アルフとは何十年もの間、うるう年に一回という、それはとても少ない回数しかしてこなかった。
少なくても俺的にはそうだ。(アルフは、5分巻き戻しを何度も使っていたのは知っているが……今更騒ぎだてるようなことはしない)

それはもう、俺は鬼嫁だったのだろう。義理の母までは誘拐されてきて、夫の言いなりのような隷属的夫婦関係が多かったので、俺の鬼嫁さは公爵家では非常に新鮮だったかもしれないが、夫にとっては決死って良い妻ではなかっただろう。

だからこれまでの償いとして……まあ、老後くらいはアルフに優しい妻でいようと努めている。
この前は俺に似た子が欲しいとか言い出して、流石にそれは無理だと断わったが。子どもが二人に、孫は四人、ひ孫は10人もいる。ひ孫までいてまた子育てなんて有り得ないし、もう俺たちの寿命もあと数年だろう。かなり長生きのほうなので、明日にでも亡くなってもおかしくは無い。
まあ、マリウスとメリアージュの出産を終えてからにして欲しいが。
だが、メリアージュはアルフの弟で、ロベルトは甥(孫と呼んでいるが)なのでアルフとは濃い血縁だが、俺とは遠い親戚くらいなので、俺に似た子は無理だろう。俺似が生まれたらアルフも納得するだろうが。
孫四人もまだ子どもが生まれるだろうから、そちらに期待してもらうしかない。

「オーレリー」

「何だ?

「エッチしたい……」

「さっきまでしていただろう!」

「だって、したけど! お風呂に入ってホコホコでツヤツヤの奥様を見たら、またエッチがしたくなって……」



野生に戻ったのか、本能に従っているのか、夜はちゃんとエッチして朝もしているのに、まだ足らないのか?

「もうここ何十年か分を取り戻す勢いでしているだろう?」

「そんな! 全然足らない(´・ω・`)50年分には程遠いっ」

確かに……この数ヶ月で、50年分がすぐ返せることは無理か………

「分かった……あと一回だけだぞ?」

「オーレリー!」

断われないのは、負い目じゃなくって、俺もアルフを愛しているからかな……?


*******
メリアージュ様のコレクション

「ねえ、ロベルト。何でメリアージュ様って前掛けが好きなのかな?」

「さあ……分からないし、分かりたくないし……理解ができないし、理解しようとも思わない」

母の父への執着は俺が子どもの頃から変わらず、母というものはそんなものだと思い込んでいた。
母が父を管理しご飯は父が作り、(普通は使用人がするが、母が父のことに関してはメイドがするのが嫌がり、父は母が嫌がるような事を避けるために自分ことは自分でしていた。だが母が父を監禁中はメイド(マッチョ)何故マッチョかというと、非常にバイオレンスな家でしょっちゅう城が大破するため、女性のメイドや侍女は採用できなかったため、母の意向でマッチョが採用されていた。とにかく、監禁中はマッチョ使用人がご飯を作っていた)父にエプロンを着けさせ、そんな父を母は食い入るように見つめていたわけだが。
その頃からたぶん収集癖はあったんだろう。エプロンを着せたり、前掛けも着せ、たぶんブラも………まあ、俺は余り両親のことを見ないようにしていたので、あの二人の特殊なプレイに関しては記憶が薄いというか、覚えないようにしていたというか。

とにかく、母のように強くて夫を支配して、何でも出来て、親戚中を掌握し、怖がられているような妻は欲しくないとずっと思っていて、最近少しづつマリウスを紹介し始めたら、本気で皆から「良い嫁を貰ったな!」「反面教師ってやつだな」と遠い目で言われるようになった。

本当に母のことは嫌いではない。俺にとっては良い母親だったし、介入もしてこない。マリウスと結婚した時も、あんな騒ぎを起こしたが何も言わなかったし、ただ静かに見守ってくれた。親戚中には俺のことを悪く言ったらどうなるか分かっているだろうな、的な視線で黙らせていたらしい。まあ、母に息子の悪口を吹き込むような兵はこの国を探してもどこにもいないだろう。

