この国ではクリスマスという行事は、家族や恋人でプレゼントを交換してケーキを食べるようなイベントではない。
では、クリスマスはないのだろうかというと、あったりする。
クリスマスという行事は、夫婦の行事なのだ。恋人同士の行事でないこともないが、基本この国で恋人同士はほとんどいない。恋人になってもキスもエッチもすることも許されない風習なので、両思いになったらすぐに結婚なので恋人同士で何かをする風習はない。夫婦になってからデートもキスもエッチもするのである。

さて、クリスマスのイベントは奥様命の旦那様たちがとても楽しみにしているイベントである。
基本この国は夫が奥様にべた惚れなことが多く、奥様たちに嫌われている場合も多い。そんな夫に年に一度くらいは良い目に合わせてあげようと、クリスマスとは奥様から旦那様にエッチを誘わなくてはいけない日なのである!

従って、旦那様たちはこの日にかけているといっても過言ではない。
仕事なんかしている場合ではないので、24日と25日は結婚している夫婦は公休日である。寂しい独身者が仕事をする日である。


隊長夫妻とクライスとユーリのクリスマスはごらん頂いたが、エミリオの家でのクリスマスは……




「誰がするか! こんなコスプレっ!」

「だって、僕の国では、夫婦はサンタさんとトナカイの格好をして過ごすんだっ!」

「ここはお前の国じゃない! お前は私の国に婿に来たんだから、リエラの風習は忘れて、この国の常識に従えっ!」

リエラのクリスマスはトナカイの尻にハアハアするサンタかサンタのフトモモにハアハアするトナカイ……という訳の分からないクリスマスをするらしい。そんなクリスマスは嫌だ……時々外国人の夫を迎えるとカルチャーショックが激しいな。

うちの国は外国人と結婚することはそれほど珍しくないが(誘拐)、嫁に迎えるのであって、婿に迎えたのは私ぐらいだろう。わざわざ魔力の低い夫を外国から輸入する理由がない。
というわけで、誘拐結婚で外国人妻の場合と、ギルフォードのような変態夫とは訳が違う。

ギルフォードはリエラから取り寄せたサンタの衣装を着ながら、私にトナカイの格好をさせようとしているらしいが……
しかし、婿に来てから何年も経つのに、何で今頃になってだ?

「三人のお父さんになったんだもん、僕の事を認めてくれたと思うから、そろそろイベントにリエラの風習をこの家で取り入れても文句言われないかなと思って……」

まあ、部屋の片隅に置いておくだけのつもりだった夫からは、大分待遇は良くなったと思うが。
だからと言って、トナカイなんて着るつもりはない。

「三人の子どもの父親になったのがそんなに偉いか?」

そもそもお前、リエラにいたら子どもできなかったと思うぞ。お前の魔力無効能力はいくら限りなく0にしようとしても、私程度の魔力がない受精させるのは無理だろう。リエラでは私よりも魔力が高い人間はいないだろうし。だから、三人の子どもの父親になれたのはギルフォードが偉いのではなく、私のお陰だと言っても過言ではない。
まあ、種馬として考えるのだったら、悪い種ではなかったようだが。

普通の片方の親が魔力がないと、子どもは魔力が限りなく低い子が産まれる傾向が高い。これで、母親が少しでも魔力があればその限りではないが、0の親から生まれた子は0の子が生まれる率が高く、魔力を持って生まれても低い。そう考えると魔力がないギルフォードを親に持った子どもたちは、魔力が低いはずなんだが、皆高い。
まあ、これは以前から思っていたことだが、ギルフォードは魔力がないという訳ではなく、特異な持ち方で生まれてきたと考えたほうが良いと思う。魔力無効という独自魔法を持って生まれてきたのではないかと推測するが、何分今のところこの能力を持っているのはギルフォードだけなので何とも言えない。

「そ、そんなつもりじゃないよ! ただ、僕身一つで来て、エミリオに嫌われててっ……ご両親にも迷惑そうな顔で見られてて……ギルたちのパパになれて、やっと家族として認められたと思えるようになってきただけで」

また泣かしてしまった……
ただ最近、なんて調子に乗っているというか乗らせたのも原因かもしれないが、ギルフォードのやつ『僕は隊長とは違う(*^ω^)』みたいな選民意識を持ち始めているようで、お前だって同じ変態だっただろうとちょっとたしなめてやるつもりだっただけなんだが。

子どもが生まれてからは大分変態もおさめて頑張っていた事は間違えなかったよな。

「分かった……トナカイを着よう」

「そんな! エミリオが嫌なのに無理はさせられないよ! 僕はこの国にお婿さんに来たんだもん! この国の風習に従ったクリスマスをするよ! この国のクリスマスって、奥様から誘ってくれるんでしょ?」

………そう持って来たかっただけか……。
この国のクリスマスは夫に嬉しい日だからな。普段は毛虫のように嫌われていてもこの日だけは、優しく奥様に奉仕をしてもらえる日……だが、私はこれまでクリスマスの行事を無視してきたし、ギルフォードも特に強請って来なかったが。
私が国王だったら、こんな行事廃止にさせるところだ。

「いや、いくら婿に来たからといって、故郷の風習を捨てなくても良いだろう? 我が家でお前を婿として大事にしている証として、我が家ではこれからのクリスマスはサンタとトナカイだ、貸せそれを」

エミリオの家では後世、夫婦はクリスマスになるとサンタとトナカイの衣装をきて、トナカイ(奥様)の尻にハアハアするサンタ(夫)かサンタ(奥様)のフトモモにハアハアするトナカイ(夫)が恒例になったという。

そしてこの日はサンタの衣装を着たギルフォードがエミリオトナカイのお尻にハアハアしたわけだが………奥様に誘ってもらえなかったが、トナカイエミリオと甘い夜を過ごせたギルフォードはとても幸せだったという。






- 266 -
  back  






×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -