この国はいろんな国を併合していて、様々な肌の色・髪の色・目の色がある。
ただ貴族と呼ばれる人々は、元あった小さな国の出であり、旧外国領だった併合された地域に住んでいた王族貴族などは、この国おいてはただの平民扱いされる。

従って旧王国領(元々あった国)の貴族たちのスタンダードは金髪〜茶髪だ。

しかし、数多くの誘拐花嫁を入れてきたせいだろうか。生粋の王国貴族という人はほとんどいなくなり、色んな血が混ざっている。

ちなみに、王妃は珍しく生粋の王国人であり、他国の血は一切入っていない。
通常、短い髪の人が多いが、別に決まった髪形という形式があるわけでもない。

美しいと評判の人で長髪をしているのは、ギルフォード王子だ。

「リエラは王族って長髪なんだよね。でもエミリオが嫌なら切るけど」

「いや、別に……お前に似合っていると思うし。まあ、綺麗な顔って私の好みじゃないが、お前は短髪よりも長い髪って感じがするからな」

「エミリオは短い髪が似合っているよ! いつも、僕エミリオ格好良いって惚れ惚れとしているんだ」

と、こんな夫婦もいるし

「クライスは長い髪のほうが素敵だよ」

「ユーリがそう言うなら」

と妊娠時期に妻をその気にさせ、髪を伸ばさせる夫もいる。
クライスは通常短い髪だったが結婚後夫に強要され、出産後も今度は息子にお母様は長い髪が素敵と言われ切れないでいる。


他にももっと髪に命をかけている夫婦もいたりする。



「マリウスは珍しい銀髪だな。それに、騎士で長髪なのも珍しいな」

「そうですね。うちは両親も銀髪じゃないんですが、何故か俺と弟は銀髪で、なかなか見ないですよね」

北方にはあまりこの国は接していないため、銀髪を見かけることはほとんどない。

「それに、確かに軍人って短くしている事が多いんですよね。任務中、邪魔になったりするし……でも、ロベルトが俺の髪が綺麗って言ってくれて」

オーレリー様に、俺の髪が長い理由を聞かれて、思わず頬を赤らめてしまった。

あれはそう、俺がロベルトに片思いをしていた頃のことだ。

俺は自分に自信がなかった。ロベルトに好かれたいと思っていたけれど、こんな俺なんか好きになってもらえるか分からず、ただ見ていただけだった。どのみちこの恋には未来がない。
もしロベルトに愛し返されたとしても、結婚する事は適わない。それでも、一瞬だけでも愛してくれたらと思う気持ちは止められなかった。

「伸ばしたらきっと綺麗だって、何気なく言われたんです……それで、馬鹿かもしれないけどそれからずっと伸ばしているんです」

いつか、ロベルトにその髪綺麗だなって言われないかなって思いながら髪を伸ばした。でも、ナナと結婚するって聞いたとき、俺って馬鹿だと思いながら、肩まで伸ばした髪をすっぱりと切り落とした。
結婚するって聞いた翌日、短くなった髪の俺を見てロベルトは何故か落胆したような顔をしていた。

でも結婚した後、長い髪好きだったのにと言われて、それからずっと長い髪のままだ。
ロベルトが俺の髪に触れてくれたり、綺麗だとベッドの中で言ってくれるから。

何時もは髪を縛っているが、ロベルトが俺の髪を解くときは、抱きたいという合図になっている。

「お前、本当に息子のことが好きなんだな。どこがそんなに良いんだ? ずっと目の前にいたお前じゃなくって、平民を選んだ馬鹿だろう? わが息子ながら、こんなに好いている子が目の前にいたのに気がつきもしないアホだぞ」

「ロベルトは……俺が悪いんです。好きならちゃんと言葉で好きだって言わないといけなかったんです。言わないとわかって貰おうなんて、おこがましいです」

「いや、だって、誰が見たってマリウスがロベルトを好きだと分かるだろう? 気がつかないほうがおかしい。まあ、父親も鈍かったから仕方がないか。ロアルドも俺があんなに特別待遇で、しごいてやっていたのに、全く俺の好意に気がつこうともしなかった! 愛の拳だと何故気がつかないんだ、理解に苦しんだ。最後の最後まで俺がプロポーズするまで、嫌、抱くまで気がついていなかった鈍さが遺伝したんだな」

