この国ではクリスマスという行事は、家族や恋人でプレゼントを交換してケーキを食べるようなイベントではない。
では、クリスマスはないのだろうかというと、あったりする。
クリスマスという行事は、夫婦の行事なのだ。恋人同士の行事でないこともないが、基本この国で恋人同士はほとんどいない。恋人になってもキスもエッチもすることも許されない風習なので、両思いになったらすぐに結婚なので恋人同士で何かをする風習はない。夫婦になってからデートもキスもエッチもするのである。

さて、クリスマスのイベントは奥様命の旦那様たちがとても楽しみにしているイベントである。
基本この国は夫が奥様にべた惚れなことが多く、奥様たちに嫌われている場合も多い。そんな夫に年に一度くらいは良い目に合わせてあげようと、クリスマスとは奥様から旦那様にエッチを誘わなくてはいけない日なのである!

従って、旦那様たちはこの日にかけているといっても過言ではない。
仕事なんかしている場合ではないので、24日と25日は結婚している夫婦は公休日である。寂しい独身者が仕事をする日である。





「クライス♪ クリスマスプレゼントは?」

クライスは普段余り夫に抵抗しない。夫が抱きたいと言えば、余程頻繁でない限り断わらないし、体調が悪いときは無理強いしてこないので、黙ってベッドにそのまま横たわって夫を受け入れる。

「クリスマスプレゼント? そんなものはない!」

基本クライスは断わらない代わりに、奉仕もしない。友人のエミリオと同じようにマグロだ。いや、エミリオのほうが早漏の夫のために何かしてやっているだろう。

「そう? 俺の奥様は連れないね」

「過去好き勝手やっていたクリスマスがあるんだから、素面の俺にそんなものを求めるな」

都合が悪いことに洗脳中にクリスマスを迎えることが多く、クライスは自分からそれはもう破廉恥なことを要求する夫に嬉々として答えていた記憶がある。素面の時くらい、平和なクリスマスを迎えたいと思ってもバチは当たらないだろう。

「そうだね、来年は出産後になると嬉しいから、頑張って仕込もうかな」

「………」

さわやかにろくでもないことを言う夫に、何時も子ども達がこの性格が似てしまったらと、心配は尽きない。

「ちょっと子ども達を見てくる」

「もう寝ているだろう? 今からは大人の時間だよ(^▽^)」

同じ笑顔なのにエルウィンと同じ笑い方をしているのに、全く受ける印象が違うなと落ち込んだ。こんなのが俺の夫かと。

「最近大きくなってきたからか、寝るの遅くなってきたんだ。お前、大人なら少しくらい待てるだろ」

一番先にアンジェの部屋を覗くとパチリと目を開けてしまった。

「お母さまっ!」

最近、また自分に似て来た様に見える……この子はユーリに性格も顔も似たほうが良いと思うんだけどな、とアンジェだけには思う。なんせ変態へたれの隊長の長男に惚れられているのだ。母親に顔も性格も似てしまうと苦労するんじゃないかと……ユーリに似ていたらルカも交わせるんじゃないかと思うんだが。

「アンジェ、まだ起きていたのかい?……何でルカもいるんだ?」

「クライスまま! だってクリスマスは夫婦の行事なんでしょう!? だったらアンジェくんのみらいの夫の僕が一緒にいないと!」

「……アンジェはね、嫁入り前なんだ。お城に帰ろうか?」

城に回収を頼むと、泣きながらヒモパンをはいた父親が迎えに来た。見なかったことにしたクライスだった。

「……アンジェ、お前未来視できるか? ルカは父親ほど変態にならないよな?」

「へんたい? わかんないけど、いま、キングオブヘタレって言葉が浮かんだっ!」

「そうか……変態よりもヘタレのほうが、妻にとって良い夫だ。ルカが婿でも………良くないか、やっぱり」

ユーリに似ても隊長に似ても、公爵家の男と結婚して欲しくはない。

「おかあさま、ぼくもいっしょにねてください」

「ジュリス、ジュリスも起きていたのか? おいで?」

一番ユーリに似た息子が枕を持って潜り込んできた。アンジェと一緒に抱っこしながら寝かしつけた。

「おにいちゃまはルカちゃんのおよめさんになるの? なら、ぼくはおかあさまとけっこんする」

「お母さまはお父さまと結婚しているから駄目だよ」

「ならおかあさまにそっくりのおとうとがほしいの」

「弟とも結婚できないんだよ?」

「じゃあ、ぼくはだれとけっこんすればいいの?」

誰とも結婚しないほうが世の中のためなんじゃないだろうか? そう母親とも思えないことを思ってしまった。

「きっと運命の人が見つかるよ。ジュリスだけのたった一人の運命の子がどこかにいるからね」

ユリアはまだ乳飲み子だから、何も片鱗はないけど。公爵家の子を産むのは、心臓に悪い。しかもまた今夜仕込もうとしている馬鹿がいるし。
可愛いけど、可愛いけど、二人を見ていると別の意味で将来が怖くてしょうがない。

「………なあ、お前の未来視で一番駄目な子ってどの子?」

「未来視はそんなにできないからしないけど、間違いなくジュリスだね」

「ジュリス、お前にそっくりだからな……」

「いやだな、きっと俺なんかジュリスよりずっと良い夫のはずだよ(^▽^)今日だって妻に強制していないし」

「子作りは強制するよな」

「ジュリスはもっと」

「もっと何だよ! もう駄目だっ! 俺はもう子どもを産んではいけないはずっ」

「大丈夫だよ、ジュリスほどのはそうなかなかいないから」

「全然安心できない(−−;」

クライスのクリスマスは普通だったが(普通のエッチ)だったが、この日4人目ができなかったことにホッとしていたのは言うまでもないだろう。



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