子どもの頃は良かった。

「お兄ちゃんと結婚するの」

と言う言葉を、ホノボノと聞いていられたからだ。

「そうか〜ロゼはお兄ちゃんと結婚したいのか?」

と、小さな身体を抱っこして、良いよと笑っていたものである。両親も微笑ましそうに笑っていた。

小学生の頃もブラコンの弟だな、と笑っていられた。

しかし、士官学校に入ってもお兄ちゃんと結婚する!と言い張っているのを聞くと、流石にどうなんだろうと思い始めてきた。

「ロゼ、お兄ちゃんのことを慕ってくれるのは嬉しい。だがな……兄弟は結婚できないと知っているだろう?」

「兄弟だって、陛下のお許しがあれば結婚できるって僕知っているよ!」

確かに……その通りだが、今の陛下はモラルに厳しい方で、兄弟での結婚などに許可を出すようには見えない。実際に過去の国王では兄弟での結婚も申請があれば許可をすぐに出していた時代もあったそうだが、今の時代には許可は出ないと噂で聞いている。次期国王であられる公爵家の嫡男の方も、生真面目だと聞いているので無理だろう。

「許可があれば、だ。そう簡単には出ないし、兄弟で結婚なんてモラルに反するだろう? お兄ちゃん以外の子を好きになって結婚しなさい。ロゼはこの家の跡継ぎなのだから」

俺はこの家を継がない。長子相続制だが、辺境伯家に限っては『可愛い』顔をした者が優先的に家を継ぐ。俺のような凛々しい系は嫁に行くと決まっているのだ。

「お兄ちゃんは他家に嫁に行くんだから」

「そんなのっ! 絶対に駄目だよ!!! お兄ちゃんは僕のところにお嫁入りするんだ!!!!!」

弟よ、お前と結婚しても同じ家だから嫁入りはしないんだが……

まあ、そのうち目が醒めるだろうと、無視をしていた。弟と結婚する気などこれぽっちもなかったからだ。
しかし、ロゼは両親を説き伏せ、当主リオン様の了解を得て、着々と俺を嫁にしようと企んでいた。

「父さん、母さん、本気で俺とロゼを結婚させる気なんですか? なんかおかしいとか思わないんですか? 自分の息子たちが結婚するんですよ?」

「ローワン……辺境伯家で嫁を探そうと思ったらそれはもう至難の業だ。そう思うとロゼは幸運だよ。兄が理想のお嫁さんで、しかも辺境伯家に生まれたからには理解があるし、ロゼも実の兄だからモジモジせずにプロポーズもできた。ローワンならロゼが毛深くても大根でも嫌わないであげてくれるだろう? あの子はローワンを逃したら一生結婚できないよ」

「お兄ちゃんとして、弟を最後まで面倒を見てあげてね? ローワンは昔から弟に優しかったでしょう?」

確かに俺はロゼを可愛がっていた。可愛がっていたけれど、シモの面倒まで見るのか?

俺は先代辺境伯夫人アーロン様が、大根の突っ込まれているようで……と、イブ様のことを愛していても逃げ腰だったのを見ている。弟の大根を突っ込まれる兄なんて……

「まだ、弟と結婚する覚悟はないのか?」

「クレア……あるわけないだろ? いくら平民と違って遺伝子的に問題はないとはいえ、弟と結婚して、子どもを産むのか? その子どもって俺の子どもで甥という、わけの分からない間柄だろ?」

「まあ、気分は分からないでもないけどな」

クレアは俺の親戚で、俺と同じく今の世代で唯一可愛くない系で生まれてきた仲間だ。

「リオン様は今いる独身を全て結婚させようとしているからな。兄弟だろうとどうでも良いんだろ」

「クレアは大人しく結婚するのか?」

クレアは同じく、リオン様から一族の人間と結婚するように命令されていて、相手を物色中だった。

「結婚するというか、もうした……」

「え? した、のかっ!?」

「リオン様から他家に嫁入りは駄目だってきつく言われていたからさ……兄貴に頼んで、できるだけちんこ小さい男を見つけててきって頼んで……一族の中でも評判の小さいのとこの前結婚した……」

「お前……それって」

辺境伯家の男は例外なくデカイ。俺たちは除く。
その中で小さいのっているのか?

「俺が間違っていたよ。うちの一族の中で小さいって……全然、一般的に見たら小さくなかったし、しかも兄貴の調査だと平常時だろ? 初夜ではじめて見て……ああ、膨張率半端ないな……って、後悔したよ」

「そういうオチだと思った……うちの一族で小さいのなんかいるわけないよな」

「アーロン様が大根〜〜〜って言っているのが良く分かったよ。悲鳴上げて、思わず離婚して下さいって逃げようとしたら母上から誰しもが通る道なんだから大人しくしなさいっって怒られるし、いや、誰しもあんな大根突っ込まれないだろ?と一人ツッコミをしながら大根突っ込まれたし」

「たまに、でかいほうが気持ち良いって言う声もあるらしいけど、正直、気持ちよかったか?」

たまにいるんだ。大根の恐怖か何かで、好きにならないと生きていけないと頭がおかしくなっちゃう人が。特に誘拐されてくるとその環境に慣れないといけないと思い込んで、でかいのこそ正義とか思ってしまう誘拐花嫁も。
で、大きいほうが気持ちが良いと思い込んでしまうと。