隅っこのほうで、アルベルと遊んでくれている義理の父をつい見た。確かに明らかにメリアージュ様はロアルド様のことを愛していると分かるのに気がつかなかったなんて、鈍いのかもしれない。
そういえばロアルド様は凄く穏やかそうで文句ひとつ言わなさそうだけど、その分気が回らないのかな。あまりお話したことがないから分からないけど、でもロベルトは顔は父親似だけど凄くよく気がつくし、俺がして欲しい事を俺よりも先に察するくらいだ。

例えば、俺がロベルトに側にいて欲しいとか、抱きしめて欲しいなと思うと、すぐに抱き寄せてくれるし、愛してくれる。俺が恥ずかしくて言えないようなことも、何も言わないでもしてくれるし。
そういえばもうすぐ臨月だから、もうずっとロベルトに愛されていない。
アルベルが出来た時だと思う頃、俺はよくロベルトに愛されているか自信がないとか、泣き言ばかり言っていて困らせていた。するとだったらそんなこと悩む暇もないくらい無茶苦茶にしてやると、休暇を取っては抱き潰されていた。新婚のやり直しのような日々だったので、もうずっとロベルト尽くしで、何時アルベルができたのか全く分からない様だった。

あの頃みたいに、またロベルトに抱き潰されたい……俺ってロベルトのことを思うとエッチなことばかり考えてしまう。いやらしいんだろうか……

「そういえば、お義父様も髪が長いですよね」

ロアルド様は王国貴族に一番多い茶色の髪をしている。ただ珍しいのが、腰近くまで伸ばした長い髪だ。

「俺が伸ばさせている」

「綺麗に結ってありますが、あれもメリアージュ様がされたんですか?」

ロベルトに聞いたこと。この家の実権は全てメリアージュ様が握っていて、そしてロアルド様の管理もすべてメリアージュ様がされているそうだ。ロアルド様は当主と言っても、髪を切る自由すらないそうで。

「ははっ、いやそれは無理だよ。だってメリアージュって物凄い不器用だから。ロアルドの髪を鳥の巣にしちゃうよ」

「だが、ロアルドの髪を洗ってやるのも俺だし、乾かしてやるのも、香油をつけて梳かしてやるのも俺だ! あの艶やかな髪を維持しているのは全て俺のお陰だ!……結うのはできないから、あれはロアルドがしているが……」

メリアージュ様のロアルド様への溺愛っぷりは言葉に出来ないほどだ。どうやら不器用なメリアージュ様は家事や細かな作業は苦手で、できないことはロアルド様がやっているらしい。ロアルド様に関することでは使用人の手を使うのが嫌らしく、極力ロアルド様に関することは全てメリアージュ様がなさっているそうだ。

ロアルド様がはいているパンツも手作りだし(あれ? 不器用なのにパンツは作れるのかな?)何かの道具も全て自家製らしい。

「ベッドで仰向けになった時に、髪がシーツに流れるのが見たいんだ」

それってロベルトが俺に言う言葉と一緒だ。ロベルトって性格はメリアージュ様に似ているのかな?

「……髪を手入れしてくださるだけなら良いんですが……下の毛とか胸とかも手入れされてしまうし、エッチの最中、胸毛を毟るのは止めてほしいんですが……」

と、どこかからそんな声が聞こえてきたが俺にはよく聞こえなかったしメリアージュ様も聞いていなかったようだ。


「今日も楽しくメリアージュ様たちとお話できたんだ。メリアージュ様って、本当にロアルド様を愛していらっしゃって。髪の手入れまでしているって」

「俺もマリウスの髪の手入れしてやっているだろう? 俺の綺麗な銀髪を丹精込めて愛でているのに、俺の愛は感じないのか?」

「……昔から、好きなの髪だけだっただろ? ナナさんを好きになる前から俺のことを褒めたのって髪だけだった」

「そんなことない……この可愛い唇も、感じやすい身体も全部が好きだ。愛しているマリウス」

なかなか信じてもらえない愛を語っている息子と反対側の塔に住んでいる母は。

「ひいいいいいい、や、止めて下さい! 下の毛剃らないで下さい!!!!!」

「ロベルトの時と一緒だ! 浮気防止に出産するまでツルツルにしてやる!!!!」

と、夫の下の手入れをすると、泣いている夫を抱き寄せ、お気に入りの髪を撫でながら寝かしつけてやった。


「……メリアージュ様の手入れは行き過ぎています!!(´;ω;`)」




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