「メリアージュ様、その枕なんですか?」

不器用な母が、自分ひとりで頑張って作成している枕を見てマリウスは不思議そうにたずねた。

「これは安眠枕だ!」



「寒い日に良く眠れるように、特別なものを入れて作ってあるんだ」

「マリウス……母特製のレシピだから……」

そう、言える筈が無い。不器用で全てを破壊する母が父に関するものは頑張って手作りで作成するものも多い。
この安眠枕というのは、母が父の○毛を毟って、それを収集してつめた枕なんだ………。

「俺も安眠枕作りたいですっ!」

「マリウス!」

俺は、マリウスに胸毛を毟られる趣味はないぞ!

マリウスは生まれたての雛のように、それはそれは母に懐いて、カルガモの親子のように何時も一緒だ。まあ、俺が帰宅したら流石に戻ってくるが、たぶん仕事をしている間はずっと本宅にいるようだ。
変な方向に洗脳されないか、幾分不安だが、行くなとも言えない。母に懐くなとも言えない。
同居する前は苛烈な母の性格についていけるはずがないと思って心配していたくらいだったが、蓋を開けてみれば何故か物凄く懐いていた。
実の母に甘えられなかったのを知っているから、黙ってみているが………正直、母色にマリウスが染まってしまったら……と心配せずにはいられない。

「駄目なの?」

「……駄目と言うか」

「マリウス、これはな……夫の髪の毛を貰って、枕に詰め込むんだ。そうすれば、寝ている間も夫の夢を見られるというわけだ」

母は自分が異常というか、変な事をしている自覚はあるんだろう。異常というよりも、どっちかというと執着しすぎという感じだが。だから、マリウスには変な事を余り教えないようにしてくれているのは、ありがたい。胸毛をいれているんだと言わないでくれて、ありがとうございます。

「ロベルト、髪の毛くれる?」

「マリウス、そんなことをしなくても俺が抱きしめて寝ているだろう? 髪の毛をいれるよりも、ずっと効果的なんだ」

「でも、メリアージュ様は」

「それは母上は、抱きしめられて眠っているわけじゃないからな」

「え? あんなに仲が良いのに、メリアージュ様、お義父様に抱きしめてもらっていないの?」

「そうだ……母が父を抱きしめているからな。お陰で父は母の夢を毎夜見ているんだろう……」

夢の中でさえ妻に束縛をされている父を見るにつけ、残念な思いが沸きあがって来るが……

「お二人とっても仲が良いよね」

「……ああ」

束縛され続けてもある意味平気な父を凄いと尊敬してはいるが……仲が良いのかは激しく疑問が残る息子であった。

「だから、マリウスは俺が何時も抱きしめて寝ているから必要ないだろう? 安眠枕なんて」

「でも……夜勤でいない時もあるから、欲しい」

まあ、髪の毛なら良いかとロベルトはマリウスに渡し、器用なマリウスはメリアージュとは比べ物にならないステッチで安眠枕を作り上げた。

しかしそれを見ていたロアルドが、マリウスは器用だなと褒めると、マリウスが帰った後、奥様に器用で淑やかな妻が欲しかったんだろうと殴り飛ばされ、全ての胸毛を毟り取られていたという。

****
「寒い、寒いね」



確かに、最近秋も深まり寒くなった。私は寒ければ魔法で何とでも出来るが、ギルフォードがいると魔法が使えない。だが基本、普段の生活は魔法を使わないため、寒ければ暖炉に薪で火をつけるわけだが。

「なら、火をつけさせよう」

使用人に準備をさせれば良いわけだが。

「エミリオ! この毛布一緒に使おうっ!」



さっきからギルフォードは毛布を纏っていたが、いったいこいつは何がしたいんだ?



「パンツをはけ……」

ギルフォードは顔は美しいが(好みじゃない)むさい身体を見たって楽しくない。ギルフォードが脱げば、まあ凄い体をしているが、何で全裸になっているんだ。
そういえば、昔から、全裸になるの早かったよな。リエラで誘拐された時も、あっという間に全裸になって圧し掛かってきていたし。
今も、ベッドに上がると物凄いスピードで全裸になるし。昔は、他国の王族だからさぞや経験豊富だからだろうと思っていたが、ギルフォードの言い訳曰く、僕は全裸になんかならなかった!服を着たままだったもん!経験豊富ってほどじゃないし……18歳からは純潔だったんだと、涙を流して言い訳していたがな。

基本ギルフォードの性経験なんてどうでも良いんだが(まあ、純潔だったら純潔にこした事はないんだろうが)。
僕が魔法をつかえたら、過去に戻って純潔に戻ってエミリオで童貞を捨てたい!とかも喚いていたが。
最近は変態な事をしないが、この全裸率が高いことは少し気にならないでもない。まあ、隊長に比べたらたいしたことは無いか……

で、何だ? 毛布の中でやりたいのか?
別に嫌とは言わんが……

「パンツをはいたら、エッチなことできないよ」

「はあ……まあ、しょうがないな。寒いんだろう? 温めてやる」

とはいっても、私がどうこうするわけじゃないが。

「エミリオ!!!! 大好きっ!」

だから、全裸で飛び掛ってくるのは……お前もう三人も子を作ったのに、元気だな……





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