良い母だと思っているが、あのコレクションといい、父への執着といい。俺は最近父を尊敬するようになった。あれだけ束縛されて、よく生きていられるなと。

昨日も全裸前掛けをしているのを見て、視線を逸らして見なかった振りをしたが……まあ、これくらい干渉しないほうが同居をする場合良いんだろうが。

そういえば、父がしていた前掛けに見覚えがあるような気がする。

あれはそう……父が母に前立腺を弄ばれ、職を辞して家出した時のことだ。



「母上? どうしたの?」

父上は何故かとても疲れてヨロヨロしながら歩いているし、母はとてもツヤツヤしながら父を引っ張っている。どちらが夫か全く分からないだろう。
母上はとても凛々しく、この国の人が振り返ってみていく。父上が凛々しくないわけではないけど、どちらかというと穏やかで怒ったことがありません、というような感じで、どちらが夫でしょう?と聞かれたら、皆、きっと母上のことを夫だと答えると思う。

そんな母がある人物を凝視していた。その視線を追うと、ある男性が店番をしていたわけでは、別に特に目立つわけでもない変凡な男性だった。
父以外に興味がない母が何故あの男をあんなに必死に見ているのだろうか?

「それは何なんだ!!??」

「は、こ、これですか? これは前掛けですが」

「わが国の前掛けとは違うっ!」

うちの国の前掛けって、フリルがついている、エプロンの下半身バージョンのやつだ。父上もよく着せられていた。でもこの男性が着ている前掛けは、もっと簡素で飾り気が無く、地味だ。うちの国の前掛けは妻に着せるようなのと対照的に、夫が着る物なのだろうか?(業務用です)

「外国ではどうか知りませんが、八百屋とか魚屋とか花屋とかがつける物なんですよ」

「売ってくれっ!!!!!」

「ええ??? そ、その、うちは八百屋なので、前掛けが欲しければ、業務用問屋か雑貨屋にでも行って買ってください」

その後、母上は前掛けを求めて業務用問屋や服屋を梯子して前掛けを大人買いどころか、店ごと買う始末だった。


そして次の国………宅配便をしている男性の前掛けを見て、店ごとお買い上げ。
そしてまた次の国……観光用の人力車を担ぐ男性の前掛けを見て……

母上、この度って、父上の家出からの仲直りをかねた旅行だったはずなのに、最早前掛けを求める謎の旅行になっていますよね?

夜、僕は母上たちとは別の個室に泊まっているので、母上たちの部屋で何が起こっているか分かりませんが、日ごと父上がやつれて疲労が溜まっていっているように見えますけど……
父上の退職ご苦労様旅行も兼ねているはずだったのに……

「父上、何をされているんですか?」

「子どもは知らなくて良いんだよ、息子よ(ヽ´ω`)」

たぶん、あの頃母は、前掛けに目覚めたのだろう。母上は男性的な短い前掛けが好みのようだ。

あれだけ買い占めたら、毎日着けさせていても、死ぬまでに消費できるか分からないはずだ。それにオートクチュールで母がデザインし、我が商会に作られているらしいし……


「今日も、お義父さま前掛けだね」

「マリウスは見ては駄目だ」

何故夕食に招待しておきながら、母は父に裸前掛けをさせているんだ?
嫉妬深いから、父の裸は誰にも見せたくないはずだろう?

「メリアージュ様、何しているんだろう?」



「あれは……ポロリを期待……いや、マリウスは知ってはいけない」

妻には知って欲しくない物が世の中にはある。

必死で大事な所を隠している父をじっと見つめる母。あの顔は……ロアルドはサービス精神が足らないと思っている顔だ。

やはり両親と同居は早まったかもしれないと後悔するロベルトだった。



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