが、アルフ様もオーレリー様と結婚するまで頑張って股間を持たせていたぞ」

「あれは……聞いた話だが、オーレリー様の顔を見るたびに自爆させえていたそうだし、それはもたせていたと言って良いのだろうか?」

せっかく良い関係になってもすぐに押し倒しては軽蔑されるだけだ。
誘拐花嫁ならもう誘拐してきちゃっているので嫌われること決定なので、すぐに押し倒しても問題はなかったが、せっかく好意を抱いてくれた人には、そのまま好きでいてもらいたい。そのためにはどうしてら良いか、恋愛経験皆無の一族ではとても難しい問題なのだ。

「とにかく……粗相をしそうになったら時間を戻すしかないだろう。潔癖な王族相手なんだからそれはもうそれはもう、相手の意向を汲み取って、良いと言われたことだけをして、股間を閉まっておくしかないだろう」

それが一番難しいと言えば難しい。

代々溜め込まれてきた股間を保てない遺伝子を持っているからだ。しかも両思いっぽいので、余計に我慢がきかない。

「耐えろ! エリー! お前がこの見合い結婚を上手くいけばっ! 俺たちでも成功できるかもしれないという希望がわくんだ!」

そう、エリーは初代見合い結婚の星であった。

救いだったのは股間に優しい服装のせいだったかもしれない。エリーはアンリの従兄弟として、また腹心として上位官位にあり、つまり股間を大きくしても余りばれない、格好だったのだ。階級が上がる連れ、肌を隠してくれる軍服になっていく。

だが、エリーは耐え切れず何度も結婚を早くしようとした。国王やレイの父親にも圧力をかけ、命令という形で誕生日がきたら結婚するようにしようとしたが、レイの気乗りしない様子に撃沈し、卒業を待った。

「エリー……俺、結婚しても仕事をして良いですか?」

卒業まで待とうと頑張るのに、今度は就職しても良いかと聞いて来る。そんな嫁今までいなかった(だって今まで誘拐結婚ばっかりだから)。公爵家の嫁は専業主婦(監禁嫁)ばかりなのだ。あの鬼嫁オーレリーでさえ、結婚後退職しているというのに。

「両立はなかなか難しいだろう? 結婚して、環境が変わって不安もあるだろうに、それに軍務まで重なっては心労で身体を壊してしまうかもしれない。私の可愛い花嫁レイ。どうか私だけを見てくれないか? どうしても仕事をしたいのなら、結婚して数年経ったら考えれば良いから」

エリーはすぐ妊娠させよう!と心に決めた。

そして待ちに待った初夜。

「レ、レイっ!」

裸を見ただけで自爆を繰り返し、その度に5分時間を巻き戻し、だがレイも処女のため自爆している夫の様子に気がついてはいなかったが、格好良い夫でありたい!という思いから自爆を回避するために何度目になるか分からない時間の巻き戻しを繰り返し威厳を守った。

レイはエリーのことを頼りがいのある大人の男だと思っており、エリーは公爵家の男だが卑劣なことをせず、相手の気持ちを思いやり、正義感の強い男だと思い込んでいる節があったのだ。別段違うとは言わない。伴侶を得るまで公爵家の男たちはそんな真面目な男だった。伴侶ができると、愛してくれない妻のせいでおかしくなるだけだ。

レイはエリーを好きでいてくれている。だから軽蔑されたくなし、落胆をさせたくない。

他の親族の男たちのように妻に嫌われたくない。

だからレイを働かせたくない一心ですぐに妊娠させた一人息子が起こした事件で、妻が激怒しているのを見て、一緒に怒らないといけない!

