「ロアルド、今から初夜だ! しっかり身体を洗っておけ!! 一時間くらいかけてピカピカにして来い!!」
「は、はい!!」
さて、メリアージュは結婚をし夫を風呂に放り込み、実家と別れを告げるために出かけた。
PM9:00
「ジゼル……お前の事だけが心配だ。悪い予感しかしない」
「メリアージュ、そんなに心配しないでくれ。こうみてもお前より強いんだ」
「そうだな……だが、ブランシュにどこまで勝てる? ブランシュの愛にお前はきっと負ける」
ジゼルは公爵家には珍しい色素の薄い髪をしている。魔力こそ高く生まれたが、その性格は一族の血とは程遠いものを感じさせた。
ブランシュには勝てない。それだけの執着心を持ち合わせていない。だからこそ心配だった。
「ブランシュと結婚するべきだ。今は愛していなくてもきっとブランシュと結婚してよかったと思う日がくるはずだ」
何度も昔からそう言ったが、結局ジゼルはブランシュを選ばなかった。
PM9:20
「ブランシュ、絶対にジゼルを不幸な目に合わせるなよ。ジゼルを傷つけたら承知しないからな」
「どうして俺がジゼルを? こんなに愛しているのに」
「分かっている……だが、時には愛が、愛する人を傷つけることもあるんだ」
俺はロアルドを愛しているが、ロアルドにしてみれば、俺と結婚だなんて考えた事もなかっただろう。
さっきも混乱していたし、俺との結婚など望むわけはない。
それでも俺はロアルドを手に入れずに入られなかった。黙ってみている事などできなかったし、もしロアルドが他の男と結婚をしたらその男を殺すだろう。
だから、ジゼルの未来は容易に想像がついた。きっとブランシュはジゼルの恋人を殺して、ジゼルの心をズタズタに切り裂くだろう。
分かっていても俺には止められない。その運命が来ないように何度もジゼルに忠告したが受け入れられなかった。俺はただ二人が不幸になるのを見ているしかないのだろう。
「いいか? 俺はもう公爵家にはいられない。お前に会うのはもうこれが最後かもしれないんだ……ジゼルを幸せにしろ。俺の最後の言葉だと思え」
実際はブランシュに会うのはこれが最後ではなかった。ジゼルが死んだ後、ボコボコにしたが堪えてはいなかった。
PM9:30
「お母さま、母上。今までお世話になりました。嫁に行きます」
「寂しくなるよ、メリアージュ。幸せになるんだよ」
「お前なら絶対に幸せになれる! メリアージュが好きな人と結婚できて自分のことのように嬉しいと思っている」
「ありがとうございます。俺は二人も母がいて、可愛がってもらえて幸せでした。本当だったら除け者にされたって仕方が無かったのに、皆から愛を貰いました。父上や兄上のことをよろしくお願いします」
二人は涙を堪えて抱きしめてくれた。
ロアルドにも二人を紹介したかった。きっと俺が選んだ男を見たかっただろう。でも俺は全部を捨てて出て行くので、我侭はいえない。
PM9:45
「父上、兄上、俺は嫁に行きます」
「「な、なにいいいいいい!!! 許さん!!!!!!(´;ω;`)!(´;ω;`)!(´;ω;`)」」
「許してくれなくて良いです。勝手に婚姻届出しましたから」
アンリとの婚姻許可証を拝借をして届け出た。公爵家当主が願い出た許可証なのですんなりと受理をされた。
「「メリアージュがこの家から出ることは許さん!!!!(´;ω;`)か、勘当されても良いのか!!??」」
「それで構いません。あとは頼んだアンリ」
「「メリアージュ!!!!! (´;ω;`)(´;ω;`)(´;ω;`)うわあああああああ」」
PM9:46
自分の城に戻る。
「初夜か………」
俺の方こそきちんと身体を綺麗にしないといけない。ロアルドよりも。一応俺が花嫁……なんだが似合わすぎるのは分かっている。
ロアルドの好みは可愛い可憐な男だ。イブみたいなぶりっ子の一見守ってあげないような、そんな儚さだ。俺とは間逆だ。
きっと今頃、ロアルドは夫として役目が果たせるか悩んでいるだろう。
俺だってそうだ。
俺を目の前にして、初夜で役に立たなかったら、流石の俺も落ち込むだろう。
もう少し可愛気がある顔で生まれたらロアルドも好きになってくれたかもしれない。ジゼルのような外見だったらきっとロアルドも喜んでくれただろう。
俺とロアルドが並んでいたら皆が俺のほうが夫だと思うはずだ。
でもそれでも良い。俺しかロアルドの妻になるのを許せない。誰にもやれないから、今更ロアルドの好みじゃない外見を嘆いても仕方がない。
ロアルド、お前を愛しているから。
どうやっても離してやれない。
愛しているから、幸せにできる自信はないけれど、一生離さない。
PM10:00
「ふ、副隊長」
「そんなに怯えるな。俺が全部やってやる」
そう、お前は何も考えなくて良いんだ。俺の事を愛せないとか、愛せない事を申し訳なく思うことも無い。
俺が欲しがって、無理矢理手に入れたんだ。
愛されなくたって構わない。俺の全部でお前の分まで愛するから。
END
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