さて、この国では女性は何の権利も無いので、かわいそうだと他国には思われているかもしれない。
しかし、そうではなかったりする。
確かに人口比率は10%ほどしかない。貴族階級ともなれば1%もない。男性は同性愛者の確率が多く、結婚相手を見つけるのは至難の業ではある。まず、男性が異性愛者か両性愛者を探し、そこから恋愛を始めるわけであるからだ。
しかし、少数人数の女性のために政府が登録所にてお見合いを斡旋もしており、女性の結婚率は高い。
そして職業的には失業者がないほど恵まれているのだ。あらゆる職場から引っ張りだこなのである。何故なら、貴族階級の異性愛者率は1%未満。つまり、女性はライバルにならないので、高待遇で乳母や侍女、学校の教師などにむかい入れられるのだ。
特に奥様を大事にする貴族は、男性を妻に近寄らせたくないので、女性を雇い入れる。

職業斡旋所でも、女性求む!という求人ばかりが並んだりするのだ。確かに女性は当主にはなれない。実家を継ぐ権利はない。ただこれは女性に限ったわけではなく、魔力のない男性も同様だ。女性だから当主になれないというよりは、魔力がないからなれないわけで、一般市民ともなれば魔力は関係ないので、商会などは女当主も珍しくない。財産を継ぐ権利も男性と同様ある。むしろ女性は魔力がないので、男性のようにあいつは魔力がないからと下げづまれることがないだけマシかもしれない。

魔力のない貴族の男性の末路は悲惨だ。放逐されるのは当たり前、一人息子だったら普通は婿を貰わないのに魔力が低いからと魔力の高い婿を宛がわれる。

「ハンフリー様、そんなに泣かないで下さい」

貴族の家に仕える侍女で、他国のように当主に見初められて結婚または愛人になる!と頑張り侍女などはいない。貴族階級の男は鑑賞にはなっても、恋愛対象になどならないからだ。

「だってノーラ……旦那様が今夜も来るってっ」

「仕方が無いでしょう? 旦那様なのですから、ハンフリー様を抱いて、魔力の高い子を作る義務があるのです」

「僕、旦那様のことが怖い」

「何が怖いんですか? 旦那様はハンフリー様にとてもお優しくて、愛していらっしゃいますよ」

「何ってっ……旦那様のちんこがでかすぎて怖いっ!!」

「………ハンフリー様! ハンフリー様は次男のハンス様に跡を譲りたくないから、旦那様と結婚をして魔力の強い子を産むと、お父さまとお約束されましたよね? そうでなければ、跡を継いだハンス様に追い出され、婿にも行けず路頭に迷っていたかもしれないんですよ!! 旦那様のちんこがでかいことくらいで怖がらないで下さい!!!!」

侍女の権力は割と強い。性教育や旦那様との橋渡しもする。
ハンフリーは魔力が弱く、本来だったら次男が跡を継ぐが、ハンフリーを見初めた旦那様が婿に入ることを条件にこの家に残ることができたというのに、ちんこがでかいから旦那が嫌いだというハンフリーに、ノーラは怒りを覚えた。


「で、ハンフリー様はちゃんと言うこと聞いたの?」

「毎回嫌がって逃亡しようとするから……まあ、旦那様が逃がすわけないんだけどね」

女友達が集まると、話題は仕える家の奥様や旦那様の性生活の事が多い。

「ハンフリー様はお馬鹿で魔力も低いんだから、綺麗な顔と身体しか能がないから大人しくしていれば良いのに、逃げようとするから余計旦那様が燃えてしまうのよねえ」

「でも、監禁まではしていないんでしょう? うちの旦那様ったら奥様を外国から浚ってきて、子どもをバンバン産ませて……監禁してお部屋から一歩も出さないのよね」

「それって普通じゃない?」

「ねえ、アリソン? あなた何をしているの?」

「え? これ? 性格判断テストを作っているの」

アリソンは典礼省で働いている。いわゆるキャリアだ。典礼省は貴族の結婚を管理する部署で、特に女性の雇用が望ましいとされている。嫉妬深い夫が例え婚姻届を出す際にも妻を他の男に見せたくないという、狭い心の持ち主である夫に配慮してだ。

「性格判断テスト?」

「そうなの……結婚する際に、夫に向いているとか妻に向いているとは判断して、結婚後の性の不一致を無くす為に導入が検討されているのよ」

離婚は許可されていないが、実は性の不一致で離婚するカップルがそれなりにいたりする。

「え〜と、どんなの?」


問1 魔力があれば何をしても構わない。
問2 愛していれば強姦しても構わない。
問3 妻は監禁しても良いと思う。
問4 誘拐合法はこれからも継続すべきだと思う。
問5 結婚してくれない場合、妊娠させるべきだと思う。
問6 愛があったら何をしても良いと思う。
問7 愛した人が兄弟だったとしても、血縁なんてどうでも良い。

問18 性器は大きいほうだ。
問19 精力は絶大である。
問20 中出しをしたいと思う。

「これで、回答が、・とてもそう思う(5点)・どちらかというとそう思う(4点)・どちらとも言えない(3点)・どちらかというとそう思わない(2点)・そう思わない(1点)で計算をして、点数が高いと夫、点数が低いと妻に向いていると判断させるの」