セシルが強姦された事件で、流石にまだ12歳の自分の息子が起こした事件だとは思いもよらなかった。

だが、叔父のことが好きで結婚させたくなかったから、エミールが大きくなるまで結婚させないように純潔を奪ったという考えは理解できた。正直、そんなに怒らなくても……セシルもエミールを可愛がっているし、このまま結婚させて方が二人のためじゃないだろうか。勿論、正式に結婚するまでその股間を閉まっておけとは言うつもりだった。
だが妻が激怒しているので、一緒に怒らないといけないんだ……エミールは一族の男として当然のことをしたまでなのに。自分の伴侶が奪われそうならなんでもするのが一族の男なのに……と思ったが口に出したが最後、何を言っているんだ?と同じ人間じゃないような目で妻に見られてしまったので、5分戻した。


「……妻と自分の常識が違いすぎて……ショボーン(´・ω・`) ってなってしまう」

だってエミールは強姦したことは悪かったかもしれないが(あんまし悪いとも実は思っていない)しょうがないじゃないか……セシルだってエミールと結婚しても良いって言っていたんだし。私たちが引き離すことじゃないと思う。

少しレイは正義感が強すぎて潔癖性のような気がするが、レイを愛しているのでレイが正しいと思う事をすれば良いと思う。

どうせ、エミールの記憶を消したって根性で戻ってしまうんだろうし……。

「エミリオ〜可愛いな〜」

「エリーはエミリオがお気に入りだな」

「ああ、とても。レイに良く似ているしね」

エミールは父親似にてしまったが、孫に当たるエミリオは妻のレイにとても良く似ている。
私たちの間にはエミールしかできなかったので、レイに似た子が欲しかった私はとてもエミリオを可愛がって育てた。
こればかりはレイと私の意見は違わず、セシルから子どもを奪うことになってしまったことに罪悪感を抱いていた。
これほど可愛い子を自分の子として育ていることはできないセシルが哀れでならなかった。だがどんなにエミールとセシルを祝福してやりたくても、未成年のエミールとの子として育てることはどうやっても適わない。

そして、エルシアが生まれた時も、エルシアを拒否しようとした。エルシアはセシルとエミールの正式な子で、第一子となっている子だ。私たちの孫であるが、同じ子どもなのに、エミリオは両親を知らずに可哀想だと思う気持ちかららしい。

「レイ、君の気持ちは良く分かるよ。だがエルシアには何の罪もないし、エミリオの弟だ。名乗れなくとも兄弟のように仲良くなってくれたらと思うんだが」

「エリー……その通りですね。俺はちょっと頑固すぎました。エミリオの弟を奪ってしまうところでしたね」

「それだけじゃなくて、素敵な祖母も奪うところだったよ。レイ……」

エミールを追い出したが、孫のエルシアは何かにつけて遊びに来られるようにした。
レイは弟に良く似た孫をとても可愛がっていた。

「股間が〜〜〜股間が!!!!!」IN公爵家定例会議

「エリーどうしたんだ??!!」

「レイが、もう孫ができて(更にひ孫まで産まれるので)そろそろセックスはなしにしたほうが良いのでは?と言い出してっ!!! 私のことが嫌いになったのか??」

公式にはエミリオは息子だが実際には孫だし、そのエミリオが妊娠して戻ってきたので世間的には孫だが、実際にはひ孫が生まれることになり、レイは悪阻の酷いエミリオに掛かりっきりだった。
あのリエラの王子のせいだ!!!エミリオを妊娠なんかさせやがって!!!!!!
そのせいで、私はレイに拒否られて……

「今まで奥方に拒否されたことがなかったのか? それは凄いな………」

「レイの嫌がることをしないようにしないように努力してきたからだ!!!!!!!!!! 私だってパイパンをしてみたかった!!! 野獣のようにレイを襲って一晩中ハッスルしてはめっ放しをしてみたかった!!! だがレイに軽蔑されるのが嫌で、レイの理想の王子のようにそれはそれはもうベッドの中でも紳士的に事を運んで……」

「だが、紳士的でも今まで恒例のように性生活はあったのだろう? 俺たちのように妻に毛嫌いされて、挿入する時に毛虫のような目で見られることがないなんてどれだけ幸せだと思っているんだ? 拒否される事が恒例行事だというのに!」