「数回で気持ちよくなれるわけないだろ……あんなもの、誘拐された精で頭がおかしくなったせいだろ? お前もいずれ分かる。大根を突っ込まれる気分が」


分かりたくないから家を出たいんだと思っていた時期もありました。あったけど、結局他の貴族に嫁に行っても、股間についているものは一緒かと思うと……なんかもう弟でも良いような気がして……流されるがまま弟の嫁になることが決定した。

「ロゼ、卒業おめでとう」

「ロゼ、これで成人というだけではなく、今日からお兄ちゃんの夫になるんだ。この家の当主として、ローワンの夫としてしっかりするんだぞ」

「はい、お父さま、お母さま。今まで育ててくれてありがとうございます。僕のお嫁さんになるお兄ちゃんを産んでくれてありがとうございます。お兄ちゃんを幸せにします!」

なんか、おかしい会話だな……(−_−)

「それで、今夜が初夜だが……ローワン、逃げ回ったり……」

「覚悟は出来ているから(−_−)今更、往生際悪いことはしない……けど」

「けど!?」

「しばらく地方の城で暮らしたいかなと………(−_−)」

うん、この家で生まれてこの家に嫁ぐ、何も今までと生活変わらないな。変わらないけど、両親と同じ屋根の下で弟に抱かれるのって……分かっているだろうけど、嫌だ。

「ああ、そうだな。新婚だから、二人っきりで過ごしたいよね」

「お兄ちゃん! そうだよね! お父さまたちお邪魔虫だもんね! 湖畔にあるあの綺麗なお城で新婚生活をしようよ!」

「うん(−_−)」

というわけで、両親と同じ城で初夜は免れた。

「お兄ちゃん……僕を嫌わないでね」

ベッドの中、お互い全裸になっているわけだが……昔は可憐だったのに、今はやはり毛がボーボーだな。ボーボーなのはわかっていたので他家から嫁いでくる嫁のように騒いだりはしない。ボーボーの上に、やはり股間のものは……やはり膨張率というものを勘定に入れないと、ナンバーワンなんて決められないな(−_−)

「お兄ちゃんいい?」

ああ、今から大根突っ込まれるんだよな(−_−)

「覚悟は決めた。来い」

弟が夫か………しかし今思えば、同じ大根なら他人のほうが良かったんじゃ……と思わないでもなかった。何で弟相手に足開いて突っ込まれないといけないんだ。けど、同じ大根なら結婚できないと自殺するって言う弟と結婚してあげたほうがいいかとも思ったし。今更どうあがいても弟と結婚した事実に変えられようがないから……仕方がない(−_−)

「い、痛い? お兄ちゃんっ?」

「え?っ……う、いたい、ような?」

確かに、無理矢理広げられていく圧迫感は物凄いが……

「気持ち良い様な?」

いた気持ち良い?

「お、お兄ちゃんっ! しょ、初夜で気持ちが良いって言ってもらえたのって、きっと一族で僕くらい? 嬉しいっ! お兄ちゃんっ……愛してるっ!」

それからはもう、ロゼはハッスルしまくりで、腰をガシガシ動かして、気がつくともう昼を過ぎていた。

「………弟相手に気持ちがよくなってしまった(−_−)大根なのに何で?」

辺境伯家は非常に強い遺伝子を持っている。ローワンやクレアのように母方(または先祖返り)は稀だ。
なので本人は知らなかったがローワンは、過去浚われて来て、大根に恐怖を感じ、自己防衛のために大根が大好きになった遺伝子を強く受け継いでいた。そう、辺境伯家の男たちにとって大歓迎の遺伝子をローワンは持っていたのだ。
専門用語でストックホルム症候群(この家では巨根を好きになって感じてしまう事)だ。

「お兄ちゃんは僕のことを本当は好きでいてくれたから! だから僕とのエッチで気持ち良くなってくれたんだよ!」

「いや、でも……アーロン様もイブ様のことを好きだったのに、大根は好きじゃなかったと思うけど……」

クレアも数回夫に抱かれてもきついだけと言っていたのに、俺は初夜で……

「兄弟だから余計に相性が良かったかもしれないよ? お兄ちゃんは、僕のこと良く知っていたから安心して身を任せてくれたんだろうし、僕もお兄ちゃんを愛して、お兄ちゃんも僕を愛してくれていたからだよっ! 僕、凄く幸せだよっ! お兄ちゃんをお嫁さんにできて、本当に良かった。ありがとう、僕と結婚してくれて」

こうして弟は都合の良い解釈をし、弟にとってはそれはそれは幸せな結婚となり、兄にとっても大根だけど気持ち良い……(−_−)と言う、辺境伯家ではとても羨ましい夫婦になった。奥様方には大根相手に気持ちよくなれて良いなと、夫たちは気持ちよくなってもらえる奥様を貰えて良いなと。

そしてこの夫婦を結婚させたリオンと隊長は……斡旋していく夫婦は何故か円満になるのに、自分達夫婦仲は……チーン。




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