「なんか、段々下品な設問が後半にあるわね」

「うちの旦那様100点取れそう……」

「問18って、なんか関係あるの?」

「統計からいうとね、夫って魔力が高いほうがなるのは当然なんだけど、アレのサイズって調べてみると必ず夫のほうが大きいんだって。逆を言うとね、性の不一致で離婚したカップルって調べてみると、魔力が低い妻として登録したほうが大きい傾向にあるらしいの」

「ハンフリー様も絶対に旦那様より小さいものね」

「これ、学校にも性格診断テストとして取り入れたいわね」

エリザベスがそう呟いた。彼女は学校の心理カウンセラーである。

「学校にも? 何でよ」

「妻になるか夫になるかって、結構決めていない子多いのよ。子ども達の話を聞くとね、跡取りで当主になるからって夫になるって決めている子はいるけど、それって嗜好じゃなくって立場的な問題からじゃない。本人の嗜好で絶対に夫になりたい、妻になりたいって決めている子は2割くらい。家の都合で決めている子が3割くらい。であとの5割は好きになった相手の魔力次第って思っているわけ」

「それの何がいけないの?」

「自分が妻向けが分かっていれば、婿を探したり、夫向けの人を相手に探したりできるじゃない。私絶対この子妻タイプだと思っているのに、夫になるんだ(ドヤ)って言っている子を見ると、いや、そうじゃないの!貴方は淫乱妻になるタイプよ!って言いたいっ……じゃなくって、結婚後、性の不一致で離婚とかしなくなるし、無駄な青春時代を過ごさせなくてすむだろうし」

「それはそう思うわよね。100点とりそうな子って、危ない事ばかりするもの。強姦死刑とかなっているし、そのせいで強姦事件はこの何十年って起こっていないってされているけど」

憲兵隊で会計をしているポリーナはため息をついた。

「強姦事件ってたくさん起こっているわよね?」

「そう、訴えれないように上手く事を運んでいるけど。強姦した後、結婚して隠蔽しているけど、かなりの数の強姦事件が起きていると思うの」

訴えてくれなければ、調べられない。なのに被害者は口を噤んで、相手の言いなりになって結婚してしまうのが大半のようなのだ。相手が狡猾過ぎると言えばどうなのだが。ちなみに本当に一般市民には強姦事件は起きていない。常に憲兵隊や軍が見張っているし、強姦しようと言う思念を常に把握し、強姦する前に捕まえるのだ。
では何故貴族で出来ないかというと、お仲間たちだから見てみぬ振りをしたり、魔力で妨害して分からないようにしたりと、貴族階級での被害者は減らない。

「だから、若いうちにこういう100点を取りそうな子を把握して、教育して、相手も愛してくれなければエッチしてはいけないし、婚前交渉も駄目だし、相手の嫌がることはしてはいけないって、矯正したいんだけど」

「その意見には賛成だし、とってもいい考えだと思うけど………うちの旦那様たち見ていると、絶対に矯正は無理だと思うんだけど。だって、相手の嫌がることはしてはいけませんって言っても、たぶん、理解すら出来ないと思うの」

「あ、それ分かる。頭良いし、常識もあるはずなんだけど、何が悪いか、奥様のことになると何を言っても分かってくれないのよね〜」

「もう、魂に刻まれているっていうか。代々、そういう奥様を監禁しているうちに、遺伝子的にそうなっちゃったんじゃないかしら?」

この国で数少ないい女性達は、貴族男性の恋愛対象外ということで重宝され、活躍の場を与えられている。給金も多い。

「坊ちゃま、このテスト受けてみてくれますか?」

奥様が監禁されて生まれた、天使の様な坊ちゃまに性格診断テストを受けてもらった。ちなみにまだ子どもなので、下品な設問は除いて50点満点だ。

「坊ちゃま、50点ですね……」

とても良い子なのだ。天使のようで素直で真面目で頭も良い。

「坊ちゃま、泥棒は悪いことですか?」

「うん!」

「坊ちゃま、なら人のものは盗んじゃいけないですよね?」

「当たり前だよ!」

「人も殺してはいけませんよね?」

「うん、いけないことだよ」

「なら、好きな人が結婚していたらどうします?」

「相手を殺して、埋める」

「………」

侍女や乳母の給金はとても良い。

ただ、奥様を監禁して強姦している雇い主を見たり、天使のようだと思ってお育てした子が、チラっと悪魔の片鱗を見せるのを見た時、辞めたくなる時がある。

しかし、いくらでも求人があるので、辞めても大丈夫なのだ。
実は、この国、とっても女性には優しい国なのかもしれない。

ちなみに、まともな神経の女性は侍女を辞めたくなるらしいが、貴族男性を目の保養にしている腐った女性にはとても人気のある職場だったりする。



END
ハートシリーズで、女性の立場が低いとか言われたことがあったので、そうじゃないんだよ〜と、書いてみました。魔力社会なので、権利はないんですけど、守られて良い生活しています。




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