「今は孫が生まれることが嬉しくって、エリーにまで目がいかないんだろう? 生まれればまた元に戻るんじゃないのか?」

「いやっ! 違うんだ!! レイの中では孫(ひ孫)ができてエッチをするなんておかしい。恥ずかしいという変な常識で凝り固まっているんだ〜〜〜!!!!!」

これまで私はレイの常識に合わせてきた。レイが正しいといえばそれに同意し、レイが望む事にし続けてきた。それが夫婦円満の秘訣だと思ってきたのだ。実際にそのお陰で、レイに愛されながら今に至る。私の常識は王族には通じないので、私の常識にレイを付き合わせること=破局を意味していると分かっていたからだ。

だが、今度ばかりはレイに合わせていられない。合わせていたらセックスレス真っ只中だ!!!

「だったら同じ王族に諌めてもらえば良いんじゃないのか?」



「孫ができたからエッチしない? 何言っているのレイ。孫ができたから、子育て終わってやっとラブラブできるじゃないの? 僕、アンリ様に毎日でも抱いてもらいたいのに」←王族代表ユアリス様。

「でも世間ではそろそろ……」

「世間って老化する一般市民と僕たち王族を一緒にしちゃ駄目だよ。肉体の絶頂期で老化が止まっているんだから孫ができようか孫が5人になろうが関係ないよ。エリーに我慢させるの可哀想でしょ? エリーだって若い身体なんだからレイを抱きたいはずだし、変な常識を持ってちゃ駄目だよ。僕たち上位魔力の持ち主は死ぬ直前だって、ううん、僕どうせならアンリ様に抱かれながら死にたい!」

ユアリス様、素晴らしい!!!
王族とはこうあって欲しい(´;ω;`)

「ごめん……エリー。俺、自分の意見押し付けすぎだったよな。ひ孫が生まれるし、エミリオの婿も出来て、同じ屋根の下で孫夫婦がいるのに、エリーに抱かれるのが恥ずかしくて……でも、エリーのことが嫌いになったわけではっ」

「良いんだよ、レイ……でも、愛しているから、私もユアリス様のようにできればレイを抱きながら死にたい」

「……馬鹿っ」

END

あそこにいるのはリエラの王子。大事な孫息子を孕ました害虫だ。

「何をしているんだ、そんな部屋の片隅で」

「僕、エミリオとの約束で部屋の片隅でいる条件で、お婿さんにして貰いました。だから約束どおり部屋の片隅にいるんです」

「一応陛下からそれなりに大事にするようにお達しが来ているんだ。部屋の片隅に置かせていたら、陛下の命令にそむく事になる。部屋を用意させるからそこで寝起きをしなさい」

「良いんです。お義父様……僕、エミリオを怒らせたくないんです。エミリオの側にいたいから、エミリオの言う事だけを何でもききたいんです(エッチなことは除いて)こんな僕をお婿さんに貰ってくれたから」

と、捨てられた子犬のように毛布に包まって部屋の片隅でいた。そんなギルフォードを見て流石に可哀想になったのかエミリオは一緒に寝るぞとベッドに入れていた。

リエラ生まれで当然エミリオとは常識が違うが、ギルフォードは何でもエミリオの合わせようとし、馬車馬のように働いた。

私も妻の常識にあわせる辛さを知っているので、段々ギルフォードを自分を見ているようで可哀想になり、家族の一員として認めた。妻が気に入っているので、同意せざる得なかったせいもあったが。

「ギルフォード……我が家の家訓にしても良いと思うのだが……夫婦円満のコツは『股間が破裂しそうでも妻の常識に合わせる』だと思うのだが」

「僕は何でもエミリオに合わせていますが、股間だけは自分の常識に合わせています」

久しぶりにギルフォードに殺意が沸いた瞬間だった。




- 330 -
  back  






×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -